32.プレーンウルフはさっくりとです

 さて、無事にファーラビットもゲットできた。

 今日のミッションはこれで終わりなんだよ。


「リーンちゃん、なにを終わったみたいな顔をしているのかしら」

「……ああ、プレーンウルフも狩りに行かなくちゃいけないのでしたね。うるさいのがいなくなったのでもういいかと思ってました」

「あなたたちのレベル上げも兼ねているからね。できれば今日中にレベル10まで上げるわよ」


 ふむ、レベル10ですか。

 なにかあるんですかね?


「ユーリさん、レベル10ってことは【リターンホーム】ですか?」

「正解。さすがサーシャちゃんね」


 サーシャはなにか知っているみたいですね。

 聞いてみましょうか。


「サーシャ、リターンホームとはなんですか?」

「フィールドやダンジョンから、一気に街まで戻れるスキルよ。まあ、三十分に一回しか使えないらしいけど」

「昔は十二時間に一回だからかなり緩和されたほうよ。これを覚えれば、狩りを終えたあと、歩いて帰る必要もないしね」

「なるほどです。確かに便利なスキルなんだよ」

「というわけで、プレーンウルフ狩りよ。さあ、行きましょう」


 再びユーリさんに引率されて、狩り場へと移動なんだよ。

 ユーリさんが連れてきてくれた場所は、それなりの数のモンスターがいるのにプレイヤーがひとりもいない不思議な場所だね。


「ユーリさん、ここほかのプレイヤーはいないのですか?」

「あまりここまで入ってくるプレイヤーはいないわね。ここって街道からはかなり離れてるし、森を突っ切るか迂回するかしなくちゃだから穴場なのよ」

「そうなのですね。いい狩り場ですよ」


 そういえばボクたちはウサギ狩りの狩り場からきていたのです。

 なので、ぐるっと回り込む形になっているのだったよ。

 探せばこういう穴場は結構あるのかも。


「さて、それじゃ早速狩りを始めましょうか。……とは言っても、最初はレベル的につらいから、リーンちゃんにお願いしてサンダーボルトで経験値を稼ぎましょう」

「了解ですよ。それではシズクちゃん、よろしくです」

「オン!」


 シズクちゃんが魔法を使って、プレーンウルフの一団が姿を消します。

 プレーンウルフはひとかたまりごとにリンクしているとやらで、一度手を出すとまとめて襲ってくるらしいのですよ。

 ただ、いまはシズクちゃんがその集団ごと魔法で吹き飛ばしてますので、襲われる心配はないのですがね。


 さて、そんなことを繰り返すこと数回、ボクたちのレベルが上がって全員レベル9まで上がったのです。

 プレーンウルフは経験値が高いらしく、素晴らしい速度でレベルが上がりますよ。

 そして、ユーリさんの許可も出ましたので、いよいよプレーンウルフと実戦開始です!


「うわ!? 思ったよりも攻撃力が高いんだよ!」

「リーンは黒号の回復に集中! 私たちでプレーンウルフを倒すわ!」

「了解なんだよ! シズクちゃんのサンダーボルトは?」

「ギリギリまで温存! 黒号が倒されそうになったら使って!」


 そう言うわけで、初戦からかなりの苦戦を強いられたんだよ。

 黒号のダメージがすごくて回復魔法をかけ続けないとすぐに倒されそうだし、数が多いから守るのも大変。

 唯一の救いはプレーンウルフのHPがそんなに高くなかったので、すぐに数を減らせたことですかね。


「うーん、プレーンウルフと普通に戦うのはつらいんだよ……」

「でもお姉ちゃん、スキルレベルがすごい勢いで上がってるよ?」

「それはそうだけど……それでもつらいのですよ」


 アプリのいうとおり、回復魔法のスキルレベルがガンガン上がっているんだよ。

 ほかのスキルは使う隙がないので上がってないのだけど、サーシャやアプリはまんべんなく使えているようなので幅広く成長しているようですね。

 うらやましいような、ボクには器用な戦い方ができないのでちょうどいいような。


「さあ、レベル10まであと少しだし気合いを入れていきましょう!」

「サーシャ、残りはシズクちゃんでいいのではないですか?」

「せっかくここまで戦ってきたんだし、もう少しがんばりましょうよ」

「ボクはちょっと疲れてきたのです。シズクちゃんのMPがなくなるまでサンダーボルトで攻撃して、それでも経験値が足りなかったら普通に戦うでどうです?」

「……仕方がないわね。そうしましょう」


 やったのですよ。

 これで楽ができるのです。


 サーシャへの提案どおり、シズクちゃんにお願いしてサンダーボルトを使いプレーンウルフを粉砕していきます。

 ボクのレベルはすぐに10まで上がったのですが、サーシャとアプリのレベルは10まで届かなかったようですね。

 仕方がないので、数戦普通に戦ってレベル上げをしましたよ。


「おめでとう、これで全員リターンホームが使えるわね」

「そうですね。それじゃあ、帰りますか?」

「そうね……その前に、あそこにいるプレーンウルフのユニーク個体を捕まえてみない?」


 ユーリさんが指さした先には、通常のプレーンウルフより立派な体格をした銀色の毛並みの狼がいました。

 あれがユニーク個体なんですかね。


「サーシャちゃん、あの子、ほしくない?」

「私ですか? 私よりもリーンのほうがいいような」

「リーンちゃんは戦力的に整っているからね。サーシャちゃんはまだ二匹しか契約していないでしょ? ソロのときは三匹契約しておいたほうが何かと便利よ」

「……そうですね。わかりました。そう言うわけだけど、かまわないかしらリーン」

「ときどきなでさせてくれれば問題ないのですよ」


 ボクたちの打ち合わせも終わり、あっという間にユーリさんが狼さんを動けなくしましたよ。

 それにサーシャがコントラクトを試しますが……なかなか成功しないみたいですね。

 そういえば、コントラクトはスキルレベルのほかにも自分のレベルと相手のレベルも関係あるのでしたっけ?

 テイムとちょっと仕様が異なるらしいので、あまり覚えていないのですよ。


 何回も失敗を繰り返し、MPポーションでMPを回復しながらコントラクトを行い、ようやく成功したみたいですね。


「……はあ、疲れたわ。お前の名前はシルヴァンね。これからよろしく」

「ヴォフ!」


 シルヴァンと名付けられた銀色の狼は一声吠えると、そのままサーシャのそばに座りました。

 ……ああ、パーティ枠がひとり分余っていて、召喚数も大丈夫なので強制的に送り返されないのですね。


「さて、それでは今日の予定は終了ね。リターンホームを使って街まで戻りましょう」

「わかりました。……あれ、行き先が最後に立ち寄った街とギルドホームの二カ所出ていますが……」

「ああ、それね。ギルド所属のプレイヤーはギルドホームにも戻れるのよ。今日はクエストの報酬を受け取る必要もあるし、街の方に戻るわよ」

「了解です。さあ、戻りましょう」

「わかったんだよ」

「はい。帰りましょう」


 こうしてプレーンウルフ狩りも問題なく終了したのですよ。

 やっぱりシズクちゃんは優秀ですね!

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