概要
二〇〇〇年から少し経った、第二文明末期。地球を大災害群が襲い、ほとんどの歴史の証は消え去った。選ばれた少数の人々は宇宙基地に逃れて六〇〇年間の冬眠につき、その間に地上に残った人々は巨大に進化し翼を得た。旧人類は集団で降下してくると、進化した現人類に科学技術を授け、空神様と敬われながら文明を発展させていった。
地熱発電設備とそれを保守する人々の街を内包した洞窟。過去の体験から空と空虚な自分自身を嫌っていた現人類の青年アコウギは、集団から三〇年遅れて降ってきた旧人類の少女レーグルと出会い、配管工のヘンダーソンや州政府参与のシルダリアと共に、彼女の記憶の欠落を取り戻すため旅をすることになる。
美術館や劇場を巡り、天体観測や祭りを経て、人々と交流を重ねた道のりの果てに、彼らは古都ツクバに辿り着
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- ★★★ Excellent!!!嫌う空があるなんて思いもしなかった。
空を嫌う人たち。
なんてタイトルだろう。私は最初このタイトルを見たとき、宇宙が関連する話か、はたまた大雨かなにかにさらされる人々の話なんだろうか、など色々と妄想を働かせたものだ。――そもそも、空を嫌う人たちとはどういう人々なんだろうか。
惹きつけられるタイトルに誘われてページをひらくと、びっくりした。
砂色の世界が、広がっていたからだ。
遠い未来の荒廃した地球が舞台である。私が最初に感じたのは(あくまで私が最初に感じた印象でしかないが)、砂色でありながら散りばめられた砂金のように仄かに輝く世界の色であった。その世界に迷い込んだ私は、気づくとあっという間に虜になっていた。
地上を支配す…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心躍る空の旅路! SFの英知は此処にある。
このSFに勝てるやついる!? 正直な感想はこれです。巧妙で圧倒的な描写力と、緻密なのに最高にぶっ飛んでいる設定には、やみつきになりました。
物語の舞台は、六〇〇年後の世界。現人類と呼ばれる主人公たちは、七メートルの身長を有し――
「な、七メートルぅ!?」
服状翼と呼ばれる翼を持ち――
「は、はいぃ!?」
――飛びます。
そう、飛んでます。ぶっ飛んでます! 設定が! しかし、これは全て作者様の中で計算された伏線でしかない。彼らは一体何者なのか? 崩壊した後の世界に生きる彼らの正体とは? …………彼らの真の正体に辿り着いた時、空が嫌いになりました。
そして何より、女性陣が最…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心に残る小説をお探しの方へ。かつてないほど美しく重厚なSFです。
ーー桜の木の下に屍体が埋まっているなら、雨上がりの空には魂が昇っていく。そして、人は死ねば星になるーー
溶岩帯を丸ごと飲み込んだ『地界オルダ』にある都市。桜の木など存在し得ない劣悪な環境で育った主人公アコウギは、子供の頃、祖母のその言葉を捻くれた思いで聞いていました。
空に希望を持ち、空を目指し、そして手が届かず、絶望のうちに地界へ帰ることとなったアコウギ。彼は、空に対して強い憎悪を抱くようになっていました。そんなある日、空から旧人類『空神様』の少女が落ちてきて……。
非常に緻密に練り込まれた設定だけでも舌を巻くところですが、さらにそれを映像作品のような鮮やかさで表現する描写力、語彙力…続きを読む - ★★★ Excellent!!!SFの新たなる風
SFっていうのはどこか退廃的な感じがすると思っている私個人ですが。
この作品は、ロードムービーのような爽快さを持っていると感じます。
序盤から繰り広げられる大騒動から主人公たちの旅は始まります。
それは過酷ながらも、出会う人々の温かさを感じさせてくれます。
あと私が注目したいのはワードチョイスのセンスの良さです。
「英知は空にある」作中の重要ワードですが、これだけでも十二分に惹き込まれると思いませんか?
これだけではありません、少年心を擽るようなギミック。歴史好きがニヤリとしそうな展開。これでもかと詰め込まれた設定に、唸る事間違い無しです。
進めば進むほど明らかになる謎にワクワクする事間違い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!妥協のない緻密な世界観
近未来、というよりは現代の延長線上にありながら、全く別の形に生まれ変わった世界のお話です。
そのため、日本などの言葉はありながら、ほぼいちから世界観の設定や人種が練られています。
劇中では、それらの要素が余すことなく用語や描写として出てくるのですが、読みながら頭が圧迫されることはありませんでした。
理由は、オリジナル用語の多くが常用漢字で構成され、ルビがしっかりと振られているからです。
詳しい説明は後に語られ、意味は漢字を見ることで何となく理解することが出来ます。
ルビが最初だけでなく継続的に振られているので、音としても頭に入ってきて覚えやすかったです。
これにより、世界観を丁寧に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!空が嫌いなのに、空ばかり見てるから
『独特な世界観』『作り込まれた設定』SF作品の感想としてまず出てくる言葉ですが、それで終わらせるにはあまりに勿体ない。
主人公の嫌う空は、たくさんの意味を内包していますが、そのどれもが言い訳や八つ当たりの様なものに感じられます。言い訳にしてきたから、強く意識してしまう。八つ当たりしていたから、空以外がよく見えていない。そんな際に空から少女が降ってくる。それは主人公にとっては空そのものが降ってくるような衝撃で……。空が目の前に現れ、逃げ場を失った主人公の心境の変化が丁寧に描写されています。
ただのSF、ただのボーイ・ミーツ・ガールに終わらない表現力を是非体感して欲しい。そう思わせてくれる…続きを読む