第五章 三日目はお庭作りです!
34.モフモフたちに囲まれるための先行投資ですよ!
皆さんおはようございます、リーンなんだよ。
今日は《infini fantaisie》開始三日目、月曜日。
ボクやサーシャはすでに中学校を卒業してますので特に用事はないのです。
でも、アプリ……杏は普通に学校の日なんだよ。
というわけで、朝からひとりでログインです。
今日の目的は昨日の夜のうちに調べておいた、ある目的を達成することなんだよ!
昨日、ゲームの中とはいえいろいろあって疲れた身体にむち打って、少し調べ物をしたのです。
すると、ボクの願い事を叶えるとてもステキな情報が見つかりましたよ。
ステキな情報とは、三匹以上のモフモフとふれあえる方法です!
……いや、方法自体は知ってましたよ。
ユーリさんのように『庭』という個人の家みたいなものを入手すればいいのですから。
でも、肝心の庭を入手する方法がわからなかったのです。
それで調べてみた結果、普通に入手するためには五番目の街まで行ってクエストをクリアする必要があるとわかりましたよ。
いまのボクではこの方法では入手不可能だったのです。
でも、本題はここから。
なんと、そんな面倒な手順をこなさなくとも庭を入手する方法があったのですよ!
それは『課金アイテムとして庭の所有権を買ってしまう』ことなのです!
もちろん課金アイテムですので、リアルマネーが関わってきます。
でも、シズクちゃん――ライトニングシーズー――を買ってもまだボクにはお金が残っているのですよ!
これを使って庭を購入するのです!
「さーて、どの庭がいいですかねー?」
「オン?」
ひとりでいるのは寂しいのでシズクちゃんだけはしっかり呼び出してあります。
ボクの独り言にもしっかり反応してくれる辺り、本当にかわいい子ですね!
そんなシズクちゃんの頭をなでていると、談話室に新しいログイン者がやってきたんだよ。
「あら、リーンちゃん、おはよう」
「おはようなんだよ、ユーリさん」
やってきたのはユーリさんでした。
ボクも朝ご飯を食べてすぐにログインしたのですが、ユーリさんも結構早くからログインしていますね。
「ユーリさん、なにか用事があるのです?」
「そうね。まだ時間はあるけど、フレンドと会うことになってるわ」
なるほどなんだよ。
それで、こんな早くからログインしてきたのですね。
「リーンちゃんはなにをしているのかしら」
「ボクですか? ボクは庭を購入するためになにがいいか選んでいるのですよ!」
得意げに宣言しましたが、ユーリさんは渋い顔ですね。
なにかあったのかな?
「リーンちゃん、まだ庭には手を出さないほうがいいと思うわ」
「そうなのです? 庭があればパートナーたちとふれあえて便利だと思うんだよ」
「……ああ、なるほど。そのために買うのね」
ユーリさんはなにかに納得したような様子なんだよ。
はて、ボクはなにか変なことでもいいましたかね?
「リーンちゃん、基本的に庭ってかなりお金がかかるものなのよ」
「そうなのですか? 課金アイテムで買ってしまえば、すぐ手に入ると思っていたのですが」
「まあ、手に入れるだけならそれで大丈夫よ。でもそれだと最低限の庭と家しかないのよ。わかりやすく言えば殺風景ね。その見た目を整えるには、初心者には厳しい金額が必要になるわ」
なるほどなのです。
庭を整えるにはお金がかかるのですね。
でも、そんな心配は必要ないのですよ。
「そこは大丈夫なんだよ。ボクはパートナーとふれあえれば十分なのです」
「……そうよね。リーンちゃんってそれで十分なのよね」
「ですよ」
ユーリさんも納得してくれたことですし、庭選びを再開です。
一番安いところでは『平原の庭』が五百円ですか。
高級なところだと、五千円になるのでかなり差がありますね。
「それで、リーンちゃんの好みの庭はどんなところなのかしら?」
「そうですね……見晴らしのいいところがいいんだよ。ああ、でも、予算は二千円以内ですね」
「二千円で見晴らしのいいところねぇ。本来は『星見の丘』とかが見晴らしがいいのだけど……あそこ四千円もするのよね」
四千円ですか……。
それは普通にパスですね。
四千円はボクのお小遣い的に厳しいんだよ。
「二千円で見晴らしがいいところとなると、飛行庭があるんだけど……あそこは人を選ぶからねぇ」
「飛行庭です?」
「ええ、飛行庭よ。文字通り空を飛ぶ庭ね」
空を飛ぶ庭ですか!
それは面白そうなんだよ!
「ユーリさん、それ、面白そうですね!」
「そう? 気になったのなら、プレビュー機能があるから確認してみるといいわ」
ほうほう、プレビュー機能ですか。
確かに、購入ボタンの横にプレビューボタンがありますね。
それではこちらを押してみましょう!
「おお、門が出てきたんだよ!」
「これが庭の入り口ね。さあ、入ってみましょう」
ユーリさんと一緒に門の中へと入ってみます。
そこはまさに青空が広がる中を飛んでいる庭だったんだよ!
「おお、本当に庭が飛んでますね!」
「庭が飛んでいるというか、平べったい地面が飛んでいるというかね」
「でも、ここが人を選ぶのですか? ここならたいていの人は気に入ると思うのですが」
ボクの疑問にユーリさんは手招きしながら答えてくれます。
「庭の端まで行ってみればわかるわ。とりあえずそこまで行ってみましょう」
ということなので、ユーリさんと一緒に庭の端まで行ってみます。
そこからの眺めはまさに絶景でした!
「おお、雲が下に見えますね!」
「ええ、そうね。それから大地も眼下に広がってるわね」
「確かにいい眺めなんだよ! ……それで、これがなにか困ることなんです?」
ボクにはこれで困ることがあるとは思えないのですが。
ボクの質問に、ユーリさんが庭の端の端に手をかざしながら答えてくれましたよ。
「これね。ここに見えない壁があるの」
「ほほう。……おお、本当に壁がありますね」
「でも、高所恐怖症の人には落ち無いとわかっていても足がすくんでダメらしくてね……」
ああ、ようやく理解できました。
ボクは平気ですが、ダメな人はダメらしいですからね。
「そう言うわけだけど、リーンちゃんどうするの?」
「ボクは大丈夫なのでここに決めました! 今日からここがボクの庭なんだよ!」
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