22.ゴブリン退治なんだよ!

「さて、ゴブリン退治と決まれば戦力の再確認ね」


 村長さんの家を出て村の中で聞き込みをしました。

 そのあと村の外まで来たところで、サーシャがそんなことを提案してきたんだよ。

 ボクもその話には賛成なのです。


「はいはい! ボクの黒号がレベルアップして攻撃スキルの威力が上がりましたよ!」

「それはいい情報ね。アプリはどう?」

「私も槍で範囲スキルを覚えたかな。でも、範囲スキルは今回使わないよね?」

「基本的には使わないでしょうね。ユーリさんはどうです?」

「私は今回も基本的にはノータッチよ。クエストに失敗しそうになった場合、手助けしてあげるけど」

「わかりました。それじゃあ、布陣はこれまでと一緒。黒号が敵を引きつけて、私とクラウド、アプリが撃破。シズクは温存、リーンは黒号の回復をメインね」

「わかったんだよ。それでいいですね、シズクちゃん、黒号」

「ワフン」

「オウン」


 どちらもわかってくれたようですし、先に進むんだよ。


 村で聞き込みをした結果、柵を壊していたモンスターは村の北側にある森からやってきていたっぽいとのこと。

 黒号の鼻で追跡できないかと思いましたが、元となるにおいがわからないので無理でしたね。

 ただ、何度も踏み固められたような痕跡を見つけられましたのでそれを追いかけてみることにします。

 なお、見つけたのは黒号でしたよ。


「うーん、こういうときはスカウト系の技能を持った仲間がほしくなるわね」

「スカウトってなんなんだよ、サーシャ?」

「隠し通路の発見や宝箱の開場、罠の解除なんかを専門にする職業よ」


 なるほど、それは便利そうなのです。

 ボクにはできそうにありませんが。


「スカウト系の技能かぁ。私が覚えてみてもいいですか、サーシャさん」

「アプリが? かまわないけど、大丈夫?」

「スキル上げをする時間なら、あると思いますので大丈夫です。今のうちに覚えられるものは覚えちゃいますね」


 よくわかりませんが、アプリがスカウト系の技能とやらを覚える流れですかね。

 いろいろと器用なんだよ、アプリは。


「はい、覚えました。それで、早速ですが、罠の反応がこの先にあります。簡単なダメージトラップみたいですけど、解除してしまいますね」

「よろしくね、アプリ」


 アプリは黒号よりも前に出ると、茂みの中に手を突っ込んでガサゴソと動かしてるね。

 少しすると、ガチンとなにかが外れるような音がして、アプリが戻ってきたんだよ。


「解除成功です。このゲームって罠の解除に成功すると、素材アイテムが手に入るんですね」

「ええ、手に入るわ。加工すれば自分で罠を作ることも可能よ」

「覚えておきます。危険はなくなったし、先に進もうお姉ちゃん」

「わかったんだよ。では、黒号。先導をよろしくです」

「オフ」


 黒号についていくことしばらく。

 ときどき罠があったりしますが、それはすべてアプリが解除してしまったんだよ。


「うーん、ここまでモンスターがでないっていうのも気になるね?」

「多分、罠が発動すると連動して襲ってくるんじゃないのかしらね。でも、私たちって罠は発動させていないから……」

「襲ってくる理由がないっていうことかー」


 サーシャとアプリの間で共通認識が生まれてるんだよ。

 ゲームに詳しくない、ボクにはよくわかりませんがね!


 さらに歩くこと数分、森の中の広場みたいな場所にたどり着いたんだよ。


「……あそこが目的地みたいね」

「ゴブリンたちがたくさんいますね」

「たくさんといっても十匹くらいなんだよ」

「この人数でそれだけいれば十分脅威よ、普通は」


 普通は、ですか。

 ああ、ボクにもなんとなくわかりましたよ。


「この状況だと作戦はこうね。まずは黒号が敵を引きつける。そこにシズクがサンダーボルトを使って数を減らす。残った敵を私たちで倒す。以上ね」

「了解なんだよ。シズクちゃんも黒号もいいですね?」

「ワンワン」

「ワウ」

「黒号の好きなタイミングで飛び出していいわ。私たちはそれにあわせるから」

「わかったんだよ。黒号、行くのです!」


 黒号が木陰を抜けて一気にゴブリンに襲いかかったんだよ。

 不意を突かれたゴブリンは、完全に動揺しちゃってますね。

 よくできたゲームなんだよ。


「……大分、黒号の周りにゴブリンたちが集まったわね。そろそろサンダーボルトをお願い」

「了解、シズクちゃん、ゴー!」

「ワンワン!」


 シズクちゃんが魔法を唱えて、落雷がゴブリンたちを襲ったんだよ。

 それだけでゴブリンたちはかなりの被害を受けて……生き残りは四匹だけですかね。

 ひときわ体のでかいやつが一匹と、少し頑丈そうなのが三匹。

 でも、少しだけ頑丈そうなほうはもうすぐ倒せそうですよ。


「思ったよりも耐えたほうかしら。デカブツは黒号に引き留めてもらうとして、残りの三匹は私たちで仕留めるわ」

「了解です。援護よろしくね、お姉ちゃん!」

「気をつけて行ってくるのですよ」


 サーシャたちはゴブリンに詰め寄ると、それぞれ攻撃を始めました。

 どいつもぎりぎり生き残った感じでしたので、サーシャたちの攻撃一発か二発で倒されてますね。


 雑魚の処理は終わって残りはあのでっかいほうなのですが……ちょっと困ったことが起こったんだよ!


「あっ! 逃げ出したのです!?」


 そう、ついさっきまでは黒号と戦っていたのですが、サーシャたちが戦っていた三匹が倒されると脇目も振らずに逃げだそうとしたんだよ。

 黒号ががんばって足止めをしようとしていますが……ゴブリンのほうが上手っぽいですね。


「えーい、蛇腹剣、お前の真価を見せてやるのです! バインドウィップ!」


 蛇腹剣を鞭状にして、鞭スキルのバインドウィップを使います。

 うまくいけば相手を拘束できるスキルですが……そんなにうまくはいかないのですよ。


「……ああ、やっぱりダメですか」


 ボクの攻撃をはじき、デカブツゴブリンは森へ駆け込もうとしてるんだよ。

 するとそこへ、氷の鎖が伸びてきてゴブリンを捕まえましたね。


「ふう、拘束完了。あとはお願いね」

「ありがとうなんだよ、ユーリさん!」


 どうやら、ユーリさんの魔法みたいですね!

 氷の鎖で動けなくなったゴブリンはボクたちに袋だたきにされて倒されたんだよ。

 これで無事にクエストクリアですよ!

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