第二章 ギルド『瑠璃色の風』と新しいモフモフです!
10.ギルド『瑠璃色の風』ですよ!
「さて、ここが私たちのギルド『瑠璃色の風』のギルドハウスよ」
「おー、想像していたよりも立派な建物なんですよ」
「確かに立派な建物ね」
「そうですね。ゲームの中とはいえ、こんな立派な家は憧れるなぁ」
ユーリさんに案内されること数分。
女神像広場近くまで戻ってきたボクたちは、『瑠璃色の風』の本拠地に案内されたんだよ。
ここは大通りから一本外れた場所でアクセスしやすく、お値段的にもそれなりに高かったとか。
あと、ここに来る途中でサーシャとアプリの自己紹介もユーリさんに済ませておいたんだよ。
「さて、入場するために一度ゲスト許可を出すわね。……はい、これで入れるようになったわ」
「ありがとうなんだよ。でも、こんな厳重に入場許可が必要なんですね?」
「そこはVRMMOだからという感じかしら。自分の家に見知らぬ他人が勝手に入っていたらいやでしょう?」
「それもそうなんだよ。それじゃあ、お邪魔します」
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
三人揃って門から中に入り前庭を通ってギルドハウス内に入ります。
ハウスのロビーみたいなところでは、ひとりのお兄さんが待っていたんだよ。
「お帰り、ユーリ。それで、話にあった初心者三人ってのはその子たちか?」
「ええ、そうよ。説明よろしくね、ガイル」
ほほう、このお兄さんはガイルというのですか。
自己紹介はしてもらえると思いますが、名前は覚えておきましょう。
「まずは自己紹介をしなくちゃな。俺はガイル=ブレード、剣士系職業のブレイドマスターだ。このギルドのサブマスターのひとりでもある」
「サブマスターのひとりっていうことは、ほかにもサブマスターはいるんですか?」
「ああ、いるぞ。最近は年度末進行が忙しくて、顔を出せるのは俺ひとりくらいだけどな」
年度末進行ですか。
ボクのお父さんも毎日忙しいと言っていましたね。
それからボクたち三人も自己紹介をします。
挨拶は大事ですからね。
「それで、どんな説明をしてくれるんだよ?」
「ん? そうだな……とりあえず、このゲームの基本とかは説明してほしいか?」
「ボクは必要ないんだよ。サーシャとアプリは?」
「……あなたは聞いておいたほうがいい気がするけど。私は大丈夫よ」
「私も大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「というわけですので、その説明は必要ないんだよ」
ボクたちの返事にひとつ頷いたガイルさん。
お次はどんな説明をしてもらえるんでしょうかね?
「それじゃ、今度は俺たちのギルドに加わった場合のメリットとデメリットの説明だな。これは聞いておけよ」
「わかったんだよ」
「まずはメリットのほうだが、初心者支援として少し強め装備や回復アイテムを支給することができる。冒険初期はなにかと入り用だからこの差は大きいと思うぞ」
「そうなんです?」
「ええ、確かにそのとおりね」
「これから街に装備を見に行こうと思ってたけど、お金が心配だったんだよね」
「初期装備より強い装備は渡してやるから心配するな。あとは、素材かお金を持ってくればそれより強い装備を作ってやることも可能だ。俺たちは最上位の生産職も所属しているからな」
ほうほう、それってすごいことなんですかね?
首をかしげて聞いていると、ユーリさんから補足説明が飛んできました。
「ちなみに、そこで説明しているガイルが金属系装備の生産職よ。武器や鎧は彼の領分ね」
「そういうこった。ほかにも、各種先輩たちからいろいろアドバイスを受けることができるとかだな」
「私はテイマーだけど、サブジョブでサマナーもとっているからそっちの説明もできるわ。ランサーは……年度末だからログインできるか怪しいわね」
年度末って皆大変なんだよ。
「このギルドも結成した当初は学生が多かったんだがなぁ。数年経って社会人が多めになっちまったから、リアルが忙しい時期は大変なんだよ」
ガイルさんがしみじみと話していますね。
ボクにはまだまだ先の話なのですが、こんな日が来るのでしょうか?
「……さて、話がそれちまったな。メリットはこれくらいだ。デメリットの説明だが……こっちはほかのプレイヤーギルドに所属できなくなるってのがデメリットか」
「そうね。プレイヤーギルドは複数所属できないからね」
「まあそういうこった。ああ、うちのギルドは抜けたくなったらいつでも抜けていいからな」
なるほど、ギルドとやらの掛け持ちは禁止なのですね。
よくわからないのですが、そういうものだと納得しておくんだよ。
「さて、俺たちのギルドについてはこんなところだが……『瑠璃色の風』に所属するか?」
ガイルさんの問いかけに対して、サーシャとアプリが顔を寄せてきて話しかけてきましたよ。
「どうするリーン?」
「どうするって、所属してもいいんじゃないですか?」
「お姉ちゃん、ユーリさんに釣られてない?」
「ユーリさんの従魔も魅力的ですが、別にデメリットもないですよね? なら、所属してもいいと思うんだよ」
「……それもそうね。そうしましょうか」
「了解。お姉ちゃんたちがいいなら、私も問題ないよ」
ボクたち三人の間で結論は出ました。
なので、ガイルさんたちにそのことを伝えましょう。
「お、結果は出たのか?」
「はい。ボクたちは『瑠璃色の風』に所属してみたいんだよ」
「おお、そうか! いや、よかった。最近は新人も少なくってな……」
「そうなんですか?」
「いや、ゲーム全体として新規プレイヤーが減ってるみたいなんだがな。ともかく、これで話はまとまったわけだ。それでどうする? このあと引率して狩りでも行くか?」
狩りですか、モフモフのためにも行きたいところなんですが……。
「ごめんなさい。もうすぐ私たち晩ご飯なんです」
そうなんだよ、晩ご飯の時間なのですよ……。
「ありゃ、そうなのか。そいつは仕方がないな。とりあえず、仮入団の手続きと少し強めの装備だけ渡しておくか」
そう言ってガイルさんが用意してくれたのは、初心者装備よりも何倍も強い武器と防具でした。
「ガイルさん、少し強めと言っていましたが、初心者装備より何倍も強いんだよ?」
「初心者装備が弱すぎるだけだ。……っていうか、リーンは珍しい武器を使ってるよな。鞭の在庫があってよかったぜ」
「やっぱり鞭使いは少ないのですね」
「珍しい武器だからな。ああ、あと、『瑠璃色の風』団員用のマントだ。よければ使ってくれ」
追加で渡されたのはガイルさんが説明してくれたとおりのマントでした。
おそろいのマークがプリントされているので、これが『瑠璃色の風』のエンブレムみたいなものなんでしょう。
「あ、お姉ちゃん。そろそろログアウトしないと」
「ああ、もうそんな時間なのですね。それでは失礼するのですよ」
「あ、まってリーンちゃん、アプリちゃん。このあと、夜ってログインするの?」
「その予定なんだよ、ユーリさん。それがどうかしたのです?」
「時間が合えば引率してあげようと思ってね。何時間後くらいに戻ってくるのかしら?」
何時間後ですか。
えーと、晩ご飯を食べて、お風呂に入って……。
「大体二時間後くらいですかね」
「了解。それくらいの時間にいることにするわ」
「私もそれくらいの時間に戻ってくるわね、リーン」
「サーシャもよろしくなんだよ。それでは、またなんだよ」
ログアウトの方法は前もって教えてもらってあったので大丈夫です。
メニューからログアウトを選択するだけで、現実に戻れるのですよ。
シズクちゃんとお別れなのは寂しいですが、すぐに戻ってきますからね!
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