序章 《infini fantaisie(アンフィニ ファンテジー)》、始めます

1.モフモフなVRですと!?

「あー、今日もかわいいのですよ、ロビン~」


 どうも初めまして、ボクは小鳥遊たかなしひびき、モフモフを愛でるものですよ。

 今日はいつもどおり親友である相葉あいば沙樹さきちゃんの家に遊びに来ているのです。


 なぜなら、沙樹ちゃんの家には立派なモフモフであるゴールデンレトリバーのロビンがいるのですよ!

 ボクの家ではペットを飼うことができないのでうらやましい限りなんだよ。


 ペットを飼えない理由ですか?

 それは、親がアレルギー持ちだからですよ。

 重度のアレルギーですので、ペットの類いはダメなんだよ。

 ボクが沙樹ちゃんの家でモフモフして帰ったときは平気なのにね。

 どういうことなんだよ?


「相変わらず、ロビンの扱いがうまいわね、響」

「あ、沙樹ちゃん。ボクが何年モフモフしていると思ってるのですか?」

「……何年だったかしら。それにしても、ロビンも響の前ではリラックスし放題ね」

「リラックスできるようにモフモフしているんだよ。いつだって、ボクはモフモフを大事にしているのです」

「はいはい、そうだったわね。そういえば、響、春休みって暇?」

「はい、暇なのですよ。だからこそ、こうしてロビンにも会いに来ているのですが」

「そこは私に会いに来ていると言ってほしいわ」


 ボクと沙樹ちゃんは現在春休み中なのです。

 理由ですか?

 ボクたちは中学三年生で、卒業式を終えたためすでに春休みなのです。

 高校進学も無事に決まりましたし、入学までは特にすることがないんだよ。


「それはよかった。ならさ、このVRゲームで遊んでみない?」

「VRゲーム?」


 そう言って、沙樹ちゃんは一枚のパンフレットを広げます。

 沙樹ちゃんが広げたパンフレットには、ゲームの一画面らしい雄大な景色がプリントされてたんだよ。

 うーん、きれいだとは思うんだけど、あまり遊びたいとは思わないんだよ。


「沙樹ちゃん、ボクはあまりゲームはやったことがないんだよ」

「知ってるわよ。それよりも、下の方を読んでご覧なさいな」


 下の方ですか?

 えーと、なになに……なんですと!?


「沙樹ちゃん、ここに書いてあることは本当なんだよ!?」

「本当らしいわよ? ゲーム中でいろいろなモンスターや動物たちをパートナーとして使役できるって話」


 ほほう、これは面白くなってきましたよ!

 最近のVRゲームは現実と区別がつかないほどリアルだと聞きますし、期待ができますね!


「最近発売されたゲームじゃないから攻略情報とかもたくさんあるし、のんびり遊ぶならいいと思って」

「ほうほう。……それで、VRMMOってなんです?」


 VRゲームはわかるのですよ。

 でもMMOっていうのはよくわからないんだよ。


「あー……MMOっていうのは、簡単に言ってしまえば不特定多数のプレイヤーと同時に遊ぶゲーム、ってところかしら」

「ふーん、そうなのですね。モフモフを愛でるときに邪魔にならないならかまわないのですよ」


 MMOのことはよくわかりませんが、特に気にしなくても大丈夫そうなのはわかりましたよ。

 さて、そうなると問題は……。


「VRゲームと言うことは、VRギアが必要なんだよ」

「そのとおりね。持ってないの?」

「……持ってないんだよ」


 VRギア、買うと結構お高いんだよ。

 ボクの貯金、そんなにあったかなぁ。


「とりあえず、おじさんとおばさんに相談して見なさいな。それでダメならまた考えましょう」

「そうするんだよ。とりあえず、いまはロビンをモフモフするのですよ!」


 その日も帰る時間まで、ロビンをモフモフしてあげましたよ。

 ブラッシングなども一緒にしてあげましたので、ふわふわのモッフモフになりましたね!


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「というわけで、VRゲームがやりたいのですよ」

「VRゲームねぇ」


 VRゲームを始めるための最大の難所、親の説得フェーズなのですよ。

 ここをクリアできなければ、VR空間でのモフモフ生活は確保できないのです!


「……まあ、いいんじゃないか? 相葉さんのところの沙樹ちゃんも一緒に始めるんなら」

「それもそうね。響もペット以外に目を向けてくれるならいいことかもね」


 いいえ、お母さん。

 モフモフのためにゲームを始めるのですよ。


「ではゲームの許可はもらえるんだよ?」

「ああ、かまわないよ。ちょうど、VRギアも送られてきたことだしね」

「送られてきた?」

「ああ、まだ聞いてなかったのか。お義父さんが響の卒業祝いにってVRギアを送ってきたんだよ」

「それは聞いてないんだよ!」

「そう? それから、妹のあんずも一緒に遊べるようにって杏の分も送ってくれたわ。杏はもうお礼を言ったみたいだけど、あなたもあとでお礼の電話をしてあげてね」

「わかったんだよ!」


 予想外の展開になったけど、VRギアも無事にゲットできたんだよ!

 ゲームをする許可ももらえましたし、ゲームを買うための軍資金ももらえました。

 お爺ちゃんにもお礼の電話をちゃんとしたので、今日はこれから始めようとしているVRゲームのことを調べるんだよ。

 ちなみに、沙樹ちゃんとは明日の午前中にゲームを買いに行って午後から始めるということで約束してあります。


 えーと、ゲーム名は《infiniアンフィニ fantaisieファンテジー》ですか。

 英語じゃなくフランス語なのはなんででしょうね?

 開発者にフランス人が混じっていたのかな?


 どうでもいいタイトルのことは頭の隅に投げ出して、パートナーのことを調べます。

 すぐにパートナー情報をたくさん載せているサイトにたどり着いたんだよ!


「おお、このワンコ、かわいいのです!」


 そして、そこでボクは運命の出会いを果たしたんだよ!

 この子を手に入れるには課金が必要らしいので、きちんとその分のお金も持っていかなきゃですね!

 さあ、明日が楽しみになってきましたよ!

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