第30話 リベル・ディクターは二人いる
「サーカスってこんなに凄いんだね! 人が飛んだり跳ねたり、迫力があって僕好きだな」
「わたしはコウモリっぽいのが、空中で花を撒いているところが好きかも。可愛かったし!」
帰り道。
お互いに感想を言いながら、迎えの馬車に揺られていた。
ショーの最中クソガキが妙に静かだなって思っていたけれど、すっかり夢中になっていたらしい。
「にしてもいいなーリズは。僕もステージに上がりたかったなー」
「えへへ……ごめんね、クルエル」
「ねーねー、どうだった? どうだった?」
興奮冷めやらない二人とは逆に、私は王城が近づくにつれ、気分がどんどん落ち込んでいく。
このお出かけの目的は視察だ。つまり帰ったらリベル様に報告しないといけないわけで……
「はあ……」
「ねえ、僕たちの前で辛気臭い顔しないでくれる?」
「どうしたの? レヴィちゃん。もしかして、つまらなかった?」
「え、違う違う! その、凄いストーリーだったなって」
「分かる分かる! すっごくワクワクしたよね」
「ふん。それは認めなくもないけど」
はい。誰がどう見ても反逆を煽るストーリーでした大変ありがとうございます。
私がゲームでサーカスの正体を知らなくても、報告すれば取り締まれる内容。なんというか、大胆すぎる犯行で、今まで野放しになっているのが不思議なくらいだ。
まあ見ている間は、私も夢中になって楽しんでいたけれど……
「レヴィちゃんはどのシーンが好きだった?」
無邪気な笑顔でリズきゅんが問いかけてくる。
「私は——」
記憶に残った部分を口にしながらも、頭の中では別のことを考える。
サーカスの事、報告したらどうなってしまうんだろう?
時期的に、エンディングにはまだ早い。
本来なら最後まで気づかずに革命を起こされてしまうけど、今の段階から準備して先にサーカスを叩けたらリベル様の勝利になる? リベル様は生き残れる?
サーカスの皆さんには恨みはないけれど……いや、何度もリベル様を処刑されてるから恨みはなくもないけれど、私はリベル様に嘘をつかないと決めているから、今日見た事をそのまま報告するつもりだ。
でも、これで本当に良いのかな?
正史に逆らう不安を拭えないまま、馬車は王城へと帰還した。
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色々あって報告に向かえないまま、時間が流れて深夜。
リベル様に「遅い!」と叱られそうな予感に興奮しつつ、足早に離宮から執務室のある方向へと向かう。
両者をつなげる庭園に差し掛かった時、遠目に生垣の奥へと消えていくリベル様のプラチナブロンドが見えた。
「リベル様!」
慌てて後を追いかける。
「その声は、レヴィーア・フローディアか」
「…………あっ」
振り向いたその姿が、思っていたのと違って一瞬反応が遅れた。
普段とは真逆になった右分けの前髪、そしてあらわになった
何で忘れていたんだろう……
そうだった、リベル・ディクターは二人いる!
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