38.ギルドランクアップです!

 夕方は結局ワイルドドッグをひたすら倒しているだけで終わったんだよ。

 やっぱり計画はちゃんと立てないとですね。


「なるほどねぇ。やっぱりふたりじゃまだきつかったか」


 いまは晩ご飯も食べ終わって夜のログイン時間。

 昼間は用事があったらしいサーシャも合流しているんだよ。


「はいなのですよ。やっぱりふたりだときつかったのです」

「そうですね。攻撃力が足りない感じでした」

「でしょうね。リーンのシズクは攻撃力が高いと言っても連発できないし、それ以外のパートナーは普通だからね。適正レベル帯として考えるとふたりじゃ少し厳しいかもね」

「ゲームってやっぱり難しいんだよ」

「細かく考えるときりがないけどね。最初のうちはレベルさえ上がればなんとかなるわ」


 そのレベル上げが大変なんですがね。

 そういうわけで、今日の夜は三人揃ってのレベル上げという提案がアプリから出されたんだよ。

 でも、サーシャはそれ以外にやりたいことがあったみたいですね。


「レベル上げもいいけど、職業ギルドのランクアップを考えてもいいんじゃないかしら」

「職業ギルドですか? 確かにランクを上げていけばいいことがあるとは聞いてますが」

「そうだね。でも、そんなに急ぐことなんですか?」

「私たちのレベルになっていれば、最初のランクアップクエストが出ている頃なのよ。それを確認しに行くだけでもいいんじゃない?」


 なるほどですね。

 あれ、でもそれなら……。


「昨日の夜にギルドに行ったとき、確認すればよかったんじゃないかな?」

「私は昨日の夜に行ったとき確認したわよ。でも、明日にならないと準備ができないって言われたから今日また行くの」

「準備ができないんです?」

「攻略サイトを見た限りだとね、職業ギルドの最短ランクアップ日数って言うのがあるらしいのよ。私たちはそれに引っかかってたってわけ」

「そうだったんですね。というか、なんでそんな制限があるんでしょう?」

「さあね? あまり急いで攻略を進めすぎないようにってことじゃないかしら?」

「ここで考えてもよくわからないんだよ。とりあえず、職業ギルドに行ってみることにしよう」


 今日の予定は決まりました。

 なので、街に出かけようとすると、中庭からボクを呼ぶ声が聞こえたんだよ。


「おうい、リーンの嬢ちゃん。こっちじゃ」

「あ、ハイネさん。こんばんはなんだよ」


 呼んでいたのはハイネさんだったんだよ。

 庭作りでなにかあったのかな?


「お嬢ちゃん方、これから外出かの?」

「そうなんだよ。なにか必要なものとかができたのかな?」

「いんや、必要なものは全部こちらで集めたわい。呼び止めたのは庭のできる予定日を伝えておこうかと思っての」


 おお、もう予定日が決まったのですか。

 さすが早いですね。


「庭じゃが、明日の夜には完成させておく。とは言っても夜遅くになる予定じゃから、お嬢ちゃんが確認するのは翌日かのう」

「そんなに早いのです? ハイネさん、無理してませんか?」

「この程度は無理に入らんよ。それに久しぶりの庭作りじゃからの腕がなるわい」


 ああ、これは止めてもダメなヤツなんだよ。

 本人が大丈夫と言ってますし、それを信じましょう。


「それではハイネさん。無理をしない程度にお願いするんだよ」

「おう、任せておけ。お嬢ちゃんたちもがんばるんじゃぞ」


 それだけ言い残すと、ハイネさんはボクの庭の中に入っていきましたね。

 これからまた庭作りを始めるのでしょう。


「リーン、庭作りってどういうことよ?」

「……ああ、サーシャには言ってませんでしたね。今朝、ボクは庭を買ったのですよ!」

「庭って、個人の家よね。よくそんなお金が……って課金で買える庭か」

「そう言うことですよ。あと、さっきのお爺さんはハイネさんと言って、このギルドで庭作りを専門にしている人らしいのです」

「ふーん。でも、そんなにお金持ってたっけ?」

「よくわからないのですが、ガイルさんが庭の改築費用を出してくれたね。昨日のレッドの件のお詫びだそうなんだよ」

「そこまでしてくれなくてもいいと思うんだけどね」

「ああ、あと。サーシャやアプリにも同じような支援は考えているらしいのです」

「それはありがたいけど……庭ねぇ。考えておくわ」

「私も考えておくね。お姉ちゃんのをみてから決めるよ」

「さて、この話はこれくらいにしてギルドに向かいましょう。多分、今日はランクアップクエストが出ているはずだから」

「了解なんだよ」

「わかりました。行きましょう」


 今度こそ『瑠璃色の風』を出て、職業別のギルドへと向かいます。

 テイマーギルドとサマナーギルドは同じ建物なので、アプリとは途中で分かれて行動ですね。


 さて、早速テイマーギルドにやってきたわけなのですが。


「ランクアップクエストは『レベル10になった従魔を連れてくる』だけなのです?」

「はい。テイマーギルドのランクアップクエストはそうなっています」


 なんとなく拍子抜けだったんだよ。

 クエストはクエストなので、シズクちゃんを見せてクエストクリアなのです。

 これでボクはランクFからランクEに昇格したことになりますね。

 なお、ランクFの中でも細かく段階があったはずなのです。

 でも、この二日間に受けていたクエストで十分にクリアしていたらしいのですよ。


「リーン、その様子だとそっちもクエストクリアしたみたいね」

「あ、サーシャ。シズクちゃんを見せるだけで終わったので」

「こっちもブレンを見せて終わりだったわ。とりあえずアプリと合流しましょう」


 アプリと合流するために移動する道すがら、クエスト内容を聞いてみました。

 ですが、クエスト内容はボクと一緒だったみたいですね。

 ただ、内容は事前に知っていたらしいのですが。


 アプリとは女神像広場で待ち合わせることにしたのです。

 あちらも簡単に終わる内容だといいのですがね。


「あ、お姉ちゃん、こっちだよ」


 どうやらアプリのほうが先についていたみたいなんだよ。

 近場の屋台でジュースを買って、三人で今後の相談です。


「お姉ちゃんたちのランクアップクエストって終わった?」

「終わりましたよ。その場で終わるものでしたので、楽だったのです」

「本当はそこそこ大変なんだけどね。私たちは最初に課金パートナーを選んでいるから」

「なるほど」

「そういうアプリはどうなのです?」

「私はまだクリアになっていないよ。私のクエストは『プレーンウルフを十匹とどめを刺す』だからね」

「プレーンウルフを十匹ね。シズクで倒してしまってもクリアにならない辺り、手間よね」

「はい、そうなんですよ」


 確かに、シズクちゃんがどーんってすればプレーンウルフは片付きますからね。

 それじゃダメというのはよく考えられているんだよ。


「どちらにしても、プレーンウルフを倒しに行く必要はあるわけよね」

「そうなるんだよ」

「それじゃ、今日の予定は決まりね」

「ですね。プレーンウルフを倒しに行きましょう」

「ふたりとも、アイテムとかの補充は大丈夫?」

「……あ、補充を忘れてたんだよ」

「私もです……」

「それじゃ、一度ギルドに戻ってから行きましょうか」


 このまま出発となればかっこよかったのですがね。

 どうもしまらないのですよ。


 ともかく、昼間のリベンジがんばりますよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る