空に星を問え

 長編SFといえばハインラインやアジモフ、国内では眉村卓や田中芳樹くらいしか読んだことのない私だが、本作は数十年ぶりのそれだ。

 緻密に練り上げられた世界観の中で、とある薬品を飲んで物理的に輝く主人公。そんな肉体とは裏腹に、精神面では劣等感の暗黒を抱え込んでいるのが皮肉である。

 SFとしての楽しさや面白さだけではない。古典的な神話や昔話に通底する神秘感や遊び心も随所に活かされている。なにしろ空から降ってきた女の子が神輿(!)に乗って空を飛ぶくらいだ。

 そんな愉快な物語も、終末には恐るべき真相を迎える。まさに破局だ。破局だが、再生でもある。

 ウロボロスは翼を得たか。

 詳細本作。

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