36.庭作り師ハイネさんです!
さて、お昼を食べて午後のログインですが、まだガイルさんはきていませんね。
メールではそんなに遅くならないうちにくると言っていたのですが。
「おう、リーン。待たせちまったな」
あ、ガイルさんがやってきたんだよ。
その後ろには……ドワーフのプレイヤーさんですかね。
いかにもなおひげを生やしてますし、身長もボクと同じくらいなんだよ。
「ほう、この子が新人なのに庭を買ったという子か」
「おうよ。リーン紹介するぜ。工芸士のハイネ爺さんだ。ハイネ爺さん、こっちはリーンな」
「ハイネさんですね。リーンなんだよ。よろしくです」
「ハイネじゃ。呼びやすいように呼んでもらってかまわんぞ。ギルド内では『ハイネ爺』や『ハイネ老』と呼ばれているがな」
声もそうですが、お爺ちゃんのプレイヤーさんですかね。
ちょっと興味がありますよ。
「ハイネさん。ハイネさんって、結構なお歳なんです?」
「うむ。今年で六十七歳じゃ。若い頃からゲームは好きでの。なかなか止められん」
なるほどなのです。
お年を召してもゲーマーなんですね。
「ハイネ爺さん、そろそろ自己紹介はいいか? 庭作りの話し合いに進みたいんだが」
「おう、かまわんぞ。リーンのお嬢ちゃんもかまわんか?」
「はい、大丈夫なんだよ」
ガイルさんの仕切りで本題に入りましたよ。
庭作り、どうしましょうかね。
「じゃあ庭作りの話だ。って言っても、リーンはあまりわかってないだろ?」
「あまりというか、まったくわからないんだよ」
「だよな。普通のプレイヤーはある程度知識をつけてから手を出すコンテンツだしな」
「むう。ボクにはパートナーたちと遊べる空間が必要だったのです」
「ま、そこは否定しないさ。さて、そういうわけなんだが、ハイネ爺さんなにかいいアイディアはないか?」
ガイルさんから話を向けられたハイネさん。
少し考えてから、話し出したんだよ。
「そうじゃのう。まず大前提として、遊び回れる空間がほしいと」
「ですね。そのスペースは確保してもらわないと困るのですよ」
「ふむ。それ以外に要望はあるかの?」
「そうですね……今日、ボクのファーラビットが庭で寝ようとしていたのですが、草陰もなかったのでそう言うのを用意することって可能です?」
「草陰か。それも可能じゃが、どうせなら林か森を作ってしまうほうがよかろう。お嬢ちゃんの話し方だと、ほかにもパートナーを増やしていくのじゃろう?」
「もちろんですよ。次の目標は、フォレストキャットとナイトオウルです」
時間があったので次に仲間にできそうなモフモフを調べておきました。
レベル帯がちょっと離れていますが、次に狙うべきモフモフは先ほどの二種類なんだよ。
「その辺のパートナーは林や森に生息しておるからの。同じ環境を用意してやったほうがよいじゃろう」
おお、さすが庭作りに詳しいだけあっていろいろ考えてくれてますね。
でも庭に林って作れるものなんでしょうか?
「なるほどです。でも、庭にそういうものを用意することってできるのですか?」
「林というか、木を生やすことができるのでな。それを一カ所にまとめて林や森を作るのじゃ」
「なるほど。すごいのですね」
「ほかにもいろいろ応用はあるがの。詳しい説明をしても覚えられんじゃろ」
「そうですね。難しいと思うんだよ」
「その辺も含めて儂に任せておけ。悪いようにはせん」
おお、頼もしいですね。
でも、そうなると、気になるのは費用的な問題ですよ。
「ちなみにハイネさん。改装費用ってどれくらいかかるものなんですか?」
「一から十まで普通にやれば数百万程度は必要になってくるのう。儂の場合は作れる家具を自作するので、もっと安く済ませられるが」
……数百万ですか。
とってもじゃないけど、払える額じゃないんだよ。
「そう言うところも含めて初心者が手を出せるコンテンツじゃないんだよ」
「そうは言われても、買ってしまったものは仕方がないのですよ、ガイルさん」
「ま、そういうこったな。で、改装費用は足りないよな?」
「もちろん、そんなにお金はないのですよ」
ゲームを始めて三日目なのにそんな大金を持ってたら苦労しないと思うのです。
そこのところわかっていてハイネさんを紹介してくれたのですかね?
「今回の改装費用は俺が支払ってやるから気にすんなよ」
ガイルさんの口から飛び出たのは驚きの言葉だったんだよ。
「え、数百万かかるって話なのに、いいのですか?」
「数百万ってのは一般的な話で、今回の改装費用はそこまでかからないよな、ハイネ爺さん?」
「そうじゃの。庭を実際に見てみないことにはなんとも言えんが、かかっても百五十万程度じゃろう」
「ってわけだ。俺の所持金は数千万あるからこの程度の出費は気にしなくてもいいんだな、これが」
数千万の所持金があるからと言っても、気前がよすぎるんだよ。
これは裏になにかありますね?
「ガイルさん、本音はどこにあるんだよ?」
「本音か。本音なぁ……昨日のレッドの件で迷惑をかけた見返りってことにしておいてくんねーか?」
「それにしては気前がいいと思うのですよ」
「俺もそう思うが、ちょうどいい機会だからな。ほかのふたりにも同じような支援は考えてるから気にせず受け取ってくれや」
「ちなみにどういう支援を考えているのです?」
「……ふたりが家を買ったときにハイネ爺さんにお願いする?」
「それ、すごい先じゃないです?」
「……仕方ねーだろ。あまり強すぎる装備を与えてもいいことはないし、そもそも使えなくなっちまうからな」
そうなのです。
このゲームには装備を扱うための必要ステータスというのがあるんだよ。
なので、初心者が強い武器を手に入れても必要ステータスに足りなくて装備できないとかが起こりうるのです。
よく考えられていますね。
「ともかく、今回の件は夜にでも説明しておくさ。そういうわけだから、遠慮なく受け取れ」
「それならありがたく受け取るのですよ」
庭の改装ができることは願ったり叶ったりですからね。
ガイルさんの厚意に甘えましょう。
「話はまとまったかの? それでは、実際の庭を見せてもらいたいのじゃが」
「わかったんだよ。……はい、ここです」
「ほほう、飛行庭か。初心者にしては思い切った庭を買ったのう」
「そうなのです?」
ボクはプレビュー機能で気に入ったので勢いで買ってしまいました。
なので、あまりその辺はわからないのですよ。
「課金庭はグレードがあってな。より高額なものほど庭が広くなるのじゃよ」
「……世知辛いですねぇ」
「庭作りは一種のエンドコンテンツじゃからのう」
エンドコンテンツ……確か、最上級者が挑むクエストとかのことですよね。
庭作りがなぜそんなことになるのかはよくわかりませんが、とりあえず触れないでおきましょう。
「ともかく、飛行庭ならば希望に添える庭を作れるぞい。まずはメニューを操作して、飛行庭の広さを最大限まで拡張してくれ」
そのあとはハイネさんの指示に従っていろいろと設定をいじりましたよ。
ボクがログアウトしていても庭を出しっぱなしにできる機能とか、いろいろ教わりました。
あと、ほかになにか希望がないかと聞かれたので『ドッグランがほしい』と答えたら、『そもそも自分の庭でドッグランは必要か』と返されました。
確かに、自分の家で走らせるのに囲いは必要ないですよね。
そう言うわけで、設定すべきことはすべて整ったのです。
ハイネさんは二日もあれば完成すると豪語していましたし完成が待ち遠しいんだよ。
お爺ちゃん、あまり無理しないといいのですが。
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