古典SFは、すなわち王道のストーリーであるが故に古典たらしめている。
こと、ラノベに置いての「SF」は『個性』の御旗のもとに奇をてらった作品や、「今風」なVRMMOネタが溢れている。
そんな中、この作品は紛れもなく『王道』であり、『古典』の香りがする『SF』である。
ワンルームから始まった物語が、スケール感を増し銀河レベルの広さに拡大していく壮大さ。ストーリーの凝り過ぎない伏線とその回収。謎めいた知性体に、定番でありながら不思議な技術。個性的でありながらも、近しげな雰囲気のキャラクター達。
なにより、一貫したキャラクター達の「考え方」がブレなくて、読後感がとても良い。
王道SFにありがちな「覚えにくい固有名詞」すら、フレーバーとして秀逸。
子供の頃に図書館で読んだ『SF』が好きだった人は、ぜひ読んで欲しい。
きっと、出てくるキャラクターの誰かを好きになれる。
SF分野に詳しくないため、本作に散りばめられたオマージュや元ネタは正直分かりませんでした。しかしそんな自分でも楽しく読み進められました。それって実はかなり凄いことです。
膨大で緻密な設定から繰り出される物語は、まさに人間の尺度では想像もできない広さの『宇宙』です。しかし各キャラクター達のコミカルでテンポの良い掛け合いやストーリー展開、多種多様な知的生命体や種族(宇宙クラゲとか宇宙ウナギとか宇宙マグロとか)が登場し、構成のシッカリしたSFなのに読みやすい……という、これまでのSF小説に抱いていたイメージ(偏見とも言う)を完全に覆されました。やっぱ大事なのは浪漫よ。
非常に完成度の高い、新たな時代のSFウェブ小説だと感じました。SF好きにもSF初心者にもオススメな作品だと思います。