第19話 ゴクゴクゴク、ぷはぁ。もう一杯!

 ギィィ……


 牢の門が開かれる音にビックリして顔を上げる。

 するとなんという事でしょう! リベル様が悠然と牢の中に入ってきているではありませんか!


「ひぇ、リベル様が牢に……」


 混乱する私をよそに、リベル様は何もない空間から見覚えのある椅子を取り出し、私の目の前で足を組んで座った。

 嘘でしょ、前回リベル様が座ってた椅子もそうやって自前でだしたの……


 牢屋にいるリベル様なんて見たくなくて、どうでも良いことに思考を飛ばす。


「なんだ、惚けた面をして」

「いや、だって急に椅子出てきたらビックリしますよ、ね?」

「たかが魔法にいちいち驚くな」


 え、でもリベル様って光属性なのにそれは空間属性……


「飲みたまえ」


 言いながらリベル様は空中に指で円を描くと、その中からティーカップを一つ取り出した。


「良いんですか!?」


 差し出されたカップをじっと見つめる。中には飴色の液体が入っていて、紅茶の良い香りが鼻をくすぐった。


 リベル様が私にお茶を……やばい、めちゃくちゃ嬉しいんだけど怪しいです! 流石の私でも何かあるって思うよ!! でも推しが手ずから入れてくれたお茶を断れるとでも?! 断るくらいなら例え毒で死んでも悔いはない、というか推しに殺されるなら本望ですむしろ殺してください!! そしてもしかして気付いても断れないと分かってで出してますね?? 好き!! そういう冷酷なところもゾクゾクしますッッッ!!


「貴様は飲む、だろう?」

「ハイヨロコンデ!!」


 ゴクゴクゴク、ぷはぁ。もう一杯!


 悪い笑顔で私を見下ろすリベル様の前で、一息に紅茶を流し込んだ。

 ドキドキしながら体に何か異変が起きないかと待ったけど、暑くなったり苦しくなったりなんてことはしない。あれ、もしかして本当にただお茶をくれただけ? 

 どうしようそれならちゃんと味わえばよかった! 今からでも口に残った余韻を楽しめば良い??


「あの……」

「では話を聞こうか。偽物」

「ゔっ!」


 上げて落とす天才ですねリベル様! お茶を喜んでたのに不意打ちの偽物パンチですか……

 思わず心臓を抑えてうずくまる。


「では答えてもらおうか。貴様はなんの目的で私に……いや、偽物に気を使う必要もないか」


 頭上でリベル様が動く気配。そしてうずくまる私の頭に、上から力が加わり地面に顔をぶつけてしまった。


 何も見えないけど分かる。後頭部に当たる硬い感触。地面を舐めるこの味。

 これは、これは……そう……わたし、いま、ふまれて……


「何故その姿での前に現れたか答えろ」


 くぁwせdrftgyふじこlp!? 

 これは……私に喋らせるためか強すぎず、でも顔をあげられない程度には弱すぎない踏み方! 

 そんなに痛みは感じないけど程よい屈辱感……価値ある一踏み……そして何より、この先いくら踏まれようとも初めての一回は今しかないのだーーーーひゃーーー!?!? ご褒美ですありがとうございますありがとうございますリベル様!!


 私、今! 感激で震えております!!

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