49.やつが再来なのです……
「プレーンウルフは相変わらずすばしっこいいんだよ!」
「それでもブレンが進化したし、マリーナも加わってかなり戦いやすくなったけどね」
「そうですね、ブレンの攻撃力は素晴らしいですし、マリーナも思ったより働いてくれますし、買ってよかったです」
人が少ない場所でプレーンウルフをひたすら倒します。
人数も増えたし、ブレンも進化したしでかなり楽になったんだよ。
……そう、ブレンはレベル10になったことで進化可能だったそうなのです。
昨日まで進化させてなかった理由は、今後の進化先を決めるために進化させてなかったそうですよ。
「ブレンはいまなんていうドラゴンなのでしたっけ?」
「ウィンドドラゴンパピーね。風属性のドラゴンよ」
「へぇ。風魔法とか使えるのです?」
「使えるけど、メインはブレスかな。消費は大きいけどね」
「そうなのですね。最終的にはなにに育てるのです?」
「クラウドドラゴン系列に進化させたいのよね。そのための第一段階がウィンドドラゴンパピーなのよ」
なんだか複雑な進化方法がある気がするのですよ。
ドラゴンは難しそうですね。
「アプリはどんなドラゴンに育てるのです?
「うーん、私は水系のドラゴンって決めてるけど、詳細は決めてないんだ。今度サーシャさんに相談してみるよ」
サーシャに相談ですか。
……ふむ、もし時間があればですが、もっと適任者がいるのですよ。
向こうの都合があえばなのですが。
「もしよければ、パートナーの進化に詳しい人を紹介するんだよ?」
「え、お姉ちゃんそんな人とどこで知り合ったの?」
「ユーリさん経由なのです。あちらの都合に合わせなきゃですが、サーシャよりも詳しいと思うけどどうする?」
「それは会ってみたいかな。もし邪魔でなければだけど」
「それでは、あとで連絡を入れてみますね」
ユエさんは忙しい人かもしれないので、来てもらえるかどうかは微妙です。
ダメだったらダメだったでユーリさんにも相談しましょう。
「あ、私のレベルが上がったわ。これで13ね。リーンは」
「あ、ボクも上がったよ。レベル14だね」
「いつの間にレベル14まで上がったのよ」
「昼間にゴブリンの巣で。経験値的においしかったのですよ」
結構しんどかったのですが、同格か少し格上のモンスターとばかり戦ってましたからね。
おかげで全員のレベルがひとつずつ上がってましたよ。
「ふーん、それじゃ、私たちもこのあとゴブリンの巣に行けばレベルが上がりそうね」
「それは楽しみですね」
「結構大変だけどね。そろそろゴブリンの巣に移動する?」
「そうねぇ……マリーナのレベルは?」
「レベル7まで上がりました」
「レベル7なら多少は攻撃の役に立ってくれるでしょう。それじゃあ、ゴブリンの巣に向かいましょうか」
「賛成なんだよ」
「わかりました」
周囲に残っていたプレーンウルフをライトニングボルトで一掃して、ボクたちはゴブリンの巣方面へと向かいます。
今日プレーンウルフを狩ってた狩り場は、ゴブリンの巣への道の途中にある場所を選んだのでそんなに遠くはないのですよ。
さて、プレーンウルフを狩るために街道からそれていましたが、今度は東の森に向かう必要があるので街道へと戻ります。
このとき、膝丈ほどもある草に足を取られて歩きにくかったのがなんとも言いがたいですね。
サーシャは一回り以上大きくなって一人乗りならできるようになった、ブレンの背中に乗って楽をしていましたが。
騎乗型パートナーもうらやましいですね。
「さて、東の森とゴブリンの巣はもうすぐなんだよ」
「意外と近いと言えばいいのか、プレーンウルフ狩りをしていたから近く感じるだけなのか。微妙なラインね」
「ですね。少なくとも、毎日来たい場所ではないです。ゴブリンとの戦闘も面倒だし」
「ここに来るまでも何回か襲われてるしねぇ。数が多いだけなんだけど、めんどくさいしお金にならないから……」
「確かにゴブリンのドロップ品はお金にならないんだよ。そこはどうにかしてもらいたいね」
そこのところどうにかならないですかね?
あんな小汚い服をまとって粗末な武器を使ってる以上、ドロップも期待できないのが普通ですか。
「見えてきました。あそこがゴブリンの巣の入り口なんだよ」
「そう、わかったわ。……でも、その前に近くで野営しているパーティがいるわね」
「野営ですか? なにをしているんでしょう?」
「簡単に言ってしまえば本格的な休憩かしら。ポーションとかでHPとMPを回復するだけじゃなく、料理もして満腹度も回復したりするのよ」
「へー、サーシャは物知りなんだよ」
「ユーリさんからいろいろ聞いたからね。さて、この場合、どうするのが正解かしら?」
サーシャは小首をかしげて考え込んでしまったのですよ。
「サーシャ、正解って?」
「彼らの野営の目的がね。彼らもゴブリンの巣狙いなら私たちとバッティングするし、逆にゴブリンの巣から帰ってきたところならあまり問題はないはず……多分」
「それって、一度聞いてみた方がいいと言うことでしょうか」
「このまま無視して進んでトラブルを起こすよりはね」
「仕方がありませんね。それではあちらのパーティと話をしてみましょう」
「交渉は私がするわ。リーンはそう言うの苦手でしょうし」
「……確かに。任せるのです」
「任されたわ」
そういうわけなので、あちらのパーティとの交渉はサーシャが行うこととなりましたよ。
もっとも、ボクやアプリもついていきますがね。
「あの、休憩中すみません」
「うん、こんなところでほかのプレイヤーなんて珍しいな」
「やっぱりゴブリンの巣って珍しいですか?」
「そりゃあ、あれだ。うまみとしてはベルの森に行ったほうが上だし、ゴブリン族との戦いならさらにその奥のゴブリン族の集落ってダンジョンがある。ぶっちゃけここに来る理由なんて、半端なレベルでレベル上げしたいとかそう言うことしかないよ」
サーシャの相手をしてくれている男の人はあまりここに来る意味なんてないと言い切りますね。
ただ、最後に半端なレベルを上げたいからと言ってましたし、そちらがメインの目的なんでしょう。
「そうなんですね。それで、皆さんはこのあとどうするんですか?」
「俺たちか? 俺たちはゴブリンの巣を一周して帰ってきたところだ。この休憩が終わったら、もう一回か二回ほど周回をする予定だよ」
「そうさな。それくらい周回すれば、ベルの森でも余裕で戦えるレベルになるだろうし」
「なるほどです。それなら、皆さんが休憩している間、私たちがゴブリンの巣を攻略してもかまいませんよね?」
「それはかまわないが。わざわざその許可をもらうためだけに?」
「はい。一応礼儀として」
「狩り場なんて誰のもんでもないから、誰かが先にいない限りは気にしなくたっていいと思うんだけどね。……それにしても従魔が多いパーティだな。全員従魔系か?」
「全員というわけではないですが……従魔自体は三人とも使えます」
「そいつはすげぇな。……っていうか、シーズーまでいるのか。珍しいものをつれているなあ」
「ははは……」
やっぱり、シズクちゃんはどこに行っても珍獣扱いですね。
こんなにかわいいのに。
「シーズーだと!?」
いままで話を聞いていなかったっぽい鉄製の鎧を着けた男の人が、シーズーという言葉に反応してこちらを振り返ってきたんだよ。
あ、こいつは……。
「てめぇ! よくも、俺の前に顔を出せたな!」
「……うわぁ……うるさいのがまだいたんだよ」
そう、そこにいたのはレッドでした。
ただ、装備は新調したのか、全体的に鉄色になっていますけどね。
「……彼もあなたのパーティメンバーですか?」
「うん、まあ、一応は。今回臨時で入ってもらってるだけだけど」
「彼の素行って知らないんですか?」
「かなり素行が悪いって言うのは聞いたことがあるけど、俺たちが会ったときはおとなしかったからな。レベル的にもちょうどいいって言うことで、今回臨時パーティに入ってもらったんだが」
「……彼、素行が悪いなんてもんじゃないですよ?」
「そうなのか?」
「ギルドを自分でやめたことになってますけど、実質除名処分ですし」
「ギルドを除名って……それに君たちのマントを見る限り『瑠璃色の風』だろう? あそこを除名ってよっぽどだな」
「まあ、そう言うことです」
「……とりあえず、いまの話は保留だな。彼の対応をみて今後のことを決めよう」
サーシャがなにか話していたようですが、こっちはギャンギャン吠える犬がいるせいでよく聞こえません。
それにしても、あれからまったく成長していませんね。
「……と言うわけだ。いまならお前みたいなガキに負けることはない!」
「はいはい、好きに言っていればいいんだよ」
こういうのは相手にしないに限りますからね。
それにしても、ゴブリンの巣攻略はどうしましょうか。
「ちっ、まあいい。うるさい引率もいないようだし、PvPを受けてもらうぞ、そして身ぐるみ置いていってもらう!」
「はいはい、そんなの受けるわけがないんだよ」
PvPの申請画面が表示されますが、内容を読むこともなく拒否します。
そもそも、PvPをする理由がないですからね。
「へっ、どうした! 俺に負けるのが恐いのか!!」
「勝手にわめいているといいのですよ。サーシャ、そっちの話は終わりましたか?」
「ええ、終わったわ。そんなの放っておいて行きましょう」
「ですね。行くのですよ」
まだ背後でなにかわめいていますが、お構いなしにゴブリンの巣に向かうとするのです。
すると……。
《ワールドメッセージ:アインスベル付近で突発イベント発生》
《突発イベント『クイーンアントを退治せよ』を開始します》
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