第46話
それから二学期が始まり……、目まぐるしく時は過ぎて……、少し肌寒さを感じる季節になった。
胸の痛みやキラキラした気持ちも時間と共に薄れていき……、翔ちゃんや未来ちゃんとマートの話をすることも少なくなっていた。
ただ、私は、夜空をよく見上げるようになった。
煌めくこの星の世界に、マートが居る……。
そう思うだけで、胸がいっぱいになる。
マートにとって、地球は嫌いな星になってしまったかもしれない……。
もう、地球を知りたいなんて思わないかもしれない……。
そんな悲しい思いも湧いてきてしまうけれど、私にとって、マートと過ごした日々は今でもかけがえのない宝物だ。
それから宝物のもう一つ、この机の上にある茶色い犬の置物には、マートという名前を付けた。
マートという名前を、絶対に忘れないように……。
「じゃ、マート行ってくるね!」
色んな思いを胸に秘めて、またいつもの一日が始まる……。
「おーっ! こりゃ、大変だ!! 今度の流星は、宇宙戦争になるかもしれないぞ」
ソファに座ってテレビに見入っていたおじいちゃんが、いきなり大きな声で叫んだ。
その声に反応するように、おばあちゃんとママが近付いていく。
「朝から、変なこと言わないで下さい!」
早速、おばあちゃんのお叱りを受けている。
「お父さん、大丈夫よ! 大気圏に入る前に燃え尽きちゃうから」
ママも、子供に言い聞かせるようにおじいちゃんを宥めている。
「おじいちゃん、なーに? 流星が、どうかしたの? 何が大変なの?」
気になって、私もテレビに近付いていく……。けれども、
「瑠璃! 早くしないと、遅刻するわよ」
ママによって、現実に引き戻された。
(全く! ちょっとくらい教えてくれたっていいじゃない! 私だって、なんでも分かってるんだから!)
ふてくされたように口を尖らせ、ランドセルを背負う……。
「はいはい、行ってらっしゃい!」
ママに背中を押され、
「気をつけるんだよ〜」
おばあちゃんにハンカチを持たされ、
「今日も、楽しい一日を!」
おじいちゃんの呑気な一言に見送られる。
「行ってきまーす!」
結局、大人の輪に入れないまま家を出ると、
「瑠璃!」
門の前で翔ちゃんが待っていた。
「翔ちゃん! どうしたの?」
いつも先に行ってしまう翔ちゃんが、珍しく迎えに来てくれたようだ。
「朝の、ニュース見た?」
学校への道を歩きながら、翔ちゃんが興奮状態で話し始める。
「えっ、見てない。あっ、でも、おじいちゃんがなんか言ってた」
「大変だよ! 三日後、また流星群がやって来るんだけど、その中に惑星みたいな巨大な物体が混ざってて、地球に衝突するかもしれないって」
「三日後? そんな具体的に? あ〜、だから、宇宙戦争なんだぁ……。でも、大丈夫でしょ?」
「俺、思い出したんだ! 夏休みに読んだ本、宇宙同盟守り隊を!」
「それなら、私も読んだけど……」
「あの本に書いてなかった? 〝惑星が自ら破壊を始めた時、その時は攻撃しても良いとされている〟って」
「あっ、そっち? 〝全ての宇宙人は、他の惑星の動物を研究することを許されている〟っていう方じゃなくて?」
「うん、そっち、攻撃の方! 接近してる惑星ってさぁ、もしかしてパンドム星じゃないかなぁ?」
「えっ!」
大通りの横断歩道で立ち止まる。
「俺、マートに酷いことしちゃったじゃん。パンドム星人の怒りに触れたのかも……」
「そんなぁ……。マートは、そんなことしないよ! 地球を攻撃したりしないよ!!」
もう、マートを疑いたくないと思った。
結局、喧嘩別れみたいになってしまったけれど、私はマートを信じたい。
信号が青に変わった瞬間、私はマートが言っていたことを思い出した。
「そう言えば、マートが言ってた……。〝地球は、光のバリアに守られているから、他の宇宙人に攻撃されない。でも、最近、そのバリアが薄くなっているところや無くなっているところが発生してる〟って」
「光のバリアが薄くなってる……。無くなってる……。なんでだ?」
「分かんない……」
「分かんないのかよ!」
私達には、解決出来そうにない問題だ。
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