12.モフモフを捕まえる練習ですよ……

「……そんな、あのもこもこふわふわが昼にしか会えないだなんて」

「……サーシャちゃん、リーンちゃんはどうかしたの?」

「ファーラビットがほしかったみたいですよ。強い弱いじゃなく、もこもこモフモフが目的で」

「お姉ちゃんらしいよね。昼時間じゃないと無理だったみたいだけど」


 昼しかファーラビットが出ないなんて聞いてないのですよ。

 確かに、時間帯によってモンスターの配置が変化するような話はしていた気がするんだよ。

 だからといって、これはあんまりだと思うのです。


「……ああ、ボクのモフモフ……明日にならないと捕まえられないのですね」

「そうねぇ。昼時間になってモンスターが入れ替わるまで二時間以上かかるから、さすがに寝る時間でしょう?」

「今日くらい夜更かししたい気分なんだよ」

「明日また手伝ってあげるから、今日は早く寝なさい、ね」

「わかったんだよ。それじゃあ、普通にモンスターを倒すのかな?」

「そうなるんじゃない? さあ、クラウド行くわよ」

「ああ、ちょっと待って。リーンちゃんとサーシャちゃんのふたりは無理のない範囲でテイムとコントラクトを使ってちょうだい。そうしないとスキルレベルが上がらないからね」

「わかったんだよ。それじゃあ、まずはあのネズミから倒していくんだよ!」


 あの程度のネズミであればシズクちゃんの魔法で一発なのです。

 さあ、シズクちゃん、その真価を見せるのですよ!


「シズクちゃん、サンダーボルト!」

「ワオン!」


 シズクちゃんが放った魔法は、ある一帯にいたプレーンマウスを巻き込んですべて消滅させました。

 うん、レベルも一発で上がりましたし、幸先がいいですね!


「……なるほど、これが四大魔法パートナーなのね」

「これが四大魔法パートナーなのよ。序盤が大変になる理由が想像できたかしら、サーシャちゃん」

「はい、なんとなくは。魔法の威力が高すぎてモンスターを一発で倒してしまってますね。その上、MPの消費も激しいので、あまり連発もできなさそうです」

「そういうことね。特に、モンスターを一発で倒せることは問題よ。テイムやコントラクトを行う暇がないわけだからね」

「これは、大変そうですね、自分ひとりだと」

「そういうことよ。パーティだと、まとめて吹き飛ばしてもらうための火力要員として最適なんだけどね」


 なにやらサーシャとユーリさんが話していますね。

 ボクとシズクちゃんのことのようですが、なにを話しているのでしょうか。


「ユーリさん。この辺のモンスターは全部倒してしまったんだよ」

「そうね、場所を移しましょうか。今度はシズクちゃんを使わず自力で瀕死にしてテイムをしてみましょうね」

「はいなんだよ。それではシズクちゃん。ちょっと下りていてくださいね」


 ボクは鞭を手に取るため、シズクちゃんを地面に下ろしました。

 そして、鞭を取り移動しようとするとシズクちゃんの顔がボクの視線と同じ高さにあったんだよ。

 何事かと思い下を見てみると、シズクちゃんが空を飛んでいますね!


「おお、シズクちゃん、空を飛べたのですね!」

「ワフン」


 空中にお座りしながらこちらを見るシズクちゃん、ラブリーですね!


「あら、あなたのライトニングシーズー、もう空を飛んだの。ずいぶんと愛情度がたまるのが早いわね」

「うん? 愛情度ってなんなのです、ユーリさん」


 愛情度とは聞き慣れないまた言葉なのです。

 どこかで説明を聞き逃してましたかね?


「愛情度っていうのは、パートナーと主人の絆を数値化したようなものよ。これが高くなると、いろいろと主人にとって利益のある行動をとってくれるようになるわ」

「ほほう。それで、愛情度の上げ方はどうすればいいのです?」

「ペットをかわいがるように愛情を込めて接してあげていれば自然と上がっていくわ」

「なるほどなんだよ」


 シズクちゃんのことはずっとかわいがってきましたからね。

 それで愛情度とやらも上がったのでしょう。


 それはさておき、次のプレーンマウスの群れですよ。

 プレーンマウスは一匹ずつ独立して戦えるようですね。

 なので、ボクとサーシャ、アプリの三人で一匹ずつ安全に相手をしているのです。


「うーん、倒さない程度にダメージを与えるって難しいね」

「アプリは攻撃力が高すぎるのです。もう少し威力を抑えるのですよ」

「お姉ちゃんの攻撃力が低すぎるんだよ。三発当ててようやく倒せるってこの先大変だよ?」


 アプリは攻撃力が高すぎて一撃でモンスターを倒してしまうことが多い。

 ボクは攻撃力が低すぎてダメージ量が足りないのです。

 残るサーシャはとというと……。


「私は魔術師ビルドだからね。物理攻撃は死んでるから」


 と言うことらしいので、そもそも攻撃に参加していません。

 正確には一度だけ魔法で攻撃したのですが、一撃で倒してしまったので攻撃から外れてもらったんだよ。


「苦労しているようね。私が少しだけ手助けをしてあげるわ」

「助かります、ユーリさん」

「いえいえ、手加減スキル発動、てい!」


 ユーリさんがなにかスキルを発動してからモンスターを攻撃しました。

 ユーリさんの攻撃力を考えれば、一撃で倒せてしまうはずなのですが……なぜか倒せずに生き残ってますね。

 生き残ったモンスターは、ユーリさんお拘束魔法によって身動きを封じられましたよ。


「さて、これでテイムとコントラクトの練習相手ができたわね。MPが空になるか、成功するまで試してみてちょうだい」

「わかったんだよ」

「はい。……ところで、さっきのスキルは?」

「ああ、手加減スキルね。これは特別な条件を満たすと覚えられるようになるスキルなの」


 ほほう、そんなスキルもあるのですね。

 なお、効果は『次の攻撃でモンスターを倒せそうになってもHPが一だけ残る』というものらしいです。

 ボクもぜひ覚えたいですね。


「そうなんですね。それで、条件って教えてもらえますか?」


 おお、いいのですよ、アプリ。

 その調子で取得条件を聞き出すのです!


「少し調べればすぐわかることだしかまわないわ。『【モンスターの最大HPの50%以上のダメージを与えつつ瀕死の状態にする】ことを【百回】達成』が条件ね」


 おおう、思ったよりも大変な条件ですよ。

 これは難しそうなのです……。


「あ、それだけでいいんだ」

「魔法でも大丈夫なんですか? 魔法で大丈夫なら私もいけそうなんですけど」


 なんと、アプリもサーシャもやる気に満ちあふれてますよ!?

 なんでしょうね、この差は……。


「魔法でも大丈夫よ。そうね……プレーンマウスが一撃でもワイルドドッグは耐えられるかもしれないわ。そちらで試してみましょう」

「はい。……リーン、どうかした?」

「百回ってとっても大変そうなんだよ?」

「ゲームならよくある話よ。そこは根気の問題ね」


 普段からゲームをやっている人は違うんだよ……。


 ともかく、ユーリさんが捕まえてくれたモンスターでテイムの練習はできたんだよ。

 最終的には、サーシャが契約できていたみたいなのです。

 でも、すぐに解放したようなので、お好みのパートナーじゃなかったみたいだね。


 そのあとも、しばらくはプレーンマウスを相手にボクとサーシャはテイムとコントラクトの練習、アプリは手加減スキル取得のための練習に励みましたよ。

 これも、明日モフモフを入手するためと思えば頑張れるのです!

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