R4. 世界の終わりでさよならを

第18話 どうやら貴様が偽物である事に間違いは無いな

 前回の私はメイドのコスプレをしている間にリベル様を死なせた反逆者だったようですが、今回の私は完璧で幸福です!


「ごきげんよう! レヴィーア・フローディアよ!」


 恒例にしつつある挨拶を私は高らかに宣言する。

 ついに始まりました第四のループ。手も足も出なかった前三回のループ。果たして今回はどのようになってしまうのか……その一部始終を、私レヴィーアが地下牢からお送りします!


 私、レヴィーアが地下牢からお送りします!!(大事だから二回)


「はあぁぁぁぁ……」


 頭を抱える。

 何を隠そう私は現在、前回リベル様がいた地下牢にいるのである。


「ア"ア"ァ"ァ"ア"ア"ア"ァ"ァ"ア"」


 もう、奇声だってあげたくなるよね!

 リベル様の開幕投獄はなくて本当に、本ッ当に良かった。だけどまさか私がこんな事になるなんて……


 ちょっと遠い目をしつつ、数刻前の事を思い返す。

 こうなったのは百パーセント私が悪いんだけど、言い訳をさせて欲しい。


 ………………

 …………

 ……



「レヴィーア・フローディア。貴様、そこで何をしている」


 絶望の中、始まった新たなループ。

 推しが目の前で生きてる動いてる喋ってる! その有り難みに震える私だけど、同時に前回の失敗も蘇る。

 私がレヴィーアのフリをしたから、リベル様の信用を失い、まともに話す事すらできなかった。なすすべなくリベル様を死なせた事は、もうちょっとしたトラウマだよね。

 だから私に残された選択肢は、もう素直に偽物だと告白する事だと思った。


「あの、私! 実はレヴィーア・フローディアじゃないんです!」


 何言ってんだコイツ。リベル様の顔にはありありとそう書かれていた。そして当然のように自称偽物は地下牢にぶち込まれた。


 回想終わり!



 ……

 …………

 ………………



「はあぁぁぁぁ……」


 やらかした。

 これは完全にやらかした!

 リベル様を失って虚無堕ちしていた私が正気に戻るレベルのやらかしだよ!


 白状するにしても、もう少しやり方なかったかなぁ!?

 初手地下牢とか詰みパターンでしょ! どうしてくれるんだーー!!

 このまま地下牢で何もできずに終わったりしたら、私……私…………


「ひぎぃやぁあ"あぁあ"いやだぁああああああ出じでぇえええぇえええええぇええええええ!!!!」

「……騒々しいな」

「ひぇっ、リベル様」


 恥も外聞もなく叫んでいたせいで、近づく足音に気づけなかった。

 条件反射で『リベル様』と呼んでしまって、慌てて口に手を当てる。

 レヴィーアはリベル様をリベル様って呼ばないんだった! あれ、今はレヴィーアじゃないから呼んでも良いんだっけ?


「どうやら貴様が偽物である事に間違いは無いな」


 鉄格子越しに冷めた目が私を見下ろしていた。

 レヴィーアはこんなに騒がしくないしリベル様って呼ばないもんね! 分かります。

 だけどこれはチャンスだ。まさかリベル様が会いに来てくれるなんて!

 今を逃したらきっと二度と弁明の機会もなく、本当に地下牢でエンディングを迎えてしまう。


 私は魂に染みついた謝罪のポーズ——土・下・座を決めながら、誠心誠意お願いした。


「踏んでください、リベル様!!」

(お願いします何でもしますから出してください!!)


 逆! 逆! と突っ込んでくれる人はどこにいもいなかった。

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