空が嫌いなのに、空ばかり見てるから

 『独特な世界観』『作り込まれた設定』SF作品の感想としてまず出てくる言葉ですが、それで終わらせるにはあまりに勿体ない。
 主人公の嫌う空は、たくさんの意味を内包していますが、そのどれもが言い訳や八つ当たりの様なものに感じられます。言い訳にしてきたから、強く意識してしまう。八つ当たりしていたから、空以外がよく見えていない。そんな際に空から少女が降ってくる。それは主人公にとっては空そのものが降ってくるような衝撃で……。空が目の前に現れ、逃げ場を失った主人公の心境の変化が丁寧に描写されています。
 ただのSF、ただのボーイ・ミーツ・ガールに終わらない表現力を是非体感して欲しい。そう思わせてくれる作品です。

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