35.ひとまず庭は購入したんだよ!
購入する庭を決めたら決定ボタンを押しましたよ。
これでこのお庭はボクのものですね!
「……おや? 鍵のようなアイテムが手に入っただけなんだよ?」
「それが庭に通じる門を作るためのゲートキーよ。それをなにもない場所に挿すことで門ができるわ」
「ほうほう。それでは早速……」
「その前にプレビュー空間から出なくちゃダメよ。あと、注意事項も説明してあげるからちょっと待ってね」
「了解なんだよ」
確かに、この空間で自分の庭を出すことはできなさそうですね。
あと、注意しなくちゃいけないこともあるそうです。
しっかりユーリさんの話を聞きましょう。
飛行庭のプレビュー空間から出ると、入り口が消えてなくなったんだよ。
そして、落ち着いたところでユーリさんが説明してくれます。
「庭を出すときの注意事項だけど、他の人の通行を邪魔するところに出さないようにすることよ。この部屋だったら壁際に出すとか、中庭だったら端のほうに寄せて出すとかね」
「なるほどなのです。確かに通り抜けの邪魔になるところに門があったら困りますね」
「まあ、通り抜ける方法がないわけじゃないんだけど……基本的には邪魔にならないようにすることね」
「わかったんだよ。ほかに注意することはありますか?」
「そうね……門を出せるところは、基本的に街の中だけってところかしら。街の外でも一部例外的に出せるところはあるけれど、邪魔になりかねないからあまり門を出すことはないわね」
「了解です。説明ありがとうなんだよ」
「どういたしまして。それで、このあとはどうするのかしら」
「それは自分の庭に行ってみるんだよ。場所は……中庭にしましょう」
「わかったわ。渡すものがあるから少ししてから私も行くわね」
渡すものとはなんでしょう?
まあ、いまは気にしても仕方がないので中庭に行くのですよ。
中庭に着いたらユーリさんに習ったとおり邪魔にならない場所を選んでゲートキーを使ってみます。
なにもないところに突き刺すので不安だったのですが、見事に立派な門が出てきたのですよ!
これが庭の入り口なのですね。
「それでは入ってみるんだよ」
「オン」
門をくぐった先は、プレビュー時と同じような空に浮かぶ庭です。
プレビューと違うのは、庭の真ん中に小さな家が建っていることですかね。
「ふむ、なにもないですし家に入ってみるんだよ」
「ワフン」
見るからに一階建ての小さな家は、中に入ると家具はなにもなく殺風景なんてものじゃなかったのですよ。
これは家の中も含めて自分で作れということですかね。
「うーん、家の内装とか庭作りなんてやったことがないのですよ。どうすればいいのでしょうね」
「ワオン」
頭を悩ませていると、ベルの音が鳴り響きました。
なんの音かと思いましたが、どうやら門のところで入室したい人が来るとベルが鳴るようですね。
今回きたのはユーリさんでしたよ。
もともとくる予定でしたので、入ってきてもらいます。
「さっきぶり。相変わらず、最初はなにもないわよね」
「なにもないですよね。どうすればいいのか途方に暮れていたところなんだよ」
「まあ、そうなるわよね。とりあえず、テーブルに椅子、それからベンチを持ってきたからそれで休みましょう」
「わかりました」
ユーリさんがとってきてくれたのはこれだったのですね。
特に場所を決めてもいないので、入り口近くにデンと置いてしまいます。
「あと、お菓子も持ってきたわ。それで、リーンちゃんはこのあとどうするの?」
「どうしましょうか。とりあえず、パートナーたちを呼び出して一緒に遊びたいのですが」
「リーンちゃんらしいわね。それだったら……」
ユーリさんにやり方を聞きながら設定を変更します。
すると、呼び出していなかった黒号にプリム、星兎たちが庭にやってきたんだよ!
庭にやってきたパートナーたちは思い思いに過ごし始めました。
黒号とプリムは走り回り、星兎は……その辺で寝始めましたね。
ただ、寝るにしても木陰や草むらがないのでちょっとかわいそうかな。
「これでパートナーたちは大丈夫ね。ほかにやっておきたいことはある?」
「今のところはないのです。ありがとうございました」
「わかったわ。そういえば、リーンちゃんはパートナーの情報をどこで調べているの?」
「ええと、適当な攻略サイトなのですが……どこかいいサイトがあるのですか?」
「それならこのサイトが便利よ。いろいろなパートナーの進化情報や見た目も載っているから」
見た目もですか、それはいいですね。
ユーリさんが教えてくれたサイトは、初めてライトニングシーズーの情報を調べたサイトと一緒でした。
あの攻略サイト、そんなにいい場所だったのですね。
「それじゃあ、約束の時間が近いから私は行くわね」
そういえば、ユーリさんはフレンドとの待ち合わせがあるんでしたっけ。
帰っていくユーリさんを見送り、ボクはパートナーたちと遊ぶことにします。
うーん、やっぱりフライングディスクのようなおもちゃがほしいですね。
そんな風にしばらく遊んでいるとまた訪問者を告げるベルが鳴りました。
はて、今度は誰でしょう?
「はいはい、こちらリーンです。どなたですか?」
「おう、ガイルだ。入っても大丈夫か?」
「大丈夫ですがなにもないんだよ」
「そんなのわかってるって。入室許可をくれ」
やってきたのはガイルさんでした。
ですので、入室許可を出します。
「おう、ユーリに聞いたが本当に庭を買ったんだなぁ」
「パートナーとふれあうためには必要なのです」
「まあ、お前らしいな。それでだ、俺からも購入祝いを持ってきたぞ」
「購入祝いですか? もらってもいいのです?」
「ぶっちゃけ、もう使っていないアイテムだ。有効利用してもらったほうがありがたい」
「それではありがたくいただくのですよ」
ガイルさんがくれたのは『ホームオブジェクト:二階建てログハウス』というアイテムだったんだよ。
詳しく話を聞くと庭に建っている家は入れ替え可能らしいのですよ。
入れ替えのためのアイテムがホームオブジェクトだということなのです。
もらったアイテムを使ってみると一階建ての小さな家がなくなり、代わりに二階建てのログハウスが現れましたね。
「ほへー。なんだかすごいのですよ」
「俺が昔使ってたホームオブジェクトのひとつだ。遠慮なく使ってくれ」
「ひとつということは、同じようなものがほかにもあるのですか?」
「いくつかあるぞ。興味があるのか?」
「いえ、聞いてみただけなのです」
そんなたくさんの種類があっても困るだけですからね。
このログハウスでも大満足ですよ。
「それで、このあとどんな庭にするか決めてないんだって?」
「はいですよ。パートナーたちと遊ぶことだけを考えていたのでどんな庭にするかとかまったく考えていなかったのです」
「なるほどなぁ。ユーリが今度、温水の噴水を持ってくるとは言っていたがそれだけじゃ殺風景だしなぁ」
「おお、それは嬉しいですね。グルーミングがこの庭でもできるのですよ!」
あの噴水があるだけでも大分違うと思うのです。
でも、ガイルさんの言うこともわかりますね。
「……よし、こういうときは庭作りの専門家に任せよう」
「専門家です?」
「おうよ。うちのギルドの装飾もだが、庭作りや家の内装を一手に引き受けている職人がいるんだよ」
ほうほう、それはすごいのですよ。
「でも、そんな人いましたっけ?」
「普段は新人とかと接点ないからな、あの人は」
確かに庭作りをする人だと新人にはあまり接点がなさそうなんだよ。
しかし、気になることがひとつありますね。
「ガイルさん、お金はどうするんだよ?」
「そっちの心配はしなくていいぞ。いいようにしてやるから。むしろ、一から十まで庭作りをできると聞いたら無償でも引き受けてくれそうな人だしな」
「それはそれで心配なんだよ……」
ともかく、職人の人を紹介してもらうことは決まりました。
多分、今日の午後にはログインするらしいのですよ。
そのときに顔合わせとかいろいろな打ち合わせをすることになりました。
さて、どんな人なのかちょっと楽しみですね。
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