33.街に戻っていろいろ整理ですよ
「おお、これがリターンホームですか。一瞬で街まで戻れましたね」
「ええ、便利でしょ。これを覚えてから、本当の意味での冒険がスタートするわけね」
「そうなのですね。それではまずどこからいきましょうか?」
ギルドホームに戻る前に寄る場所はいくつかあるのですよ。
クエストボードでクエスト完了報告や、今日の戦利品を素材屋で売ったりですね。
早くギルドホームに戻って星兎を洗ってあげたいのですが、今日の戦利品は多めなので先に清算しなくちゃなんだよ。
「それじゃあ、まずクエストボードでクエスト報酬の受け取りね。それで全員レベルが上がるんじゃないかしら」
「そうだといいんですが……」
「まあ、上がらなかったとしても、またがんばればいいわよね」
サーシャの不安げな言葉にも、ユーリさんは軽く返事をしたよ。
ボクたち三人ならプレーンウルフもなんとかなることがわかったわけです。
なので、アインスベル近辺でのレベル上げは問題ないということでしょう。
さて、クエストボードでクエスト完了をしましたが、レベルが上がったのはボクだけでしたね。
ボクはプリムと戦った時の経験値があった分、少し経験値が皆より多めだったのでそのおかげでしょう。
「さて、次は素材の売却だけど……リーンちゃん、レッドくんから奪ったアイテムはどうするの?」
ああ、そういえばそんなものもありましたね。
インベントリでは『レッドの所持品』という名前でひとくくりにされているので忘れてましたよ。
「うーん、あいつのアイテムを持っているのも気持ちよくないですし、売り払ってしまいましょう」
「……まあ、リーンちゃんがそれでいいというならかまわないけどね」
というわけで、レッドの所持品だったものはすべて売却ですよ。
いらない素材も売却してお金が結構貯まりましたね。
それから、アイテム整理をしていて思い出したのですが、星兎をテイムしたときにもアクセサリーをくれたのですよ。
効果的にはプリムがくれたアクセサリーの下位互換だったわけです。
でも、両方装備できたのでいまは両方装備してますよ。
あとは、サーシャがプレイヤー間取引用のマーケットボードからアイテムを買っていましたね。
なにを買ったかと思えば、ボクがプリムからもらったアクセサリーでしたよ。
シルヴァンのコントラクトに苦労したのが大分響いたのでしょうね。
「さあ、やることも終わったしギルドホームに帰りましょうか」
「了解なんだよ」
「わかりました」
「帰りましょう!」
なんだかんだ今日は疲れましたからね。
ゲームの中とはいえ、これだけ活動したのです。
夜はぐっすり眠れると思うんだよ。
そんなことを考えながら四人でおしゃべりしつつギルドホームに向かったら、門の前に人影がありました、
「……戻ったか」
ギルドホームの前にいたのは斬魔さんでしたよ。
はて、こんなところでなにをしているのでしょうか?
「あら、斬魔。そっちはどうだったの?」
「当然失敗だ。前も一人で挑んで失敗だったのに、今日は回復アイテムも強化アイテムもなかったんだ。当たり前の結果だな」
「それはご愁傷様。それで、騒いでいた本人は?」
「……そちらについてはガイルに聞いてくれ。それよりもそちらの三人に用があって待っていたのだ」
はて、ボクたちに用事ですか。
なにかあったのでしょうかね?
「まずは、俺のところのレッドが迷惑をかけて済まなかった」
斬魔さんはそう言うなり頭を下げてきたんだよ。
「それは斬魔さんが謝ることじゃないですよ」
「そうですよ。顔を上げてください」
「……そうか。それでも、俺が監督していた人間が迷惑をかけたのは事実だからな。謝っておかねば始まらない」
うーん、斬魔さんって律儀ですねえ。
そんなこと気にしなくてもいいのに。
「それから、三人にお詫びの品も用意してある。受け取ってくれ」
……本当に律儀なんだよ。
そこまでしなくてもいいと思うのですが。
困ったので、ユーリさんにどうするか聞いてみました。
「……まあ、仕方がないんじゃない? そこまでする必要はないと思うけど、斬魔がすでに用意してしまったわけだし」
とのことなので、斬魔さんからのアイテムを受け取ることに。
渡されたアイテムなんですが、サーシャとアプリにはそれぞれ魔法攻撃力と物理攻撃力が上がるアクセサリーでした。
どちらもマーケットで手に入るのですが、初心者にはちょっとお高い程度のアイテムらしいです。
そしてボクのもらったアイテムですが……。
「おお、グルーミングセットなんだよ!」
ボクにはなんとグルーミング用のブラシやシャンプーのセットだったんだよ!
そういえば、斬魔さんはボクがブラシやシャンプーを持ってないことを知ってましたね。
これは本当に嬉しいのですよ!
「……斬魔、また買い込んできたわね」
「草原の目覚めで買えるアイテムを一通り買ってきただけだ」
「それを買い込んできたというのよ。あそこで一通り買えば、課金アイテム以外はほぼ揃うんだから」
「値段的にはほかのふたりと大差ないから問題はなかろう」
ユーリさんと斬魔さんがなにか話をしていますが、ボクはグルーミングセットに夢中なのであまり聞いてませんよ!
ためつすがめつグルーミングセットを愛でて、ユーリさんと斬魔さんの話が終わってるのを確認したらお礼を言いましょうか。
「斬魔さん、ありがとうなんだよ!」
「なに気にするな。俺の資産からすれば、たいした問題ではなかったからな」
「ですが、本当によかったのですか? あの程度の事で私たちまで装備をいただいてしまって……」
「あれのせいで時間をロスしたのは全員だからな。むしろ返されても困るのでもらってほしい」
「そういうことなら、遠慮なくもらいますね。ありがとうございます、斬魔さん」
ボクたち三人との話が終わったあと、斬魔さんはログアウトしていきました。
本当にボクたちを待っていたようですね。
もう少し早めに帰ってくればよかったでしょうか。
そして、ギルドホームに戻り談話室に行くと今度はガイルさんが待っていました。
「今日は本当に済まなかったな。まさか、レッドがあそこまでバカをやるヤツだとは思ってもみなかった」
「まったくよ。もう少し人選には気をつけたほうがいいんじゃない?」
「ユーリも厳しいな……だが、事実だから仕方がないか」
ユーリさんとガイルさんのやりとりが終わったあと、今回の顛末を聞いたんだよ。
まず、レッドのヤツはギルドを追放になったそうですね。
追放というか、本人からでていくと言って出て行ったそうなんですが。
ボクに負けて装備品以外のアイテムと所持金をすべてなくしているのに、これからどうしていくつもりなんでしょう?
あと、ガイルさんからも後日なにかお詫びをするということらしいのですが……さすがにそこまでしてもらう必要はないのですよ。
ただ断ろうとしてもダメだったので、おとなしく受け入れろというユーリさんのアドバイスを受け入れておきます。
お詫びの方法は……まあ、強めの武器を作ってもらうことになりそうですね。
そんなこんなで大人な話し合いも終わりました。
なので、中庭に出て新しく仲間になった星兎を新しく手に入れたグルーミングセットでお手入れですよ。
星兎も最初は逃げようとしましたが、何回かブラッシングをされるうちにおとなしくなりました。
ブラッシングのあとはシャンプーとドライヤーもかけてグルーミング終了です。
これで、モフモフな毛並みがさらにモフモフになったんだよ!
あと、サーシャのシルヴァンがうらやましそうな目で見ている気がしたので、そちらもグルーミングしてあげました。
ついでにサーシャのファーラビット、レインも呼び出してもらってそっちもグルーミングです。
これで皆モフモフになって最高なんだよ!
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