第39話 私を誘拐した人物とは思えんな
な、なんでこんな事に……
キリキリと痛む胃を押さえながら、私は今食堂っぽいところでリベル様と向かい合って座っている。
目の前には美味しそうな朝食が並べられているけど、とてもじゃないが食べられそうになかった。
「ううぅっ」
……無理無理無理、胃に穴が開いちゃう!!
いや、むしろ開いてるんじゃない? 何この訳わからん状況! 誰か助けてぇえ!!
だいたいここは何処!? 私は誰ぇー!!
はい、リベル様に婚約破棄宣言したレヴィーアですね! うわぁああぁあああぁああああっ!!
心ここに在らずだったせいで、フォークから逃れたサラダのミニトマトがボテっと床に落ちる。
「…………」
チラッと視線をリベル様に向ける。
ちょうどみずみずしいトマトが、美しい所作でお口へと運ばれる瞬間だった。
「ぐぅ……」
リベル様はもちろん私の失敗になんて、目もくれない。でも、気まずい。気まず過ぎる……
逃げださずに大人しく座ってる私を誰か褒めて……
だいたいさ、なんで婚約破棄したのに朝チュンしたの?
なんで今一緒に食事みたいな流れになってるの?
なんで私はこんなに取り乱してるのに、リベル様は平然とご飯食べてんの?
少しは私の事気にかけても良いんじゃないかな!? って、リベル様が私なんかを気にするはずもないか……
ん? でもリベル様がどこの誰が用意したのか分からないものに手をつけるって異常では!?
「レヴィーア・フローディア」
「は、はひっ!」
不意打ちで名前を呼ばれて、思わず声が裏返ってしまった。
ちょうど気にかけて欲しいなんて思っていたせいもある。
だけどいざ声をかけられたら、それはそれで死にそうな気分になった。
「……何を狼狽えている」
ため息をつくリベル様にビクつく私。
直後、特大の爆弾発言が私を襲った。
「私を誘拐した人物とは思えんな」
……なんて?
驚きすぎて椅子からひっくり返る。
ガンっと盛大な音が鳴ったけど、そんなもの気にならなかった。
だって——
「まさか忘れたなど言うまいな。貴女が、私に毒を盛ったのだろう?」
思い出した!思い出した思い出した思い出した!!
頭を打った衝撃で全部思い出した!
私がめちゃくちゃやらかした事を!!
ネガティブっていうか、鬱一歩手前の行動力って恐ろしいね……だって婚約破棄を宣言した私は、なんとその足でサーカスに行った時に発見した屋台——革命軍に接触し、交渉を持ちかけたんだから!!
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