43.ユエさんとパートナーの大好物のお話です!

 ユエさん、ユエさん……あ、思い出したのですよ!


「ユエさんって、パートナー図鑑サイトを作っているユエさんですか?」

「うん、そうだよ。リーンちゃんも私のサイトを見てくれているの?」

「はいです。シズクちゃんを決めたのもそのサイトのおかげですよ」


 そうなのです。

 気づいていなかったのですが、初めてライトニングシーズーのことを知ったのはユエさんのサイトだったんだよ!


「そっか。役に立ってくれているなら嬉しいなぁ」

「ユーリさんからもおすすめされましたしね」

「ユエのサイトは従魔使いにとって本当に便利なサイトだからね」

「元々は趣味で集めてたデータなんだけどね……」


 趣味で集めていたデータがあんなに集まったとはすごいのですよ。

 それにしても、あのサイトの管理人さんが目の前にいるというのも不思議な感覚ですね。


「それで、どうしてボクに会いに来てくれたんですか?」

「あ、そうだったね。リーンちゃんがライトニングシーズーを初期パートナーに選んだって聞いてね。ちょっと手助けをしにきたの」

「手助けです?」

「そう。具体的には、大好物のお裾分けかな」


 大好物ですか。

 はて、それはなんでしょう?


「……大好物じゃピンとこないかな?」

「そういえば、まだそこまでは教えていなかったわね」

「大好物ってなんですか?」

「大好物って言うのはね……」

「ユエもリーンちゃんも一度ストップ。そろそろリーンちゃんのお庭に入らない?」


 おお、そういえばそうでしたね。

 いつまでも庭の前で話し込んでいる必要もないんだよ。

 というわけですので、ふたりをボクの庭にご招待です。


「……さすが、ハイネ爺の作った庭ね。バランスがとれているわ」

「そうね。ここならどんな従魔でも住みやすそう。私の庭も改築をお願いできないかな?」

「本気で改築するつもりなら今度聞いておいてあげるわよ?」

「本当? それならお願いするね」

「わかったわ。リーンちゃん、どこかで休憩できる場所ってないかしら」


 休憩できる場所ですか。

 それなら湖ゾーンにあるあそこですかね。


「四阿が湖ゾーンにあるのです。そこに向かいましょう」

「湖まであるんだ。初心者の庭にしては本当にこってるね」

「……ハイネ爺が本気を出すとこうなるのよ」


 少し疲れた表情を浮かべたユーリさんも含め、湖ゾーンへと移動です。

 そして四阿へとやってきましたが……日傘とかも完備してあってゆっくりできそうなスペースなんだよ。


「さすが、ハイネ爺の作品ね。休憩スペースもここまでこっているなんて」

「うん、そうだね。ますます改装してほしくなっちゃうよ」

「褒めてもらえて嬉しいのですよ。……ああ、でも、出せる飲み物とかがないんだよ」


 こういうときにジュースやお菓子がないと困りますね。

 金銭的に困っているわけではないですし、今度屋台で買っておきましょうか。


「大丈夫だよ。自分たちの分は持ってきているから」

「と言うよりも、リーンちゃんの分もあるわ。はい、これね」

「ありがとうなんだよ、ユーリさん」


 ユーリさんから飲み物とお菓子をもらって休憩ですよ。

 星兎は相変わらずユエさんにひっついたままですね。

 ボクにはシズクちゃんがいるので、まったく困りませんが。


「それで、さっきは大好物の話をしていたんだったよね?」

「そうね。大好物システムの説明だったはずよ」


 ほう、大好物とはゲームシステムのことだったのですか。

 てっきり、パートナーが好むものだと思っていたのですが。


「大好物って言うのはね。パートナーに与えると愛情度の上限が上がっていく食べ物なんだよ」

「そうなのですか。愛情度の最大値っていくつなんです?」

「大好物であげないと最大で100、大好物で最大値を引き上げると150まで上がるよ」


 ほう、五十も上がるのですね。

 これはかなり違ってくるのですよ。


「ちなみに、愛情度がそれだけ違うとなにか特典があったりするのですか?」

「うーん……特にないかな? 愛情度が高ければ高いほど指示を聞いてくれたりするんだけど、100を超えたら差が無いみたいで……」

「そうなのですね。それでは最大値を上げる理由ってなんなのです?」

「よくぞ聞いてくれました。愛情度の最大値を上げるとね、それが派生進化の条件になったりするんだよ」


 派生進化ですか、それくらいならボクも調べているのですよ。

 すべてのパートナーには一般的な進化系統のほかに、派生進化と呼ばれる特殊な進化があるらしいのです。

 例えば黒号のワイルドドッグは通常進化だと防御力やHPが高い進化になりますが、派生進化だと攻撃力が高い進化をするらしいです。

 昨日、寝る前にユエさんのサイトを軽く見た感じですが、派生進化の条件もいろいろと載ってましたね。


「派生進化の条件ですか。……あれ? でも、ライトニングシーズーの派生進化条件って『調査中』になってませんでしたっけ?」

「あー、それね。うん、ライトニングシーズーを含めた四大魔法パートナーの派生進化条件はわかっていないんだよね……」


 四大魔法パートナーとは、ライトニングシーズーのような一撃の威力が高い魔法を覚えているパートナーのことらしいですよ。

 で、その四大魔法パートナーすべてに派生進化があることはわかっているのですが、派生進化の条件はわかっていないと言うことらしいです。


「ユエさんでもわからないのです?」

「いろいろな人に協力してもらったんだけど、さっぱりなんだよね。愛情度を最大限引き上げてから進化するとか、その逆で愛情度をできるだけ下げてから進化するとかしてみたんだけど……」

「……愛情度を下げてから進化させる派生進化もあるのですね」

「うん、あるよ。かなり攻撃的な派生進化になるんだけど、指示をほとんど聞いてくれないのが問題かな……」


 それは確かに困りものですね。

 ボクはそんな進化をさせないように気をつけましよう。


「それで、話を戻すけど、ライトニングシーズーを進化させるときに派生進化ができないか協力してほしいの」


 なるほどですよ。

 ライトニングシーズーの進化方法を見つけるために協力してほしくて会いに来てくれたわけですね。


「わかりました。初心者のボクでよければお手伝いしますよ」

「ありがとうね。で、これがライトニングシーズーの大好物『ワイルドストロベリー』だよ」

「ワイルドストロベリー、野いちごですか」

「うん、そう。第三の街から行ける森の中で採取できる食材アイテムだね」


 第三の街ですか。

 ボクにはまだまだ先なんだよ。


「私の読みでは、最低でも愛情度150は派生進化の条件に入っていると思うんだ」

「なるほどなのです。……でも、ワイルドストロベリーは三十個しかないようですが?」

「……急ぎだったから三十個しか手元になかったんだよね」


 それなら仕方がないですよね。

 でも、大好物がわかっているのでしたら、マーケットで買う方法もあるのですよ。


「あ、ちなみに、マーケットでワイルドストロベリーを購入するのは難しいから諦めた方がいいよ」

「え、そうなのですか?」

「第三の街まで行けば誰でも入手可能なアイテムで、使う人はほとんどいない。売れるかどうかわからないアイテムなんて、誰も取りに行かないよ。あとは、売っていてもやたらと高いかだね」


 ……それは困ったんだよ。

 ユエさんの話によれば、大好物一個につき愛情度の最大値は一しか上がらないとのこと。

 つまり150まであげるには五十個必要なのですが、手元には三十個しかない。

 でも、ボクには取りに行く手段がない。

 ……これって手詰まりじゃないですか。


「ユエさん、ユーリさん。どうやったらいいんだよ?」

「そうねぇ。手っ取り早いのは私かユエがワイルドストロベリーを追加で調達してくることなんだけど……」

「私はこれから数日ログインできないんだよね。ごめんね、リーンちゃん」

「となると、私が採取してくるしかないわけだけど。リーンちゃん、庭も買ったんだし、畑を作ってみるつもりはないかしら?」


 ほぅ、畑ですか?

 話の流れから言ってワイルドストロベリーを増やせるようですが、どうすればいいのでしょうかね。

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