28.出発前のひと悶着です……

体調が悪いとは言っても一週間更新しないのはさみしいので更新します。

ああ、ストックが減っていく……


**********


「あら、面白い冗談ね。あなたが私たちについてくることになってるはずだけど?」

「なんだと? ガキのくせに生意気だな!?」


 なるほど、これは性格に難がありそうなんだよ。

 斬魔さん、よくこんなのの面倒を見ていられますね。


「レッド、事前に言ってあるだろう。今回はあちらの狩りに同行させてもらうと。今回の予定もあちらにあわせることになる」

「なに言ってるんですか、斬魔さん! こんなところでなめられたら終わりですよ!」

「……お前こそなにを言っているんだ? これはゲームであり、年齢は関係ない。あくまでお前は同行させてもらう身だということを忘れるな」

「でも、そんなこと認められません! 俺は今日中にプレーンウルフを三十匹討伐しなくちゃいけないんです!」

「それはお前の都合だろう? そんなこと、ほかのプレイヤーには関係のないことだ」

「でも、ほかの連中だってプレーンウルフを倒すぐらいの実力はあるんだから手伝ってくれてもいいじゃないですか!?」

「それこそお前の都合だ。ほかの人間には関係ない。お前が常に偉そうに振る舞うから、誰も手伝ってくれなくなるのだ」


 あー、あれですね。

 典型的な俺様キャラなんでしょうかね?

 いや、俺様キャラでも協調性はあるはずだから、ただのバカなのかな?


「ともかく、今回は彼女たちに手伝ってもらうことだ。それなら三十匹程度すぐに終わるだろう」

「でも、そんな簡単に終わるんですか? どう見ても強そうには思えませんが」

「見た目で判断するのはよくないぞ。少なくとも、最大火力はお前よりもはるかに上だ」

「……俺だって、それなりに鍛えてるんですが」

「彼女たちはテイマーとサマナーだからな。そもそも個人の戦力が異なる」

「テイマーにサマナー!? あの最弱って噂の!?」


 本当に失礼な奴ですね。

 こんなのと一緒に行くのはいやなのですが。


「どこの情報かは知らんが、どちらの職業も弱くないぞ。従魔を適切に扱えれば、序盤はほかの職業よりも有利なくらいだ」

「そんなはずないですよ。俺が調べた限り、どこの情報でも最弱だって話でしたし」


 本当に人の話を聞かない奴なんだよ。

 こんなのは置いていって、早くモフモフウサギちゃんをゲットしたいのですが。


「ユーリさん。あんなバカは無視して早く出発したいんだよ」

「うーん……そうねぇ。でも、斬魔にもガイルにも頼まれてるし」

「ユーリさん。私もリーンに賛成です。あんなのを連れていってもトラブルにしかならない気がします」

「私も同感です。露骨に私たちのこと見下していますし、一緒に行きたくないです」

「うーん……」


 ユーリさんも大分困った顔をしてるんだよ。

 ガイルさんにも頼まれてるんじゃ仕方がないのかな。


「ともかく、今日は彼女たちと一緒に行くかひとりで行くかの二択だ。好きなほうを選べ」

「好きなほうって。斬魔さん、俺ひとりじゃプレーンウルフを三十匹も倒せないの知ってるじゃないですか」

「お前が身の程もわきまえずにそんなクエストを受けるのが悪い。念のため言っておくが、俺はあくまでも引率だけでクエストの手伝いはしないからな」

「くっ……わかりましたよ。あいつらと一緒に行けばいいんでしょう?」

「ああ、そうだな。もっとも、彼女たちがお前をつれてってくれるかは別問題だが」


 ボクは一緒に行きたくないんだよ。

 サーシャとアプリも行きたくなさそうですし、断っちゃいましょうかね。


「おい、お前ら。俺も一緒にプレーンウルフ狩りに行ってやる。感謝しろよ」

「……別に、あなたなんて必要ないわ。私たちは三人でも十分に戦えるからほかを当たりなさい」


 おお、サーシャ、言いますね。


「なんだと! この俺が頼んでるって言うのに断る気か!?」

「人にものを頼む態度じゃないでしょ? それに、私たちは三人でも十分なの。余計なメンバーを入れて連携を乱したくないわ」

「ちっ……俺のレベルは8だぞ! プレーンウルフとの戦いでは必要だろ!」

「残念ながら、私たちは全員8以上よ。プレーンウルフだってまとめて倒す方法があるから問題にならないわ」


 ボクのレベルはプリムとの戦いで9に上がってますからね。

 シズクちゃんと黒号も9になってますし、プレーンウルフに負けるとは思えないのですよ。


「サーシャちゃん。申し訳ないけど、今回は彼も一緒に連れて行ってあげてくれないかしら」

「ユーリさん……そこまで肩を持つ理由がわかりませんが」

「一応、育成の機会は与えてあげたいのよ。今回ダメだった場合は、相応の対応をとるって話をしているはずなんだけど……」

「それでもあの対応って……人間性がダメなんじゃないですか?」

「……それについてはなんともいえないわね」


 ユーリさんも目をそらすということは、認めているようなものなんだよ。

 さて、どうしましょうかね。


「……どうする、皆。ユーリさんはああ言ってるわけだけど」

「うーん、ユーリさんにはお世話になっていますし、今回だけなら……?」

「そうなんだよ。ただ、一回だけでもすごくめんどくさそう……」

「そうなのよねぇ。ユーリさんの頼みだし、仕方がないか」


 ボクたちの間で話はまとまったので、ユーリさんに報告ですよ。

 ユーリさんもほっとしていた様子ですね。

 相当、めんどくさい案件だったようなんだよ。


「レッドといったかしら。今回だけは同行の許可が出たわよ」

「はっ、最初から認めてればいいんだよ」


 やっぱり断りましょうかね。


「レッド、口を慎め」

「……わかりましたよ、斬魔さん」


 指導を担当している斬魔さんの言うことには、ある程度従うようなんだよ。

 それなら最初から憎まれ口をたたかなければいいのに。


「ただし、プレーンウルフを倒しに行く前に、ファーラビットをテイムするからそれに付き合ってもらうわよ」

「はぁ!? 聞いてねえぞ!」

「伝えてあるぞ、レッド。ともかく、お前はファーラビットをテイムする間はなにもするな」

「……ちっ」


 ほんと、幸先不安ですよ。


 ともかく、ボクたちもクエストを受けてから出発です。

 いざ、ファーラビットをゲットするために!

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