第20話 とりあえず貴様が私を卑猥な目で見ていた事はよく分かった
「はわわわわわ……ご褒美だ……ご褒美すぎる……こんな良い想いをして良いのだろうか……いや良くない……」
私はリベル様の足が乗っている後頭部に全神経を集中させながらも、震えそうになる体を必死になだめていた。
「だって、だって、リベル様の質問に答えなきゃいけないのに、ここここ、こんな、こんな……感激すぎて言葉が出な……ぐぇっ」
言葉を遮るように頭にかかる力が強まり、顔がぺしゃっと潰される。その後リベル様の足が離れていく気配につられて顔を上げたら、無表情のまま汚いものを触ったみたいに靴底を地面にぐりぐり擦りつけていた。
「えっ、何そのうんこ踏んじゃった時みたいな反応! 好きッッッ!! 私が口先だけで服従を示してると思って煽り目的で踏んでみたら本当に喜ばれてドン引きしちゃったんでしょ! ごめんねリベル様! でも私本当に本気でリベル様の事大好きだし、なんでもしたいし、何されても嬉しいです!」
「良いから質問に答えろ」
「ハイヨロコンデ!!」
さっきから頭で考えるよりもはやく口から言葉がどんどん溢れてくる私だけど、リベル様そんな私に特別リアクションはせず、ただ冷静に情報を引き出そうとしてくる。
「でもドン引きさえしてくれない、そんなクールなとこが素敵……あっ、待って待って待って! 話すから! 話すから帰ろうとしないでぇえええ!!」
立ち去ろうとするリベル様の足元に縋りつき、私は今までの経緯を話し始めた。
気がついたらレヴィーアになっていた事、リベル様が処刑された事、ループしてリベル様に執務室で声をかけられた事、そしてまたリベル様が死んでしまった事……
「同じ次元に推しがいるって、生きてるだけで二十四時間年中供給なの強すぎない?? もう存在がファンサだよ! 本当にそれだけで尊みがヤバみなのに推しとの距離が近い婚約者ポジション……なにこれ天国? って思うじゃん? 地獄だったんだけどね!!」
気がつけば私の話はことの経緯から、いかにリベル様を推しているかに変わっていた。
「処刑シーンを見るたびに思っていたんですけど、リベル様の首から流れ出る血が勿体無い! リベル様の一部があんなに広がって地面のシミになるなんて……それならカップに注いで永久保存したいじゃない! あっ舐めるとか飲むとかそう言う趣味はないんで安心して欲しいんですけどね!! 血の酸化の問題はどうすれば良いと思います? なんか器の中の時を止めるとかそんな便利な魔法ってないのかな?」
オタク用語をバリバリに並べて、マシンガントークを繰り広げる。語れば語るほど知能指数は下がり、話のネタも下の方へ……
「夜寝付けないリベル様をぎゅーってしてよしよししたいな。そして眠っているリベル様をぺろぺろしたいな! ゲームやってた時から思ってたんだけど、リベル様をすごく抱きたいな! もちろんカッコいい時なんて抱いて! って何回も叫んじゃうんだけど、結局は抱きたいに帰ってくると言うか、なんていうか……その……下品なんだけど……フフ……リベル様の顔を見ているとぼっ (自主規制)」
結局喉が枯れ始めるまで話し続けたところで我に返った私は、続くリベル様の言葉に羞恥でこの場から消えたいと心の底から思った。
「とりあえず貴様が私を卑猥な目で見ていた事はよく分かった」
「ア"ア"ァ"ァ"ア"申し訳ありませんでしたリベル様そのセリフはオタクに効きますやめてくださいお願いします忘れてくださいぃ」
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