第三章 チェーンクエストに挑戦ですよ!

16.朝はグルーミングのお時間なんだよ!

 おはようございます、リーンです。

 《infini fantaisie》初日を終えてぐっすり眠りましたよ。

 さて、朝ご飯も食べましたし、今日もはりきってゲームを楽しみましょう!


「……せっかくの日曜日ですのに、サーシャもアプリも午後からのログインとはつれないんだよ」


 そうなのです。

 ふたりの予定を聞いてみたところ、どちらも午後にならないとログインしないという答えだったのです。

 午前中は三時間くらいしかログインしている時間もありませんし、仕方がないのかもしれませんがね。


「さて、なにをして時間を潰しましょうか」

「……あら、リーンちゃん? 朝早くからログインしてるわね」

「あ、ユーリさん。おはようなんだよ」


 やることを探してギルドの中庭でシズクちゃんを眺めていたら、ユーリさんと遭遇したんだよ。

 ユーリさんにしては珍しくパートナーを連れて歩いてますね。

 大型犬サイズの猫系動物ですが……尻尾が蛇ですし普通の動物じゃないです。


「ユーリさんも朝早いですね。なにか用事だったのです?」

「用事というか、この子のグルーミングにね。……そうだ、リーンちゃんも一緒にグルーミングする? ブラシとかのアイテムは貸してあげるわ」


 おお、なんという渡りに船な提案でしょう!

 シズクちゃんや黒号のお手入れをどうしようか悩んでいたのですよね!!


「お願いするんだよ! それで、どこでグルーミングするのかな?」

「ここでするわ。そこの噴水が温水になってるのよ」


 ユーリさんが温水だと言った噴水ですが、手を突っ込んでみると確かに温かかったのです。

 噴水が温水でできているってどういうことでしょうかね?


「それではグルーミングを始めましょう。……その前に、リーンちゃんには【生活魔法】のスキルを覚えてもらわないとね」

「生活魔法ってなんですか?」

「ドライヤーとかウォーターとか、そういう細かい魔法を集めたものよ。戦闘には使えないものばかりだけどね」

「なるほどです。それで、どうやって覚えればいいのでしょう?」

「ちょっと待ってね……はい、このスクロールを使用してもらえれば生活魔法を覚えられるわ」

「それだけでいいのです?」

「戦闘の役に立たないフレーバースキルだからね。アインスベルの次の街、ツヴァイファムの雑貨屋まで行けば安値で売っているわ」


 なるほどなんだよ。

 戦闘の役に立たないから安いと。

 さすがゲームですね。


「それでは遠慮なく……うん、覚えましたね」

「それじゃあ、始めましょうか。グルーミングの順番は知っている?」

「はい、知っているのです。まずはブラッシング、その次に爪のお手入れ、そのあとシャンプーですよね」

「ええ、そのとおりよ。よく知っていたわね」

「ボクの将来の夢はペットのトリマーなのですよ!」


 そうなのです、将来はトリマーを目指しているのです。

 そのため、グルーミングの順番だって知ってますよ!

 ロビンのブラッシングだってボクがよくやってあげてますしね。


「そう、それなら大丈夫そうね。まずはスリッカーブラシで毛をほぐしてあげてね」

「はいなのです。それではスリッカーブラシをお借りするのですよ」


 ユーリさんが持っていたブラシセットからスリッカーブラシを借り、シズクちゃんと黒号をブラッシングです。

 シズクちゃんは嫌がるそぶりも見せずに身を任せてくれましたが、黒号はちょっと抵抗しましたね。

 それも最初のうちだけですぐにおとなしくブラッシングされるようになりましたが。


 スリッカーブラシでのブラッシングが終わったら、コームブラシで毛並みを整えますよ。

 この頃にはシズクちゃんだけでなく、黒号も気持ちよさそうにブラッシングされてくれますね。

 よいことなのです。


「ふむ、ブラッシングはこれくらいで大丈夫かしら。次はシャンプーよ」

「了解です。シャンプーも種類があるのです?」

「あるわよ。でもまずはクレンジングシャンプーで大まかな汚れを落としましょうか。最初にシャンプーを受けるパートナーってなかなか汚れが落ちないから」

「わかりました。シズクちゃん、黒号、次はシャンプーですよー」


 またまたユーリさんからシャンプーをお借りして、わしゃわしゃ洗ってあげます。

 ユーリさんが言っていたとおり、なかなか泡立たなかったのでクレンジングシャンプーは二回ほど使いましたよ。

 そのあとは、ユーリさんおすすめの香り付き保湿性シャンプーで洗ってあげました。

 そして、ドライヤーの魔法で乾かしてあげれば二匹ともふわっふわの毛並みに生まれ変わりましたよ!


「おお、シズクちゃんも黒号もさらにかわいくなりましたね!」

「ワオン!」

「ワウ!」


 嬉しそうにじゃれついてくる二匹を交互になでてあげていると、ユーリさんもお手入れが終わったようでボクに話しかけてきましたよ。


「驚いたわね。初めてグルーミングされるパートナーは大抵嫌がるものなのに……まあ、なついているならいいことだけど」

「そうなのですよ。……ところで、ユーリさん。グルーミング用のブラシやシャンプーはどこで買えますか?」

「……ああ、それね。三番目の街ドライフラウまで行けば売っているお店があるけど……初心者がたどり着くにはそれなりの時間がかかるし、私と同じくらいアイテムをそろえるにはそこそこのお値段になるわよ?」


 やっぱりゲーム内でもお金は大事なのですね……。

 世知辛いんだよ。

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