31.今度こそモフモフウサギをゲットですよ!
「どうやらボクの勝ちのようですね」
「オンオン!」
「ワオーン!」
「プー!」
パートナーたちも思い思いに勝ちどきを上げていますし、勝ったということでしょう。
実際、Winの文字と一緒に戦利品がボクの手元にきているんだよ。
「おい、てめぇ! 汚い手を使ってんじゃねぇよ!」
「はて、なんのことでしょうね?」
レッドが言いがかりをつけてきましたが、身に覚えのないことなのでスルーですよ。
「従魔を使ってきたことだよ! 従魔さえいなければ、最弱職のお前なんかに負けなかったのに!」
「そう言われても、従魔が使えるのはPvPシステムで認められた範囲なんだよ。それを知らずに挑んできたあんたが悪いんじゃないのです?」
「はっ、知ったことかよ! ともかく、俺のアイテムと所持金、返せよな」
どこまでも高圧的な態度をとるヤツだね。
正直、こんなヤツのアイテムなんていらないのですが、返却するいわれもないんだよ。
「お断りなんだよ。きちんとルールに従って行われたPvPの報酬なんだから返す理由はないんだよ」
「てめぇ……」
「そこまでだ、レッド」
ここで様子を見ていた斬魔さんが割って入ってくれましたよ。
正直、もっと早く助けてほしかったですが。
「今回の勝負は正当なルールに則ったものだ。ゆえに、その結果は遵守される」
「でも、あいつは従魔も使ってきたんですよ! 一対一の試合で!」
「テイマーやサマナー相手の試合では、従魔ありが基本だ。むしろ従魔なしのほうが特殊ルールだな」
「だったら、その特殊ルールでやり直してくださいよ!」
「ダメだ。これ以上、あちらに勝負を受ける理由がないからな」
ほうほう、従魔なしなんて特殊ルールもあるのですか。
それは気をつけないとなんだよ。
それから、しばらくレッドがごねていましたが、斬魔さんがすべてスルーしていました。
結局、試合の結果はこのままということで、レッドを追い出すことに成功ですよ!
「それじゃあな、ユーリ。世話をかけた」
「そうね。……でも、あの子の付き添いを続けるの?」
そう、斬魔さんはレッドと一緒に行くらしいんだよ。
「一応、見張りは必要だからな」
「見張りね。まあ、がんばりなさいな」
「ああ、そうさせてもらう」
去り際に斬魔さんは一言、「がんばれよ」とだけ言い残して去って行きました。
なんというか、かっこいい人ですよね。
そうこうしている間も、レアなウサギさんを出すためのウサギ狩りは続いているんだよ。
ユーリさん曰く、「これで出なかったら場所替えね」ということらしいのですよ。
そして、ボクもウサギ狩りに戻って十分ほど経った頃、周囲にウサギさんがいなくなったよ。
あ、このパターンは……。
「どうやら、ネームドを引き当てたみたいね」
「ネームドのファーラビットですか。モフモフならかまいませんが」
「モフモフなのは変わらないから安心して。ただ、テイム条件が『一定フィールド内を逃げ回るウサギを十分以内に捕まえること』なのよね」
「つまり鬼ごっこと」
「ええ、そうよ。それも、テイマーひとりで挑まなくちゃいけないから結構大変よ?」
「従魔はダメなんですかね?」
「従魔は……確か大丈夫だったはずね」
「ちなみに、モフモフウサギさんのHPはどれくらいでしょう?」
「このイベント中は無限……というか、どんな攻撃も無効化するはずね」
「だったら楽勝な気がしますよ。とりあえずがんばってきますね」
「行ってらっしゃい、リーンちゃん」
天井がとがった檻のような場所に閉じこもってるウサギさん。
これがネームド種のファーラビットですね。
挑戦するには……ああ、あそこの出入り口から入ればいいと。
「リーン、大丈夫なの?」
「多分大丈夫ですよ。まあ、結果を見ているのです」
「お姉ちゃん、がんばってね」
「アプリもそこで見ているのですよ」
さて、檻の中に入りました。
モフモフウサギさんもこちらに気がつき、試合開始なんだよ。
カウントダウンが始まる中、ボクたちはウサギさんを捕まえるためにバラバラに行動を始める。
ボクは横から回り込み、逆側はプリム、シズクちゃんと黒号は正面からですね。
「ワオーン」
「キューン!」
黒号が飛びかかって押さえつけようとしたところ、逆に踏み台にされましたね。
このウサギさん、かなりすばしっこいです。
「ワフワフ!」
「キュン!」
続けてシズクちゃん相手には、捕まる前に身体を蹴って離脱です。
本当にすばしっこい相手ですよ。
「バインドウィップ!」
ボクの攻撃がウサギさんを襲いますが。こちらもかわされてしまいしました。
ですが、これで、ウサギさんの姿勢を崩すことには成功ですよ。
「プキュー!」
「キュー!」
最後、プリムとモフモフウサギさんの直接戦闘。
空中に逃れているため、逃げ場のないモフモフウサギさんに対し、プリムは容赦のない蹴撃を食らわせるのです。
勢いよく地面にたたきつけられたウサギさん。
そこに、追い打ちの蹴りが炸裂して、ウサギさんは地面と水平方向へと飛んでいきます。
飛んでいった先には、黒号とシズクちゃんが待ち構えていました。
そして、飛んできたモフモフウサギさんをがっちりロックして動けなくすれば、試合終了ですよ。
うん、三分かかりませんでしたね。
今回のMVPはやはりプリムでしょうか。
プリムがモフモフウサギさんより足が速かったので、成立した作戦だったのです。
まあ、ダメだったとしても、ほかにも作戦は考えていたのですが……。
おっと、考え事にひたってないで、手早く契約を済ませてしまいましょう。
〈ファーラビットのテイムに成功しました。この個体はネームドモンスターのため名前がはじめからついています〉
〈同一種族内で初めてのネームドモンスターをテイムしました。ボーナスSP1が与えられます〉
おお、ちゃんとアナウンスも流れますね。
えーと名前は……星兎ですか。
そういえば、背中にお星様のマークがありますね。
さて、そんな星兎ですが、ボクになにかアイテムを渡すと消えていきました。
PT人数はレッドを追い出したので余っているのです。
だけど、ボクはすでに三匹のパートナーを呼び出しているので召喚枠制限に引っかかったというわけなんだよ。
「おみごとね、リーンちゃん。無事、ファーラビットを入手できたわね」
「そうですね。でも、このあと、進化させてもモフモフは大丈夫なんです?」
「ファーラビットの進化系統なら、モフモフ度合いは変わらないから安心して。ネームド種だったら『スターラビット』に進化させれば攻撃魔法も使えるウサギになるわよ」
ほうほう、それは興味深い。
「でも、とりあえずいまはひとまず休憩にしましょうか。それが終わったら、プレーンウルフ狩りね」
「了解なんだよ。それでは、休憩中は星兎のモフモフ感を楽しんでいましょうか」
ボクは黒号を一度送り返して星兎を呼び出します。
おお、やっぱりファーラビットはモフモフなんだよ!
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