第21話 貴様の価値を示せ

【問】

 推しの前で秘めていたドロドロの萌え語りを吐き出してしまったオタクの心情を答えよ。

【解】

 死 に た い


 はい。レヴィーアです。

 ちょっともう死にた過ぎて土下座を通り越して土下寝しています。

 なんで、なんでこうなってしまったんだ……

 私は分別のあるオタク。公共の場で、大声で萌え騒いだりしない人間のはずだったのに!!

 もう怖過ぎてリベル様の顔も見れない。

 今、リベル様が死んだ時とは別の意味でちょっと泣いている。


「……いつまでそうしているつもりだ、偽物」

「私は分別もつかずに御本人の前で欲に塗れた妄想を並べたて不快にさせた偽物です煮るなり焼くなり好きにしてくださぃ」

「まったくだな。まさかあの様な不愉快な妄想を聞かされる羽目になるとは……」


 セリフとは別にリベル様の声は淡々としていて、そこに嫌悪が滲み出ているなんて事はない。おかげで本心がまったく読めないから、嫌な意味ですごくドキドキしている。

 というか怖い、怖過ぎる! いっそ罵ってくれた方が楽なのに……


「ううっ……信じられないかもしれませんが言葉が、言葉が勝手に口から溢れ出たんですぅ……」

「だろうな。貴様には面白い程良く効いた」

「えっ」


 何の事か分からなくて思わず顔を上げてしまった私の目に写ったのは、冷たいを通り越して極寒の眼差しで見下ろしてくるリベル様の瞳。

 ハイッすみませんでしたゴミは地面にめり込みますッ!


「一つ答えを教えてやろう」


 前回のループで聞いた様な言い回しに、背筋が自然と伸びる。


「貴様が飲んだ茶には自白を促す魔法薬を混ぜていた」

「じはく……やっぱりタダのお茶じゃなかったんですね」

「当然だ。俺様が貴様に茶を振る舞うとでも?」

「誠に仰る通りでございます」


 ……うんうん! それでこそリベル様!!

 逆にタダのお茶だったら解釈違いでしたリベル様!

 毒 (のようなもの)を盛られているという読みが当たった事実で、私のSAN値テンションはちょっとだけ回復する。


「質問に対し、嘘偽り無く返答させる程度のものだが……」

「うっ」


 私が聞かれてもいない事をベラベラ喋った件ですよね。ごめんなさい悪気はなかったんです。というか喋る気もなかったんです。わざとじゃないんです本当です。


「魔法薬とは言え万能ではない。アレも飲み手が心を開かねばたいして効果を示さないものだ」


 コツ、と足音を響かせながら、リベル様が私のすぐ目の前まで移動した気配を感じる。


 ——貴様は余程俺様に信頼されたいと見える。


 ひゅっ。

 耳元。すぐ耳元でリベル様の深く威厳のある声が囁いた。こんなの破壊力しかない。

 しかもこのセリフでしょ? やばいって、やば過ぎる……


「わ、私は本当にリベル様のために何かしたくて、だからなんでも話すつもりでいて……」

「分かっている。貴様は体を張って証明したわけだ。己の潔白を」

「……リベル様!」


 これは一歩前進では!? こんなこと思ってもらえるなんて初めてでは!?!?

 どうしようどうしよう、今回は、今回こそ行けるかもしれない! 何の根拠もないけど、なんかそんな気がしてきた。

 少なくとも私の話は聞いてもらえるはずだから、ここから出たらもう一度ちゃんとループとか処刑の話をして、対策を——


「浮かれるなよ、偽物」

「っ!」

「貴様の話、気になる点は多々あったがいずれも俺様にとっては些事でしかない。つまり偽物である貴様を解放してやる理由も特にないわけだ」

「そ、それは困ります! リベル様のためになんでもしますから出してください、お願いします!!」

「なんでもか……言うのは容易い。が、貴様に何ができる」


 それは厳しい追求の言葉。

 そうだった、リベル様は別に救いなんて求めていない。そんな事を言ったら、絶対に出してなんてもらえない。

 だったら私にできる事は何? リベル様の興味を引けそうな事は……


「自由が欲しくば貴様の価値を示せ」

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