3.チュートリアルはしっかりとですよ!
妹の杏と一緒に早めのお昼ご飯も食べて、ゲームのダウンロード待ちなんだよ。
杏のほうも同じ状況ですので、ボクの部屋に遊びに来てます。
「お姉ちゃん、名前は予定どおりに決めた?」
「ええ、決めましたよ。リーン=プレイバードなのです」
「よかった。私はアプリ=プレイバードで登録したからね。ショートカットのオレンジ色の髪で槍使いにしたから」
「そうなんですね。ボクは長髪の白髪、鞭使いなんだよ」
「……お姉ちゃん、なんで鞭?」
「猛獣使いっぽくてかっこいいからですね」
「……そう、扱いが難しいかもだけど頑張ってね」
「ええ、頑張るのですよ。そういえば、沙樹ちゃんはどうしたのでしょうかね?」
沙樹ちゃんのキャラクターはどうしたのでしょうか?
サーシャ=ナインテイルという名前しか聞いてないんだよ。
「さっきメールが届いてたよ。読んでない?」
「む、そうなのですか」
「うん。金髪赤目の狐獣人さんだって。髪も腰まで伸ばしたって言うし、結構きれい系なんじゃないかなー」
「そうなのですね。会ってみるのが楽しみなんだよ」
「そうだね。……あっ、ゲームのダウンロード、終わったんじゃない?」
杏に言われて確認してみれば、ダウンロードとインストールが完了したというメッセージが表示されていました。
これでようやくゲームが始められるんだよ。
「お姉ちゃんが終わったっていうことは、私も終わったよね。それじゃあお姉ちゃん、またゲームの中でね」
「またなんだよ。杏。チュートリアルというのがあるそうですが、頑張るのですよ」
「わかってるよー。お姉ちゃんみたいに初心者じゃないんだから」
むぅ、確かにボクは初心者ですがそんなに心配ですかね?
まあ、そんなことはどうだっていいでしょう。
早くゲームを始めてボクのかわいいワンコに会いに行かねば!
「さあ、ゲームスタートなんだよ!」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「……ん? ここがゲームの中ですかね?」
ボクは確かにゲームを始めたはずですね。
見慣れない平野? 平原? に立っていますし、ゲームの中なのでしょう。
さて、ボクのワンちゃんはどこですかねー?
『ようこそ、リーン=プレイバードさん。《infini fantaisie》の世界へ。これよりチュートリアルを始めます』
おお、謎の声が聞こえてきたんだよ。
これがチュートリアルというものですか。
『まずは武器を装備しましょう。インベントリを開いて武器を取り出してください。インベントリは左腕の腕輪を操作すると開けます』
ふむ、見慣れない腕輪をつけていると思ったらこのためだったのですね。
では指示どおりに腕輪を操作してと……おお、なにもない空間にアイテム画面が表示されましたよ。
ここにある『初心者の鞭』を取り出せばいいのですね。
隣にある『従魔の卵:ライトニングシーズー』がとてもとても気になるのですが、触れないので諦めましょう……。
『武器の装備は以上で完了です。次に防具を装備してみましょう。防具はインベントリの防具欄に防具アイテムを移動することで装備できます』
了解ですよ、やってみましょう。
いま現在のTシャツに短パン、サンダルという装備から、初心者のベスト、初心者のズボン、初心者のブーツという装備に変更です。
装備を移動するごとにボクの身につけている服が変わるのは便利でいいですね。
いちいち着替えないで済みますので。
『防具の装備は以上です。職業【テイマー】を選択しているため従魔の召喚に移ります。インベントリ内にある従魔の卵を取り出してください』
おお、ついにきましたよ!
謎の声の指示どおり、従魔の卵を取り出すと卵が光を放ち始めました。
さあ、ボクのパートナーよ出てくるのです!!
『従魔【ライトニングシーズー】が召喚されます。見た目を決定してください』
ほ?
なんと、ワンちゃんの見た目も自分好みに決定できるのですか!
至れり尽くせりですね!!
プリセットパターンもいいのですが、ここは自分の感性に任せて望みどおりのワンコにしましょう。
そして、三十分くらい時間をかけてついに見た目が決定したんだよ!
顔は目から耳がが茶色の毛で残りは白。
体は茶色と白がいい感じに入り交じったパターンなのですよ!
『見た目の登録が完了しました。最後に名前を決定してください』
名前の登録ですね。
ちゃんと名前も事前に決めてあるのでバッチリですよ!
「あなたの名前はシズクです! さあ、ボクのパートナーになるのですよ!!」
『パートナー登録完了。【ライトニングシーズー】シズクがパートナーとして仲間になります』
おお、ついに待ちに待ったワンちゃんがボクの手に!
さて、まずはどうしましょう?
頭をなでてあげるのもいいですし、ブラッシング……はブラシがないですね。
ブラシを含めたグルーミングアイテムを早急に入手しないといけないんだよ。
「オンオン」
「はっ。ごめんなさい、シズクちゃん。つい考え込んでしまったんだよ」
「ワオン?」
「うーん、やっぱりかわいいですね!!」
ボクはたまらずシズクちゃんを抱っこしてあげます。
シズクちゃんもまんざらではないのか、嫌がらずにボクの手の中に収まってくれますね。
『次のステップに進みます。次は戦闘チュートリアルです。いまからゴブリンルーキーが出現します。それらを倒してください』
む、シズクちゃんをモフモフしたいのにチュートリアルは進むのですね。
仕方がないので付き合ってあげましょう。
謎の声が言ったとおり、どこからともなく薄汚い格好をしたモンスターが現れました。
こいつらがゴブリンルーキーですね。
さて、どうやって倒しましょうか?
「……まずは、鞭を使って倒してみましょうか。シズクちゃんは危ないので下がっていてください」
「ワン」
さて、ボクの鞭捌き、味わうがいいのですよ!
「……って、あれ?」
鞭の攻撃は思いっきり宙を切ったんだよ。
鞭ってこんなに扱いにくい武器だったんだね!
「むぅ、慣れるまで特訓なのです!」
鞭を振り回すこと数分、扱いに慣れて攻撃も当たるようになり無事にゴブリンルーキーを倒せました。
さて、戦闘チュートリアルはこれで終了なのかな?
『テイマーとしての戦闘チュートリアルを行います。パートナーの攻撃でゴブリンルーキーを倒してください』
……どうやらチュートリアルはまだ続くみたいなんだよ。
今度はパートナー、つまりシズクちゃんが戦わなくちゃいけないみたいだね。
「シズクちゃん、いけますか?」
「ワンワン」
どうやら大丈夫なようです。
シズクちゃんは出現したゴブリンルーキーに対して魔法を詠唱し……。
「ワオーン!」
ゴブリンルーキーたちに雷が落ちたんだよ!
「おお、これがシズクちゃんの魔法なんですね!」
事前に調べていたライトニングシーズー唯一の魔法、サンダーボルト。
いまのがそれのようです。
ゴブリンルーキーたちは一撃で吹き飛びましたよ!
「すごいのですよ、シズクちゃん! これなら、どんなモンスターでも一撃です!!」
「ワフン!」
なんとなく自慢げなシズクちゃんをなでなでしてあげましょう。
さて、今度こそ戦闘チュートリアルは終了ですかね?
『最後に採取チュートリアルを行います。地面の光っている草を引き抜いてください』
採取ですか。
なんだか地味なんだよ。
まあこれもチュートリアルらしいですし、やらないわけにはいかないですね。
「光る草……これですね。おお、薬草ですか。ん? これも薬草ですね」
結局、光っていた草は全部薬草でした。
全部で薬草が五つ手に入りましたよ。
『以上でチュートリアルを終了します。再度受け直したいチュートリアルはありますでしょうか?』
これでようやく終了のようですね。
これ以上のんびりしていると、沙樹ちゃんや杏を待たせそうなのですよ。
「これで大丈夫なんだよ!」
『かしこまりました。それでは《infini fantaisie》の舞台【アドラステア世界】にご案内いたします。あなたの旅が楽しいものにならんことを』
無事にチュートリアルが終了したみたいです。
……あれ、なんだか眠くなってきたのですよ?
うーん、よくわかりませんがこのまま寝てしまいましょう……。
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