描空領クールクーロンヌ
第11話 龍属種
第三章
「シルダリア、もっと速度は出ないのか」
「
「ヘンダーソンって呼んでって言ってるのに」
先を行く神輿から期待の薄い返事を聞きながら、生暖かい緑の体液を被った
「
「いや、いままで一度もこんな大群が沸いたことなんてないわ……」
シルダリアの声に耳を傾けながら、学生時代のことを思い出す。一人ではじめて踏み込んだ未開の地で、
先を進む神輿の盾となるように陣取った俺の眼前に、あの日見た化け物が群れを成す。
「アコウギ、もうすぐ
柔らかい言葉遣いに反して、覇気を含んで凛と通る声。頷いて、翼を唸らせ、大きく飛び上がる。目に映る茫漠とした蒼穹に息ができなくなってくる。音も風も置き去りにして、ただ大地の輪郭が淡く眼下に広がる天空。上層流臨界高度。呼吸が止まり、翼の熱が失われ、遮蔽もなく全身に照りつける陽の光さえおぞましく冷たいものに感じられる一瞬ののち、重力が糸を張ったように身体を捕まえた。
翼を着込んで急降下。今度は焼け付くほどの大気の摩擦が全身を撫でる。風を断ち、衝撃波を撒き散らしながら、怪物の群れの中央を破砕音と共に縦断する。空を斬り下ろす銀色の軌跡。激しく乱れた気流のままに土色の雲海が吹き散らされる。骨が大きく軋み、飛行を助ける
降下すること少し、淡く白飛びしていた地面が色付き迫って見えてくる。黒煙を上げる蒸気列車。墜落寸前で
言葉はいらなかった。
「場所と数は」
「
「承知しました。
結局、この戦いは列車が止まるべき駅に辿り着く少し前まで続いた。
日が半分ほど暮れた地平の果てに、やがて見えた円柱状の
遠く沈む太陽を横目に
「アコウギ、あなたは
実のところ、まだまだ動き続ける用意はあったのだが、空から神輿を抱えて降りてきたシルダリアにこう言われてしまっては仕方がない。
ただ、一八六匹。笑顔で言葉を切ったバイコヌール政府参与の彼女が、桃色の軌跡を引きながら閃光のように空を駆けまわり、見て数えた限り本職を差し置いて最も多くの
もうすぐ夜だ。時間をかけ過ぎてしまった。激しく飛び続けたせいで痛んでしまった俺とヘンダーソンの
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