30.まずはレッドと決着なんだよ!

「レッド君だったかしら。他人がテイムをしているモンスターに手を出すのはかなり問題行動よ?」

「そんなの知りませんよ? だいたい、テイマーなんていう底辺職が俺の邪魔をしていること自体が許されないんですから」


 まだ勝手なことをいいますかね、この男は!

 このテイムが終われば今度はプレーンウルフだったんだよ。

 それを邪魔しておいてなにを言っているんでしょうね。


「おい、レッド。さすがに謝れ。いや、謝って済まされる問題ではないが、人としての誠意の見せ方だろう」

「断りますよ斬魔さん。それより、ウサギはもう終わったんだろう。さっさと俺のプレーンウルフに行くぞ」

「なにを言っているんだ、お前は。お前が邪魔したせいでもう一度ユニーク探しからやり直しだろう」

「そんなの俺には関係ない事情ですよ。もう三十分近くも待ったんです。あいつらの事情にあわせるのは十分でしょう?」

「……お前は、本当に……」


 斬魔さんも大変ですね。

 あんな人でなしを監督しなくちゃいけないなんて。

 でも、ボクだって譲るつもりはないんだよ!


「ボクたちはもう一度ウサギ探しなんだよ。オマエは邪魔だからさっさとどこかに行くといいんだよ」

「なんだと! お前らの番は終わっただろうが!」


 おうおう、あいつもなんだか怒ってますね。

 常にプンプンしてた気もしますが。


「そもそも、プレーンウルフ狩りもボクたちの予定だよ。オマエはユーリさんや斬魔さんが頼むから、仕方なく連れてきたおまけなのです。我慢できないならひとりでプレーンウルフを倒しに行けばいいのですよ」

「ふざけんな! なんで俺がひとりで行かなくちゃいけねぇ!?」

「ボクたちもオマエと一緒に行く理由はないのですよ。そこを勘違いしてほしくないんだよ」

「お前ら三人だけでプレーンウルフが狩れるってのかよ!」

「十分に狩れますよ。だから、オマエはいらないのです」

「ちっ、ふざけたガキだ。そもそも、引率ふたりやガイルさんから依頼されている俺を追い出すことなんてできるのかよ?」

「できますよ。ね、ユーリさん?」


 行方を見守っていたユーリさんに、話を振ってみます。


「そうねぇ。さすがに今回の一件は看過できないわ。斬魔、どうしたらいい?」

「すまん。今回は完全に俺の失態だ。あいつは追い出してくれてかまわん」

「ちょっ、斬魔さんまでなにを言ってるんですか!?」

「話は決まったようね。それじゃ、パーティから追放しましょ」


 一応パーティを組んでいたボクたちですが、リーダーのサーシャがレッドを追放したんだよ。

 パーティ一覧からあいつの名前が消えたし、これで万事解決かな。


「おいお前ら! ふざけたまねするんじゃねえ!」

「ふざけてなんていないわ。引率ふたりの許可はもらったし、あなたも早くプレーンウルフと戦いたいんでしょう? だったらお互い願ったり叶ったりじゃないの」

「俺がここまで付き合ってやったのに、お前らは俺を手伝うつもりはないのかよ!」

「そもそも、あなたを手伝う予定は入ってないからね。それじゃ、どこへなりとも行ってちょうだいな」


 サーシャも冷たいですねぇ。

 アプリは……すでにファーラビットの群れに突撃していますよ。

 ボクも早くあっちに加わらないと。


「ふざけんな! クソ雑魚の分際で俺に指図してんじゃねえ!」

「……これはまた、えらいいいようなんだよ」

「ほんとね。何様なのかしら」

「俺様じゃない?」


 勝手に当たり散らして、勝手にわめいて、勝手に怒って。

 本当になにがしたいんでしょうね、あいつ。


「おい、そこのガキ! 俺と勝負しろ! 俺が勝ったらお前ら全員、プレーンウルフ狩りに付き合ってもらうぞ!」

「え、いやなんだよ。なんでそんな勝負を受けなくちゃいけないのさ」


 そもそも受ける理由もないですし、こちらにメリットがないわけで。

 そんな不公平な勝負は受けられないんだよ。


「……それならばリーンが勝った場合、レッドは装備品以外の所持アイテムすべてと所持金をリーンに譲渡する、というのはどうだ?」

「え、斬魔さん?」


 止めてくれるかと思っていた斬魔さん。

 なんと、促してきたんだよ。


「斬魔さん、ボクが勝っても負けてもめんどくさいだけなんだよ」

「それはわかるのだが……申し訳ない、この勝負受けてもらえないか? テイマーとして戦ってもらってかまわないから」

「テイマーとして?」


 聞き慣れない言葉に疑問符が浮かびます。

 すると、ユーリさんが耳打ちをしてくれたんだよ。

 ああ、そう言うことですか。

 それなら負けないね。


「わかったんだよ。斬魔さんが出した条件でなら勝負を受けるんだよ」

「はっ、テイマーなんて目じゃねーからな。そんな条件、関係ないぜ」


 さて、この勝負ですが、PvPシステムというのを使ってやるらしいのですよ。

 ただ、ボクにはよくわかりませんので、慣れているらしい斬魔さんにお任せなのです。

 最後の勝敗条件と勝利時のアイテム譲渡の部分だけ確認してOKボタンを押したよ。


「さあ、もう少しで戦闘開始だ。泣いても知らないからな!」

「それはこっちのセリフなんだよ」


 カウントダウンが始まり、カウントゼロになると同時にレッドが駆け寄ってきたんだよ。

 だけど、ボクの背後からも黒い影が駆け出してきてレッドをがっちりブロックだね。


「なに!? 従魔だと!?」

「テイマーはPvPでもパートナーが使えるらしいのですよ。次、プリム、ゴー!」


 ボクの背中を飛び越えて、アクロバティックな軌道でプリムが蹴りを放ちます。

 レッドはなんとかガードしましたが、かなりダメージを受けていますね。


「ちっ、仕方ねぇ。回復を……ってアイテムが使えねぇ!?」


 それもさっきのルールに明記されていたんだよ。

 アイテム類の使用禁止って。

 全然内容を読んでなかったようだね。


「さて、これ以上長引かせるつもりはないのです。最後、とどめです、シズクちゃん!」

「ワオーン!」


 シズクちゃんの鳴き声とともに稲妻が落ちてレッドを直撃なんだよ。

 目の前に『Win!!』の文字も表示されてますし、これで勝ったんだよね。

 うんうん、この子たちはあとで思いっきりかわいがってあげなくちゃいけませんね!

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