第四章 斬魔さんとパーティプレイの難しさです
26.プリムをきれいにしましょう
今回もお読みいただきありがとうございます。
申し訳ありませんが、体調がまだ戻っておりません。
次の更新ですが月曜日とさせてください。
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晩ご飯も食べて二日目夜のログインですよ、こんばんは。
さて、今回の予定は今度こそファーラビットを捕まえるんだよ。
サーシャとアプリもかまわないと言ってくれましたし、ユーリさんもそれでいいとのことなのです。
なので、今度こそファーラビットを捕まえるのですよ。
「……でも、早くログインしすぎましたかねぇ」
待ち合わせ時間よりも一時間ほど早くログインしてしまったんだよ。
やることがあるかというと、プリムをグルーミングしてあげたいのです。
ですが、グルーミングするには相応の道具が必要ですね。
で、その道具はユーリさんがいないと借りられないと。
「うーん、困ったんだよ」
さて、そうなると本当にやれることがありませんね。
なんとか、やれることを見つけたいのですが。
「……そこの娘。どうかしたのか?」
「はい? ボクのことなんだよ?」
談話室でうろうろしていたら、声をかけられてしまいました。
不審人物でしょうし、仕方がないんだよ。
声をかけてきたのは犬獣人さんですね。
和風の立派な甲冑を着けていますし、新人さんじゃなくて先輩さんだと思うのですよ。
「このあと仲間と狩りに行く予定なのです。ですが、その時間までにやれることがなくて困ってるんですよ」
「……そうか。確か、ユーリが面倒を見ているプレイヤーだったな。俺は斬魔=霧風という。やることがないのなら、ユーリに相談してみるのはどうだ?」
「おや、ユーリさんがいるのです?」
「中庭にユーリの門が出ていたからいるだろう。案内してやろう」
「お願いするのですよ」
はて、中庭に門、とはどういう意味でしょう。
頭にハテナマークを浮かべながらあとをついていきます。
そして中庭に出ると……確かに門がありました。
「これがユーリの所有している庭に通じる門だ」
「えっと、庭ってなんです?」
「……ああ、初心者なら知らないか。庭とは、個人で所有できる家みたいなものだ。少々条件があるが、最終的には誰でも入手可能になる。ただ、内装に凝り出すと数百万単位で金がかかるがな」
「なるほどです。それで、ユーリさんはここにいるのでしょうか?」
「いると思うが。……ユーリ、いるか?」
斬魔さんが門に声をかけます。
すると。
「斬魔ね。開いているから入ってちょうだい」
「入っていいそうだ」
中からユーリさんの声が聞こえて、中に入る許可がもらえたんだよ。
「それではお邪魔します」
「邪魔するぞ」
「……あら、リーンちゃんも一緒だったのね。集合時間にはまだ早いでしょ?」
「早めにログインしてしまったのですよ。それで、ユーリさん。グルーミングセットを貸してほしいのです」
「ああ、プリムを洗ってあげたいのね。わかったわ、いま用意するから待ってて」
ユーリさんがグルーミングセットを用意してくれている間、庭の様子を見てみます。
森の中に立つ一軒家って感じでとっても落ち着いた感じの家なんだよ。
「はい、準備ができたわ。……そういえば、リーンちゃんは庭に来るの初めてよね」
「はい、そうなんだよ。とってもきれいな感じですね」
「ありがとう。……半分以上はほかの人の手によるものなんだけどね」
「それでもすごいと思うのです。水はそこの噴水の水を使ってもいいのですか?」
「ええ、大丈夫よ。そこの噴水も温水だから気軽に使ってちょうだい」
さすがユーリさんの家なんだよ。
噴水が温水だなんてしっかりしてますね。
さて、プリムを呼び出し、ブラッシングをしてワシャワシャと洗ってあげます。
最初は嫌がるそぶりを見せていましたが……すぐにされるがままになりましたね。
さすがボクのテクニックなんだよ。
「……ふむ、見事なものだな。慣れるまではグルーミングを嫌がるものだが」
「ボクにかかればこれくらい楽勝なのです」
「ほう、それはすごいな。最初のころ、ユーリは振り回されていたものだが」
「ちょっと、斬魔。今言うことじゃないでしょう?」
おや、ユーリさんもそういう時代があったのですね。
というか、ふたりは昔からの知り合いなんでしょうか?
「ユーリさんと斬魔さんは、お互いに昔のことを知っているんです?」
「ゲームを始めたばかりのころ、同じパーティに所属していたな」
「しばらくしてそのパーティは解散したけどね。なんの因果か、またここでこうして一緒にいるわけだけど」
ほほう、奇妙な縁ですね。
……さて、プリムもこれできれいになったのですよ。
「ユーリさん、グルーミングセットありがとうでした」
「いえいえ。それで、今日の予定は、まずファーラビットを捕まえることでいいのかしら」
「はい、その予定なんだよ」
「そのあとは?」
「まだ決まってないですね」
「じゃあ、そのあとはプレーンウルフでも狩りに行きましょうか。それで、レベル10に届くはずだから」
「わかったんだよ」
レベル10ですか。
そこまで上がると何かあるんですかね?
「……ふむ、プレーンウルフ狩りか。ユーリ、人数に空きはあるか?」
「空き? プレイヤー三人にリーンちゃんの従魔が三匹、サーシャちゃんの従魔が一匹だから……ひとりなら大丈夫よ」
「そうか。それなら、俺が面倒を見ているやつを一緒に連れて行ってもかまわないか?」
「……どうする、リーンちゃん?」
うーん、人数が増えるのですか。
これはボクひとりで決めることではないんだよ。
「サーシャやアプリと相談なんだよ」
「それがいいわね。で、斬魔。なんで急に同行を求めてきたのよ」
「俺が面倒を見ているのはひとりなんだが……今日中にプレーンウルフを倒したいそうでな。ギルドで今日が期限のクエストを受けてきたらしい」
「そう、レベルは?」
「まだ8だ」
「……ソロでプレーンウルフなら12はほしいんだけど」
「そうは言ったのだが聞かなくてな……」
なんだか面倒そうな話なんだよ。
これは、本当に要相談ですね。
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