48.ゴブリンの巣へ再チャレンジする準備ですよ!

今月からうちモフの更新ペースを月曜1回にさせていただきます。

ストックが……


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 晩ご飯も食べました、夜のログインですこんばんは。

 さて、夜時間ということで、いまはサーシャとアプリもいるはずです。

 アプリはさっきログインすると言ってましたしね。

 それならば、と姿を探しましたが……談話室にふたりともいたんだよ。


「こんばんはなんだよ、ふたりとも。このあとゴブリンの巣に行きましょう」

「こんばんは、リーン。いきなりのお誘いとはね」

「お姉ちゃん、昼間にひとりで挑んで全滅したらしいですよ」

「……なるほど、リベンジ戦というわけね。それで、どういう状況で全滅したのかしら?」


 サーシャに聞かれたので、全滅したときの様子を伝えます。

 ときどき質問を加えながら具体的な様子を引き出していくとは、サーシャはさすがですね。


「つまり、そのゴブリンアサシンが問題みたいね。……ああ、あった。ゴブリンアサシンはタンクよりもアタッカーを優先して狙うそうよ。だから不意打ちを受けたりすると非常に危険だって」


 そういえば、昼間に行ったときは思いっきり不意打ちを受けていましたね。

 あれさえなければ、いい線いけたと思うのですが。


「攻撃力が高めなことを除けばHPも低いしそんなに強敵じゃないわ。おそらく、物音を立てたりすると不意打ちをしてくるようなギミックになっているんでしょうね」

「うーん、いやなギミックなんだよ。あれさえなければ、目的のゴブリンワーカーまで手が届いたのかもしれないのに」

「ゴブリンワーカー? なんでそんなのがほしいの?」

「お姉ちゃんの趣味じゃないよね、ゴブリンって」

「ああ、聞いてほしいのですよ」


 ボクはゴブリンワーカーを手に入れたいがための経緯、つまり畑の話をしました。

 でも、なんだかふたりは少し呆れたような顔をしているんだよ。


「お姉ちゃん、ゲーム初心者なのにいろいろと手を広げすぎだよ……」

「私も同感ね。畑が必要なのはわかるけど……せめて、アントの卵をマーケットで探す方が先じゃないかしら」


 ああ、そういえば、卵は取引可能でしたね。

 卵を買い取ることができれば、ゴブリンをテイムしに行かなくても済むのですよ。


「そう言うことならば、まずはマーケットボードに寄ってからゴブリンの巣ですかね?」

「ゴブリンの巣に行くことは決定なのね。……やることがなかったし、レベル上げ的にもちょうどいいくらいだから問題ないけど」

「そうですね。お姉ちゃんは言い出したら止まらないし、一緒に行きましょう」


 どうやら決まったようなんだよ。

 それでは準備を整えて出発するんだよ!


「ああ、でも。しばらく待ってちょうだいな。私たち、ガイルさん待ちだから」

「ガイルさん待ち? なにかあったのかな?」

「私は武器の強化をお願いしてあったの。で、アプリは……」

「庭の改築権代わりに別のアイテムをお願いしちゃった。それで、それが手に入ったみたいだから、それ待ちだよ」


 アイテムのおねだりですか、アプリもちゃっかりしてますね。

 しかし、ガイルさん待ちというなら待っていましょうか。

 薬の補充もしなくちゃいけませんしね。


「……そういえば、このギルドって薬の補充は誰がやってるんだよ?」

「前にあったシリルさんがやってるらしいわよ。初級ポーションだったら百個単位で量産できるそうだから」

「百個単位ですか。常に数百個の回復アイテムが倉庫にあるのはそれでなんですね」


 シリルさんは裁縫士と言ってましたが、薬作りもするのですね。

 ボクも料理や調薬のスキルを持ってますし、どこかで育てなくちゃですよ。

 問題は、今のところそんな時間がないことですが。


「よう、待たせたな。リーンも一緒か」

「ガイルさん、こんばんはなんだよ」

「おう。で、リーンもなにか用事か?」

「ボクはふたりを待っているだけなんだよ」

「そうか。それじゃ、さっさと用事を済ませなきゃな」


 そう言って、ガイルさんはサーシャに強化した日傘を渡したんだよ。

 説明を聞く限りだと、MP補正と魔法攻撃力が上昇したらしいね。

 サーシャは大事な火力だから、この強化はありがたいのです。


「それからアプリはこっちだな。たまたま売っててよかったぜ」

「ありがとうございます。やっぱりすぐに売り切れるものなんですか?」

「すぐ売り切れるというか、あまり出回らないんだよなぁ。だから、マーケットで入手するには運も重要だ」

「じゃあ、今回は運がよかったと言うことですね」

「ああ、ついてるぞ、お前さんは」


 アプリはなにかを買ってきてもらったようですが……なにを買ってきてもらったんですかね?


「アプリ、なにをもらったのですか?」

「あ、お姉ちゃん。【従魔の心得】を覚えるためのアイテムだよ」

「【従魔の心得】です? アプリ、テイマーかサマナーになるんですか?」

「違うよ、そっちに転職しないでもパートナーを使えるようにするために覚えるんだよ」


 うーん、話が見えてきませんね。

 ここはガイルさんに解説してもらいましょう。


「あー、【従魔の心得】スキルってのはな、特別なアイテムを使えば獣魔士系職業じゃなくても覚えられるんだよ。今回買ってきたのがそのアイテムってわけだ。で、スキルを持っているとどうなるかというと、獣魔士系職業じゃなくてもパートナーを扱えるようになる。もっとも、スキルがひとつ足りないから同じくらい扱いやすいってわけじゃないがな」

「なるほどなんだよ。それで、アプリ。そのアイテムを使ってどうするのですか?」

「うん、これを使って、このアイテムを使うんだよ」


 アプリが取り出したのは卵アイテムでした。

 どこで入手したんでしょうかね?


「さっき課金して手に入れたドラゴンの卵だよ。これを孵化させて私もドラゴンを相棒にするの!」

「……そんなことができるのですか、ガイルさん?」

「できるぞ。ただし、獣魔士系職業に比べてステータスは八割程度しかないけどな」


 なるほどなのですよ。

 アイテムを使えばパートナーがいなくても強い普通の職業がパートナーを使えるようになる。

 だけど、パートナーのステータスは制限されると。

 ……あれ?


「ガイルさん、結局アプリが頭ひとつ強くなるのは変わりないんだよ?」

「普通、あのアイテムを入手できるようになるのはレベル100を超えた辺りだからなぁ。そのころだと誤差でしかないが、いまの時点だとでっかい差だよな」

「……これで、また一歩アプリに先を越されたんだよ」


 ボクとガイルさんが話をしている間にアプリの契約も終了したようです。

 名前は「マリーナ」らしいですね。

 プチドラゴンの間は属性の影響がありません。

 ですが、次の段階からは属性が分岐します。

 アプリは水属性系を目指すそうですよ。


 こうして、新たな仲間マリーナを加えてさらに人数が増えたボクたちですが、マリーナはまだレベル1のひよっこです。

 さすがにいきなりゴブリンの巣に連れて行くわけにも行かず、少しプレーンウルフで経験値稼ぎをしてから行くこととなりました。

 さて、それでは今度こそ出発ですよ!


 アントの卵ですか?

 マーケットで売ってはいましたが、お高くて買えるものじゃなかったのですよ……。

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