21.ファイ村の頼みごとなんだよ!

「ついたわ。ここがファイ村ね」

「……馬車に乗ってからそんなに経たないうちについてしまいましたね」

「そこは演出上の問題ね。実際に歩いて移動するとかなり時間がかかるわ」


 アインスベルで馬車に乗ってから数分後、ボクたちはファイ村に到着していたのです。

 ファイ村はなんというか、田舎の村という感じの場所なんだよ。

 これからここでなにをすればいいのでしょうね?


「うん、あんたたち、こんな村になんの用だ?」


 おっと、これからなにをするかを考えていたら村の入り口にいたおじさんに話しかけられましたよ。

 とりあえず用件を伝えてみましょう。


「ボクたちはテイマーギルドからの依頼でこの村の調査にやってきたんだよ」

「ほう、ギルドからか。それじゃあ、村長の家で話を聞いてきてくれ」

「わかったんだよ。……それで、村長さんの家ってどこなんです?」

「ああ、そうだよな。……おおい、そこの。こいつらを村長の家まで案内してやってくれ。ギルドからの依頼を引き受けてくれたんだとよ」


 おじさんは近場にいた人を呼び止めて案内をお願いしています。

 その人も断ることなく引き受けたようで、ボクたち四人は無事に村長さんに会えましたよ。


「私がファイ村の村長ですじゃ。このたびは依頼を引き受けてくださり助かります」

「大丈夫なんだよ。それで、詳しい依頼の内容ってどんなことなのかな?」


 ギルドでは詳しい内容を教えてくれなかったのですよね。

 なので、いま聞かなくちゃいけないのです。

 ユーリさんに聞きましたが。


「おお、そうですな。まず最初にお願いしたいのは、村の周囲を警戒してほしいのです。最近、モンスターがうろついていることが多くなりましてなぁ」

「モンスターってその都度倒さないんですか?」

「被害が出れば対応しますが、そうでなければ対応するほどの戦力はこの村にはありませんので……」


 サーシャの質問に村長さんも困り顔で答えてるんだよ。


「でも、ギルドに依頼する程度の金銭はあるんですよね? そのお金で冒険者を雇うとか」

「さすがに常駐してもらうとなると難しいですな。こうして時々依頼する分には問題ありませんが」

「なるほど……わかりました」

「質問はほかにありますかな?」

「村長さん、村の周囲ってどこを見て回ればいいの?」


 村長さんの確認に今度はアプリが質問をしたんだよ。


「基本的には村に張り巡らせてある柵の周りで大丈夫です。そのとき、怪しいモンスターの痕跡があったら教えてほしいのですが」

「わかりました。それじゃあ、そういう感じで見て回りますね」

「ほかにはなにかありますか?」


 村長さんの確認に誰も質問を出さなかったため、これで質問タイムは終了なんだよ。

 ボクたちの方針も決まりましたし、頼まれた範囲を見て回るとしましょう。


「それにしても、サーシャにアプリ。よくあんな質問を思いつくんだよ」

「ゲームだとたまにあるのよ。曖昧にしていると痛い目にあうことが」

「そうそう。こういうのは慣れだよ、お姉ちゃん」


 なるほどですよ。

 よくわからないですが、わかりました。


 さて、周囲の見回りですが、途中何回かモンスターとの戦闘がありましたね。

 あと、モンスターの仕業でしょうか、柵が傷んでいる場所も数カ所見つかったんだよ。

 そのことを村長さんに報告すると、今度は柵の修理をお手伝いすることとなったのです。

 具体的には村の人が柵を修理している間、モンスターに襲われないように警戒する役目ですね。

 そこまで慎重になる必要もないと思うのですが、サーシャ曰く「ゲームでは絶対に襲われる」そうなのですよ。


 実際に柵の修理をしてみると、修理の途中でモンスターが襲ってきましたね。

 それも周囲の見回りのときに見かけたワイルドドッグやプレーンウルフではなく、ゴブリン系のモンスターでした。

 モンスターの襲撃を退けながら柵を修理していき、最後の破損箇所を直して村長さんに報告ですよ。


「……むむ、ゴブリンですか」

「はい、ゴブリンでした」

「それは困りましたな……」


 サーシャや柵の修理を担当していた村人さんが襲撃のことを伝えると、村長さんはとても困った顔になりましたね。

 ゴブリンだとなにか問題でもあるのかな?


「ゴブリンって強いんです?」

「ああ、いえ。ここらに棲み着くのははぐれの群れでしょう。なので、強さ的にはプレーンウルフと同等です。ですが、奴らは小狡い知恵がありますのでな。村の柵を破壊して作物を奪おうとでもしていたのでしょう」

「作物だけですか? 住人に被害が出る可能性は?」

「すぐにはないでしょうな。私どももそれなりに自衛は可能です。それに、群れの規模が小さければ人間を襲ってまで手に入れるものもないでしょう」


 ふむふむ、つまり放置しても人間が襲われることはしばらくないのですね。

 それにしても、ゴブリンとはそんなに知恵が回るのですか。


「……それで、申し訳ありませんが、群れの規模が小さいうちにゴブリンを駆除してもらえないでしょうか? 報酬は可能な範囲でお出しいたします」

「ですってよ、リーン」

「そこでなんでボクに振るんですかね、サーシャ」

「なんでって、このクエストはあなたが受けているものじゃない。だったら、決めるのはあなたでしょう?」


 たしかにそれもそうなんだよ。

 むむ、提示された報酬額は低いですが、経験値的にはおいしいですね。


「わかったんだよ。この依頼も受けさせてもらうね」

「おお、そうですか。助かります」


 ここまでのクエストだとボクの出番はあまりなかったのですよね。

 モンスターはサーシャとアプリ、それからシズクちゃんが倒してしまいますし。

 おかげで引率のユーリさんだけじゃなく、ボクと黒号もほぼみてるだけだったんだよ。

 今回のクエストはボクたちにも出番があると信じてがんばりましょう!

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