11.モフモフを捕まえに出発!

 晩ご飯を食べてお風呂にも入り、寝る支度を調えて夜のログインをしたリーンですよこんばんは。

 ログインをするときに、ログイン場所の選択というのがあって『最後に立ち寄った女神像広場』と『ギルド『瑠璃色の風』のギルドハウス』という選択肢がありました。

 どちらがいいのかわかりませんでしたので、とりあえずギルドハウスを選択ですよっと。


「あら、リーンちゃん。こっちにログインしてきたのね」

「あ、ユーリさん。こんばんはなんだよ」


 見慣れない部屋にログインすると、目の前にユーリさんがいました。

 ここはどこでしょうかね?


「ここは『瑠璃色の風』の談話室よ。ギルドハウスにログインすると、ここにログインするようになっているの」

「ほほう、それは便利……なのかな?」

「まあ、好き好きね。ほかのふたりは?」

「アプリはもうすぐログインすると思うんだよ。サーシャもそろそろログインするはずだね」

「わかったわ。でも、それってどちらにログインするのかしら?」

「さあ? 聞いてないんだよ」

「そうよね。ログアウトする前も教えていなかったものね」


 ユーリさんとどうするべきか悩んでいたところ、アプリとサーシャがほぼ同時にログインしてきたんだよ。

 仲がいいですね、ふたりとも。


「ああ、やっぱりこっちだったのね」

「お姉ちゃんがいないからログインしなおしてきたんだよ」


 ……どうやら、ボクがいなかったのでログイン場所を変えたようですね。

 頭がいいのですよ、ふたりとも。


「こんばんは、アプリちゃん、サーシャちゃん。今日はよろしくね」

「よろしくお願いします、ユーリさん」

「よろしくお願いします」

「ええ。……そうだ、いまのうちにフレンド登録をしておきましょう」

「わかりました。リーンもいいわよね?」

「歓迎なのですよ」

「それじゃあ、三人に申請を送ってと……はい、完了」

「登録完了したんだよ」


 サーシャとアプリもそれぞれ登録が完了したみたいですね。

 そんなことより、ボクには大事なことがあるんだよ。


「……シズクちゃんはどこに行ったのでしょう?」

「ああ、パートナーね。ログアウトするとパートナーは帰還状態になるわ。コールやサモンで呼び出してあげれば大丈夫よ」

「わかりました。コール、シズク」

「オンオン」


 シズクちゃんを呼び出すと、早速じゃれついてきましたね。

 うんうん、かわいいのですよ。


「……よし、私もクラウドを呼び終わったわ」

「準備はできたようね。それでは、レベル上げと新しいパートナーの捕獲に向かいましょうか」

「了解なんだよ! さあ、新しいモフモフをめがけて出発!!」

「お姉ちゃんは相変わらずだなぁ。サーシャさんは大丈夫なの?」

「私はあそこまでがっつかなくても大丈夫よ」


 後ろで失礼な会話が聞こえてますけど……まあいいでしょう。

 そんなことよりも、モフモフが大事なのです!


 気合いを入れてギルドハウスの外に出てみると、星空が広がってたんだよ。

 いつの間に夜になっていたのかな?


「ユーリさん。このゲームって夜もあるの?」

「ええ、あるわ。リアル時間に比例しているわけじゃなくて、昼を四時間、夜を三時間、夕方と朝を三十分ずつっていう配分だけどね」

「なるほどなんだよ。昼と夜でなにか違うんですかね?」

「そうね。発生するイベントが違ったり、出現するモンスターが違ったりするわ。あとは、同じモンスターでも行動パターンが変化したりね」

「結構、いろいろ違うのですね。教えてくれてありがとうなんだよ」

「いえいえ。まずはクエストボードでクエストを受けていきましょうか」


 クエストボードは、いろいろな依頼を受けられる場所らしいのですよ。

 依頼をこなすことで経験値やお金をもらえるようなのです。

 今回はモンスター退治が目的なので、それ用のクエストを数種類受けておきましたよ。


「これで出発準備は万全ね。回復薬は私が持ってきているから配るわね」

「ありがとうございます。初心者支援パックの中身だけじゃ不安だったので助かります」

「サーシャ、初心者支援パックってなんなんだよ?」


 初めて聞く言葉に疑問を挟んだら、サーシャにあきれ顔をされました。


「リーン。インベントリに初心者支援パックが入っているでしょ。それを開封すると、お金や回復薬が手に入るわよ」

「え、そうなのです? ……おお、本当にありましたよ。早く教えてくれればいいのに」

「知ってると思ったのよ。ほかに質問は?」

「あ、港でたこ焼きをたくさんもらったんだよ。あとで一緒に食べましょう」

「……わかったわ。質問がないなら早く行きましょうか」

「そうだね。私も料理をもらってるから一緒に食べよう」

「屋台組合は初心者に商品を押しつけるのが好きねぇ……まあ、携帯食料は不味いからいいんだけど」


 クエストを受け終わった後は、街の門から外に出てモンスター退治に出発ですよ。

 ユーリさんいわく、アインスベル近辺のモンスターならどこの門から出ても大差ないそうです。

 ですが、離れた場所まで行くと差が生まれるそうなので注意が必要だとか。

 まあ、今日はファーラビットが目的なので遠出はしませんがね!


「さあ、街の外まで来ましたよ! モンスターはどこですか!!」

「落ち着いて、リーンちゃん。モンスターならすぐそこにいるわよ」

「む、そうなのですね。……そういえば、夜なのにやたらと明るく見えるような」

「そこはゲームだからね。ほら、そこの草むらにいるわよ」


 ユーリさんの指さした先には、一メートルほどの大きさもある……ネズミ? ですかね。

 普通のネズミではなくハムスターとかそっち系なのですが、あれは間違いなくモンスターだと思いますよ。


「あれはなんなのですか?」

「プレーンマウスっていうモンスターのようね。リーンも鑑定してみればわかるわ」

「サーシャ、鑑定はどうやるのです?」

「よく見て鑑定しようと思えば勝手に鑑定できるわよ」


 なるほどです、では鑑定っと。

 確かにプレーンマウスというモンスターのようです。

 強いのですかね?


「鑑定結果のとおり、あれはプレーンマウスというモンスターよ。昼間に出てくるファーラビットと同じで、このゲーム最弱のモンスターね」


 なるほど、このゲーム最弱ですか……って。

 なんだか、気になる情報を聞いたのですよ。


「ユーリさん、ファーラビットが昼間に出てくるってどういう意味です?」

「え? ファーラビットは昼間にしかでないモンスターなんだけど……それがどうかしたの?」


 なんですと!?

 あのモフモフが手に入らないのですか!?

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