ある小雨の夜、タクシードライバーが1人の女性客を乗せました。多弁なドライバーは、女性客との「怪談好き」という共通点を発見。怪談を語り始めますが……。怪談師さんの話を直接聞いているかのような、流れる語り口調の地の文です。スリラーホラーの臨場感を得られること間違いなしです。意外な展開に続く意外な展開。最後までノンストップで楽しむことができます。
いやあ、これはもう完全にお見事!語り手の「タクシー運転手」の解像度が非常に高く、脳内で稲川淳二が朗読しながらぐいぐいと引き込まれていく。そしてバッサリと切りつけられるようなラストの一文…。オールディな怪談ものが好きなら、これを読まないのは損である。
語り手のセリフのみで語られる書き方に、冒頭から魅せられました。その穏やかな語りに思わず、読者も静かに耳を傾けてしまいます。聞き手の女性との関係性や状況などは、会話の中にある情報をもとに把握しなければいけませんから。少しずつ浮かび上がる情景とともに、恐怖もじわじわと迫っていきます。タイトルが示す最後の言葉の意味を理解したとき、震えながらも読み返しました。上質のホラーをご堪能ください。
読んでいて非常に気持ちが良かったです。主観的でありながら不気味な一定の距離感がある文体に惹かれ、笑いたくなるほど見事に展開に翻弄されました。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(129文字)