心に残る小説をお探しの方へ。かつてないほど美しく重厚なSFです。

ーー桜の木の下に屍体が埋まっているなら、雨上がりの空には魂が昇っていく。そして、人は死ねば星になるーー

溶岩帯を丸ごと飲み込んだ『地界オルダ』にある都市。桜の木など存在し得ない劣悪な環境で育った主人公アコウギは、子供の頃、祖母のその言葉を捻くれた思いで聞いていました。

空に希望を持ち、空を目指し、そして手が届かず、絶望のうちに地界へ帰ることとなったアコウギ。彼は、空に対して強い憎悪を抱くようになっていました。そんなある日、空から旧人類『空神様』の少女が落ちてきて……。

非常に緻密に練り込まれた設定だけでも舌を巻くところですが、さらにそれを映像作品のような鮮やかさで表現する描写力、語彙力に度肝を抜かれます。作者様の知識の多さ、筆力の高さに、ひたすら脱帽します。

余りに美しい情景に心を奪われ、神々しささえ感じられます。このネットの波の中で、ここまで荘厳なSF作品に、私はまだ出会ったことがありません。

気軽に読み飛ばしながら読めるような小説ではないからこそ、一語一句を大切に読んだ後の深い感動は、言葉に出来ないほど大きいです。時間をかけて読む価値が絶対にあります。

心に残る小説を探している方にお勧めしたいです。

その他のおすすめレビュー

釣舟草さんの他のおすすめレビュー339