52.クイーンアントの報酬です!
〈ソルジャーアント戦MVPは『サーシャ=ナインテイル』です。MVP報酬が渡されます〉
〈クイーンアント戦MVPは『リーン=プレイバード』です。MVP報酬が渡されます〉
〈『クイーンアントを退治せよ』の貢献度に応じてクエスト報酬が渡されます〉
お、報酬の精算が始まったようですよ。
どうやらクイーンアントのMVPはボクのようですね。
MVP報酬と銘打たれたアイテムボックスを開けると『クイーンアントの勲章』というアクセサリーが手に入りました。
性能的には魔法攻撃力とHP、MPが上がるアイテムですね。
これはボクよりサーシャのほうが役に立ちそうですから、あとでサーシャにプレゼントなんだよ。
そのほかにも、クイーンアントやソルジャーアントの素材、クエスト報酬が残ってますが……それらの吟味はあとでいいでしょう。
「サーシャ、ソルジャーアントのMVPおめでとうなんだよ」
「リーンこそクイーンアントのMVPおめでとう。報酬はなんだったの?」
「魔法攻撃力とHPそれからMPが上がるアクセサリーです。ボクにはあまり必要がないのでサーシャにあげますね」
「あら、ありがとう。大切に使わせてもらうわ。私の報酬は物理攻撃力が上がってアプリ向けだからあの子に上げていい?」
「ええ、かまわないのですよ。よろしくお願いしますね」
「わかった。それじゃね」
サーシャとアプリがもあったアクセサリーは物理職向けですか。
ソルジャーアントはガチガチの物理系モンスターでしたし、当然でしょうかね。
「おい、ガキ!」
MVP報酬の行き先も決まったことですし、ボクはのんびりと戦利品の仕分けをやっておきましょうか。
「聞いてんのか、このクソガキが!」
なんだかまたうるさいのがわいてますが基本放置でかまわないですよね。
サーシャから教わった『ブラックリスト』やらに登録したおかげで、声も聞こえませんしうろちょろされて邪魔なだけです。
「てめぇ、ガキのくせに、生意気な態度をとりやがって……!」
んなぁ!
レッドが武器を取り出してこっちに襲いかかってきたんだよ!
もっとも見えない壁に阻まれて一定以上近づけないみたいですが、壁に向かって武器をガンガンたたきつける様はホラー映画みたいでなかなか恐怖演出ですね!
安全だとわかっているのでなかなか楽しめていますが!
「えーと、こういうときは、GMコール……と」
ボクは慌てず急がずGMコールを押し、対応を依頼したのです。
すると、先ほどまでガンガン見えない壁をたたき続けていたレッドが止まり、消えていきました。
どうやら、GMさんとやらが対応してくれたようですね。
「リーン大丈夫だった?」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「ああ、サーシャ、アプリ。ホラー映画を見ているみたいで恐くて楽しかったですよ」
「……それだけ余裕があれば大丈夫そうね」
「お姉ちゃんらしいけどね」
三人で和やかに話をしていると目の前に光の玉が降りてきて、そこからひとりの男性が出てきたんだよ。
見るからにファンタジーらしくないスーツを着込んだ男の人です。
「リーン=プレイバード様ですね。私は今回の件を担当させていただくことになりましたGM牧野と申します」
「牧野さんですか。リーンです。よろしくなんだよ」
「はい、よろしくお願いします。早速、本題に入らせていただきますが、今回の申請の件、プレイヤーネーム『レッド=ブレイブ』による度重なる嫌がらせ行為、暴言、暴行未遂であっているでしょうか?」
牧野さんという人のセリフはこっちに聞いてきていますが、最終確認をしてきているだけのようなんだよ。
ボクが頷くと、牧野さんもひとつ頷いて話を続けてくれます。
「かしこまりました。それではプレイヤーネーム『レッド=ブレイブ』に対するGMとしての処罰をさせていただきます。ちなみに、リーン様はなにかご希望がありますでしょうか?」
ご希望ですか。
あるとすればひとつですね。
「もう二度とボクの前に姿を現さないようにしてほしいんだよ」
「……かしこまりました。それでは、今回の件の迷惑料と言いますか慰謝料と言いますか……こちらをお収めください」
牧野さんから渡されたのはそこそこの現金でしたよ。
……いえ、ぼかすのをやめると十万以上の現金です。
「牧野さん、これ、もらいすぎではないですか?」
「大丈夫ですよ。このお金の出所は『レッド=ブレイブ』ですので。彼の資産を売却した結果がその金額となりますね」
「……思ったよりもお金持ちなのですね、あいつ」
「ははは。それでは、ご要望も聞けましたし、本日はこれで失礼いたします。今後とも楽しい旅をお楽しみください」
挨拶を済ませると、牧野さんは登場したときのように光の玉になって帰っていきました。
忙しい人なんですね、GMって。
「いやはや。GMが個別案件の処理にやってくるとはね。驚いたよ」
「あいつの場合、累積警告がたまっていたからでしょうね。それで、あいつのパーティメンバーがなんの用ですか?」
そう、気がついたら、レッドのパーティメンバーさんのひとりがこっちにやってきていたんだよ。
「いや、とりあえず謝罪をね。私たちはギルド『夜明けの舟』の幹部……のサブキャラなんだ。彼、レッドは『夜明けの舟』の入団希望者だったんだよ」
「……よくあんなやつを入団させるつもりになったんだよ」
「まあね。彼のよくない噂は耳にしていたから、今回こういう試験をすることになったんだ。ちなみに、彼は我々がギルド幹部だということを知らない」
「へぇ、それは面白そうね。それで、どうだったの?」
「うん、何回か会った限りではそこまで悪い人間というわけではなかったかな。ただ、今回のように、年下のプレイヤーをみると顎で使うようなそぶりは見受けられたが」
「それだけでも大問題じゃない?」
「まあね。それで最後にゴブリンの巣退治をやることにしたんだが……結果はこれさ」
「よかったじゃないの、ギルドに加入させる前に本性がしれて」
「ギルドに加入させるつもりはなくなっていたんだけどね。まさかGMコールをすることになるとは思わなかったよ」
おお、どうやらこの人もGMコールをしてくれていたみたいですね。
それは助かったのですよ。
「なるほど、それを言うためにわざわざ?」
「謝罪もあるけど、メインは商談かな。君たちが獣魔士ならこのアイテムがほしいんじゃないかと思って」
もったいぶってるメンバーさんが取り出したのは、なんと卵でした。
鑑定しましたが間違いありません、『アントの卵』ですよ!
「こいつはなかなかお目にかかれないレア品だからね。もしかしたら入り用かと思ってさ」
「……確かに入り用ね。リーン、あなたのドロップアイテムに『アントの卵』ってあった? 私とアプリのドロップアイテムにはなかったわよ」
ボクのドロップアイテムですか。
まだ整理していなかったのですよね。
ソルジャーアントとクイーンアントの素材が複数ありますが卵は見つかりません。
「あ、卵がでるのはクエスト報酬のほうだよ。ドロップアイテムじゃないからね」
なるほど、探す方を間違えていたのですか。
それではクエストの完了報告をポチッと……。
「あ、卵がでたのです」
「おお、おめでとう!」
「……相変わらず、こういうときの運は強いのよね」
これでミッション達成ですね。
ですが、あちらのパーティさんが提示してきた卵も買い取らせてもらったんだよ。
故レッドのお金がありましたし、あちらの提示してきた金額ならすぐに買い取った方がいいと通信越しでユーリさんも言ってましたからね。
これで卵がふたつになってしまいましたが、まあいいでしょう。
多くて困ることは……孵化させなきゃ困らないんだよ。
「さて、それでゴブリンの巣はどうするんだい? お互い消耗しているし、今日は帰った方がいいと思うんだが」
「あー、それね。私たちの目的って経験値ためじゃなくてゴブリンワーカーをテイムすることだったのよ。だから、代わりになるアントの卵が入手できた時点でゴブリンの巣にいく理由ってないのよ」
「そうか。お互い無茶せずにすんでなによりだ」
「そうね。それじゃ、私たちはこれで引き上げさせてもらうわ」
「俺たちもだ。臨時メンバーとはいえ、俺たちのパーティメンバーが迷惑をかけてすまなかった」
サーシャたちの話も終わったので、リターンホームを使ってギルドまで引き上げることになりました。
ボクはそうでもなかったのですが、前線で戦っていたアプリやサーシャは蟻酸? とやらで装備の耐久値が危険域まで下がっているらしいですからね。
ふたりはシリルさんとガイルさんを探しに行きましたし、ボクはユーリさんに卵の孵化方法を聞きました。
孵卵器とやらが必要なようですが、ユーリさんが用意してくれていたのでありがたく使わせてもらいます。
さて、これで明日の朝にはアントが孵っているはずなのですよ。
今日も一日疲れましたし、パートナーたちにご飯をあげたら寝ることにしましょう。
それでは、おやすみなさい。
*******************
読者の皆様お楽しみいただけましたでしょうか。
うちモフのストックはここまでしか残ってなかったんだよ!
……いえ、スランプ入る前に気力でこの章終わりまで書いたのですが、次章はまったくのノータッチでした。
予定としてはアントが孵って畑作りのターン!なんですがそれだけだと完全に旧版と同じになってしまうので何か入れたいところ。
申し訳ありませんが次回の更新までしばらくお待ちください。
……3月上旬だったら早いほう、予想は3月下旬にかかったくらいかな<(_ _)>
【新装版】うちのモフモフが最強! ~かわいさ最強(当者比)ワンコと行くVR冒険記。目指すはモフモフパラダイス!~ あきさけ @akisake
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