47.潜入、ゴブリンの巣、ですよ!

 入り口の激戦以降はサクサク進み、割と楽に奥の方までくることができたんだよ。

 ゴブリンの数が四匹以上だったらシズクちゃんにお任せ、それより少なかったら普通に倒すとしていたけどこれがよかったみたいですね。

 さて、かなり進んできましたけど、ゴブリンの巣はまだですかね?


「……ふむ、またゴブリンの一団ですか。今度は六匹、数が多いですね。シズクちゃんいけますか?」

「ウォフゥ」


 気合いが入っているシズクちゃんに任せて、ボクやプリムは万が一うち漏らしがいたときに備えますよ。


「ウォーン!」


 シズクちゃんの一鳴きとともに魔法が発動、サンダーボルトがゴブリンたちを襲います。

 問題なく六匹とも倒せましたね。


「よし、さすがはシズクちゃんなんだよ」

「ワフワフ」


 モンスターも倒せましたので、再び森の中を歩けばやがて広場のような場所にたどり着きましたよ。

 粗末なテントのようなものがいくつも建ててあり、さながら野営地ですね。


「……ここが目的地のゴブリンの巣なんだよ」


 物陰に身を潜めながら周囲の様子をうかがうと、そこら中にゴブリンがいます。

 数えるのが馬鹿らしくなるくらいですよ。

 実際には二十から三十くらいなのでしょうが、ボクひとりではとてもじゃないですけど戦えないですね。

 シズクちゃんのMPもそこまで保たないですし。


「さて、どうしましょう。目当てのゴブリンワーカーはどこにいますかね?」


 この物陰はゴブリンが監視していないみたいなのです。

 なので、巣の中を見放題なのですが……お目当てのゴブリンワーカーはいませんね。

 ここがゴブリンの巣の一番奥だと思うのですが、違うのでしょうか?


「……ゴブリンワーカーは、広場にはいないようです。となると、テントの中とかですかね?」


 広場のゴブリンはゴブリンナイトとかゴブリンメイジとか強そうなのがたくさんいます。

 入り口で手こずらされたゴブリンウォーリアーとゴブリンアーチャーも数匹ずついますしね。

 あんなところに突っ込んでいくのはいやなんだよ。


「うーん、これは広場を迂回しながらゴブリンワーカーを探すのがよさげですかね」


 そうと決まれば早速行動開始ですよ。

 物陰を出て、テントの陰をゴブリンに見つからないように進んで行きます。

 途中、どうしてもゴブリンと戦わなくちゃいけないときは、プリムに頼んで先制攻撃をしてもらいました。

 大体のゴブリンはそれで倒せるので、仲間を呼ばれることもなく切り抜けられましたよ。


「ここまでは順調ですね。ここから先をどうすればいいかですが……」


 ゴブリンの巣最奥部を四分の一ほど回ったところ。

 いままではテントやなにかよくわからない箱、タルの陰に隠れて進めました。

 でも、ここから先はそういうものがなくなってしまったのですよ。

 所々に木はあるのですが……あれの陰に隠れて進まないといけないのですかね。


「考えても仕方がないんだよ。木陰を利用して移動しましょうか」


 ボクたちはタイミングを見計らって、木々の間を駆け抜けることに。

 ゴブリンの監視は結構ザルだったので割と余裕を持って奥に進めましたよ。


「意外となんとかなりますね。……あ、あれがゴブリンワーカーですね」


 ゴブリンの巣をぐるっと半周してきたあたりで、ようやくゴブリンワーカーの姿を確認できましたよ。

 テントの中でなにかを作っているようですが……まあ、あまり気にしなくてもいいでしょう。

 ユーリさんによれば、ゴブリンワーカーにはノーマル種しかいないそうなので厳選とか気にせずテイムしてしまってもいいそうです。

 もう目標は目と鼻の先ですし、早くテイムしてしまいましょう!


 ベキ


「うん?」


 足下にあった小枝を踏み潰してしまったんだよ。

 すると、その音に反応して二匹のゴブリンが急に襲いかかってきたね!


「うわ!? ひょっとして、いまのも罠だったんだよ!?」


 すでに気づかれている以上、戦闘は避けられない。

 まずは、黒号にがんばってもらって……。


「……って、速いのですよ!?」


 不意を突かれたのもあるのです。

 でも、黒号が体勢を整える前にこちらに接近してきてプリムを直接攻撃してきたんだよ!

 ゴブリン二匹の連続攻撃を受けて、プリムは倒されてしまったのです。


「おのれ……! 黒号、プリムの仇をとるのです!」

「ヴォフ!」


 今度こそ黒号が相手の注意を引きつけ、戦闘開始です。

 戦闘不能になったプリムを復活させる方法はまだないので、このまま帰還させましたよ。

 さて、プリムを倒してくれたこのゴブリンたちですが……。


「ゴブリンアサシンですか! レベルは……15!? ボクたちより格上なんだよ!」


 回復魔法を使ってなんとか黒号を倒されないようにがんばっていますが、完全に押されてますね。

 ここはシズクちゃんの魔法で……。


「ワンワン!」

「どうしたんですか、シズクちゃん……って、背後からもゴブリンですか!?」


 気がつきませんでしたが、背後からもゴブリンの集団が迫ってきていました。

 こっちのレベルは低いのですが、黒号がいないのでこのままでは押しつぶされてしまいます。


「……仕方がないんだよ、シズクちゃん後ろのゴブリンたちにサンダーボルト!」

「ワン!」


 シズクちゃんはボクの命令を受けて、後ろのゴブリンたちを消し炭にしてくれました。

 ただ、そうなるとゴブリンアサシンを倒す方法がなくなってしまい……。


「あ、黒号が!」


 後ろの集団に気をとられている隙に黒号が倒されてしまったんだよ。

 そして、ゴブリンアサシンはボクを狙って攻めてきて……うん、あっさり負けてしまったね。

 パーティ全滅と言うことで、撤退しましょう……。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「うーん、ゴブリンも巣の奥まで行くと強いんだよ……」

「クゥン……」

「ああ、シズクちゃんのせいじゃないのですよ」


 ギルドまで戻ったボクたちはペナルティでステータスが下がっていることも踏まえ、反省会の最中です。

 もっとも、プレイヤーはボクひとりですがね!


「やっぱりこれは、攻撃力不足なのでしょうかねぇ……」


 ボクたちのパーティで最大の難点と言えば、シズクちゃんのサンダーボルトを除いた攻撃力がいまいちなところでしょう。

 サンダーボルトは強いのですが、連発できないのです。

 それに、サンダーボルトばっかりに頼っていると連携がおろそかになる……とユーリさんにも言われてますしね。


「うーん、手っ取り早く火力を上げる方法ってないですかねぇ……」


 このあと、一時間ばかりパートナーの皆をモフモフしながらあれこれ考えました。

 でも、いい案は出なかったんだよ。

 うーん、難しいですね、ゲームって。

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