第29話 さあ! さあ! 立ち上がれ!
「Ladies & gentlemen ! ようこそいらっしゃいました、我がクローバーサーカスへ!」
ゲームで見たのと同じように、団長が開幕の口上を述べていく。
しかし数枚のイラストで簡易的に流れたゲームでの演目は、実際目の当たりにすると圧巻の一言だった。
「すごい……すごい、すごい! こんなすごいの初めてだよ……!」
「……うん!」
隣の席からリズきゅんと陛下の無邪気な歓声が聞こえてくる。
思えばサーカスってなんかイメージで知ってても、ちゃんと見るのはこれが初めてかもしれない。
普通のサーカスがどう言う物なのか知らないけれど、クローバーサーカスの演目は、全体を通して演劇のように物語をベースに進行していた。
——
そんなナレーションと共に、舞台で小動物たちが水魔法で形成され、動物に仮装した団員が玉乗りやジャグリングを披露しながら、平和な動物たちの楽園を演出した。
——しかしある日、どこからか怖い動物たちがやって来て、楽園を支配してしまいました。
動物使いが狼やピューマといった猛獣を従えて、芸を披露しながら水魔法でできた小動物を攻撃する。
また綱渡りや空中ブランコを使って、逃亡する小動物たちを演出したステージは緊迫感も相まって、会場のボルテージは上がっていった。
そして、猛獣たちの苦しい支配がいつまでも続くと思われたある日……
——さあ! さあ! 立ち上がれ! いつまでも奴らの暴力を許すな! 我々にだって牙がある! 爪がある! 今こそ力を合わせ、反撃の狼煙を上げる時だ!
一匹の『ネズミ』が立ち上がり、声を上げた。
絶望の中うずくまっていた小動物たちが、一匹また一匹と前を向き、団結して立ち上がる。
——さあ、皆も我々に力を貸してくれ!
高揚感を煽る激しいBGMと共に、今まで出演した全団員が代わる代わる登場し、それぞれの技で猛獣と戦うステージが繰り広げられた。
昔話のように一方的に攻めるシーンもあれば、手に汗握るギリギリな戦いもある。そんな時は観客たちも思い思いの声援を送って、会場は一体感に包まれた。
打倒猛獣。
巨悪に屈するな。
我々にだって力がある!
ついに敵の首領が倒され、祝賀会が開かれる。動物たちが輪になって踊りだした時、最初に立ち上がったネズミが観客に向かって語りかけた。
——皆のおかげでこの戦いに勝利できた! どうだろう、共にこちらで踊らないか?
スポットライトが回転し、ランダムに選ばれた観客が動物の仮装をしたスタッフにステージへと導かれる。
リズムに合わせて手拍子をしながら舞台の行く末を見守っていたら、ライトがリズきゅんのところで止まった。
「レディ、一緒に来てくれないかい?」
ネズミが手を差し出す。
……あ!! これゲームで見たやつだ!
大好きだったゲームのワンシーンが、目の前で再現されて私は思わず感激して拍手した。
これでリズきゅんが革命軍と関わるフラグが立ったという事実を、いったん心の底に仕舞いながら……
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