44.野菜や果物を育てる畑です!
「畑っていうのはね、その名前の通りお野菜や果物を増やすことができる施設なんだよ」
「まあ施設というか……庭の機能のひとつね。身も蓋もないことを言えば」
なるほどなんだよ。
庭にはそんな使い方もあるのですね。
「では早速、畑を用意して……」
「ちょっと待って、リーンちゃん。畑を用意しても管理できるプレイヤーかパートナーがいないとだめよ」
「そうなのですか? 畑を耕して、種をまいて、収穫して終わりじゃないのです?」
「ほかにも細かい作業があるわ。……まあ、そこまで気にするような作業じゃないし、リーンちゃんが最初に言った作業で間違いなんだけどね」
「それくらいならボクでもできますよ?」
「畑を管理するには【農業】スキルが必要になるんだよ。リーンちゃん、農業スキルを覚える余裕はある?」
新しいスキルですか……。
確かに、まだまだ覚える余裕はありますが、あまり無駄遣いもできないのですよねぇ。
どうしましょうか。
「とりあえず、畑の管理をどうするかは後に回しましょう。先に畑の説明をしてあげるわ」
「お願いします、ユーリさん」
「ええ、任せて。畑なんだけど、ホームの広さ……つまり、庭の広さによっておける畑の広さや数が変わってくるわ」
「なるほどです。広い庭ほどたくさんの畑をおけるのですね」
「そういうことよ。リーンちゃんの飛行庭だと、かなりの数を設置することができるわね」
「そうなのですか。そうなると、ますます管理の問題が出てきますね」
たくさん畑ができるとなると、管理にもたくさんのパートナーが必要そうですよ。
ボク? ボクは邪魔になりそうなので戦力外です。
「あと、ハイネ爺が庭の一角を未整備にしてくれたわ。おかげで、あそこを畑の区画にできるからね。ほんと、考えて庭作りをしている人よね」
なるほど、あの一角はそのために残していたんだよ。
ボクには思いつかないことですねぇ。
「ともかく、場所はこれで決まりね。あとは、畑の広さなんかなんだけど……」
「これは、実際に畑を管理できるようになってからじゃないとね」
「いま広さを確認することに問題があるのですか?」
畑の広さを今のうちに確認しておくことは悪くないと思うのですが。
そう考えていると、ふたりはボクの考えを否定してきます。
「自分で管理するにしても、パートナーに管理させるにしても、畑の広さって大事なのよね」
「プレイヤーなら農業スキルのレベル、パートナーなら農業スキルの熟練度で管理できる広さが違うの」
「だから実際に管理する人が決まってから畑を設置した方がいいのよ」
なるほどですよ。
そこまで頭が回ってなかったのです。
でもそうなると、どこの誰に畑を任せるかが問題になってきますね。
「うーん、管理させるのにいい方法はないのかな……?」
「そうねぇ。リーンちゃん、今月の課金枠って残ってる?」
ユエさんにそう聞かれますが、課金枠ですか……。
「……残念ながら全部使ってしまったのですよ」
「そっか。課金枠が余っているなら『お手伝い精霊ブラウニー』っていうパートナーを買うって方法もあったんだけど」
「ほうほう、そのブラウニーというパートナーはどんなパートナーなのですか?」
「好きな生産系スキルを三つ覚えさせることができるパートナーだよ。覚えたスキルに対応する設備が庭にあれば、せっせと働いてくれるの」
「なにそれ、かわいらしいのです」
「その代わり戦闘は一切できないから、課金枠をひとつ潰しちゃうんだけどね。熟練度を上げれば上位のアイテムを生産してくれるからなにかと便利だよ」
ふむふむ、ブラウニーですね。
これは来月の購入検討リストに入れておかねばですよ。
自動でいろいろ作ってくれるとか、超便利じゃないですか!
「うーん、課金パートナーがダメだとしたら、この辺だとどんなパートナーが仲間になるんだろう?」
「こういうときこそあなたのサイトじゃない?」
「それもそうだね。ちょっと調べてくるから待ってて」
ユエさんが調べ物をしている間、ボクとユーリさんは今後の予定などを話していました。
今後は引率としてついてきてくれる回数は減る代わり、アイテムなどのサポートを充実してくれるらしいです。
実際、各種ポーションはたっぷりと用意されてますからね。
あと、ちょっと気になったことなのですが、ボクたちのほかに新人さんがいないのかを聞いてみました。
結果としてはほかにも何人か新人はいるらしいのです。
でも、ボクたちのタイミングが合わずに紹介していないらしいですね。
間が悪いとはまさにこのことなのでしょう。
「調べ終わったよ、ふたりともー」
どうやらユエさんも調べ終わったみたいなのです。
早速結果を聞いてみましょう。
「次の街、ツヴァイファムに行く前で農業スキルを覚えさせることができるモンスターは二種類だね」
「……それって少ないのでしょうか? 多いのでしょうか?」
「うーん、普通かな? ツヴァイファムまで広げても四種類にしかならないから」
「まあまあ、リーンちゃん。とりあえず、調べた結果を聞いてみましょう」
「そうですね。ユエさん、お願いします」
「うん、まず一種類目なんだけどゴブリンだね」
ゴブリン……あのゴブリンですか……。
「リーンちゃん、顔に出ているわよ」
「でも、あのゴブリンですよ。いやじゃないですか」
「育てれば強くなるのよ。……卵からだけど」
卵とは気になりますね。
今度聞いてみましょうか。
「話を続けていいかな?」
「あ、すみません。大丈夫なんだよ」
「ゴブリンの中でも『ゴブリンワーカー』って種類のゴブリンが農業を覚えることができるの」
「『ゴブリンワーカー』ですね、わかりました」
「ただ、こいつはゴブリンの巣の最奥部にしかいないのよね……」
「なんだかいやな感じなんだよ」
「最奥部ってね、上位のゴブリンがたくさんいるのよ。ゴブリンナイトとかゴブリンメイジとかゴブリンアーチャーとか」
「テイムもままなりませんね……」
「なのよね。だから、結構難易度が高いのよね」
うーん、それじゃあもう一種類に賭けてみましょうか。
できればゴブリンよりもかわいいヤツがいいですよ。
「ゴブリンの話はわかりました。もう一種類というのは?」
「そっちもそっちで大変なのよね。二種類目は『ワーカーアント』なのよ」
……今度は『アント』、おそらくアリでしょう。
なんだかいやな感じがしますよ。
「……体高一メートルくらいの大蟻ね。ただ、ワーカーアントを入手する場合は普通にテイムするんじゃないんだよ」
「ほう、どうすればいいのです?」
「アントを仲間にする方法なんだけど……突発クエストで『クイーンアントを退治せよ』っていうのが発生することがあるの。それのクリア報酬の中にランダムドロップとして『アントの卵』っていうアイテムが入っているんだよ。それを孵化させればアントの入手完了だね」
むむ、つまり何らかのクエストをクリアして、ランダム報酬のアイテムを入手しないとダメということですか。
それは運が試されそうなんだよ。
「以上がこのエリアで農業スキル持ちを入手する方法だね」
「むー、ユエさん的にはどちらがおすすめですか?」
「アントの卵かな? アントの卵なら……」
「ユエ、ストップ。それ以上はリーンちゃんのためにならないわ」
ユエさんがなにかを教えてくれそうだったのですが、ユーリさんがそれを止めましたね。
なにを教えてくれるつもりだったのでしょう。
「えー、そう言うことを教えるのも先達の役目だと思うよ?」
「とりあえず、ゴブリンワーカーを入手しに行ってからね。やってみるつもりなんでしょ?」
「はいですよ。サーシャとアプリには相談しますが、できれば行ってみたいのです」
「じゃあ、ユエが教えようとしていたことは、その狩りのあとに説明してあげるわね」
なんだかいい感じにまとめられてしまった気がしますが、次の目標は決まりました。
気は乗りませんが、ゴブリン退治とゴブリンワーカーのテイムですよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます