パンドム星人マートと過ごした夏

華美月

宇宙人の落とし物①

第1話

「あっ、あそこ! また光った!!」


 群青ぐんじょう色に広がる空の奥から、無数の星屑達がキラッキラッと降ってくる。


「ほんとに綺麗!」


 まるで、光のショーを見ているようだ。


 私、天宮あまみや瑠璃るりは、流星群がよく見えるといわれている高台の公園に立っていた。

 いつも静かな夜の公園が、多くの人で賑わっている。


「だから、言っただろ! ここが、一番よく見える場所なんだって」


 ドヤ顔で自慢しているのは、遠い親戚で同じ小学五年生の宇山うやましょう。私は、しょうちゃん! と呼んでいる。


「それ、私が教えてあげたんだよ!」


 兄妹のように言いたいことを言い合える仲で、こんな些細なことから時々喧嘩にもなる。


「ワンワンッ!」


 愛犬ポメラニアンのポチと、


「ウーッ、ワンッ!」


 翔ちゃんが飼っているフレンチブルドックのバンも一緒だ。


 それにしても、誰かが操作しているとしか思えない。

 神様? それとも……、宇宙人?


 次から次へと流れてくる美しい光に心を奪われていると、


 その中でもひときわ強く輝いている星屑が、私達のすぐ目の前を通過した。


(えっ、近いっ……)


 星屑とは言えない大きな物体が、七色の光をたなびかせながら、坂の下にあるコンビニの近くに消えていく……。


「しょ、翔ちゃん、今のって……」


「なんだ! あれっ」


 隣りに居たはずの翔ちゃんは、ジャングルジムによじ登って確認している。


 次の瞬間、

 コンビニの看板に激しい光が発生し、雷でも落ちたかのような衝撃が地面に響き渡った。


(まさか……、落ちたの?)


 まわりの見物客もどよめき始め、人の流れがコンビニに向かっていく。


「瑠璃! こいつを頼む」


「えっ!」


 慌てた顔で、翔ちゃんがバンを繋いでいるリードを私に手渡した。


「俺、ちょっと見てくる!」


 そう言って、人の集団を追い掛けるように走り去っていく……。


「もーっ、なんでよ!」


(私だって、見に行きたい! でも、バンは私の言うことを効かないし……)


 この人混みに入っていくのは、とても危険だと思った。


「全く、翔ちゃんは自分勝手なんだから!」


 ブツブツとぼやきながら、傍にある低い鉄塔に二つのリードを結びつけて翔ちゃんを待つことにした。


 足元に目をやると、嬉しそうにしっぽを振るポチの横で、バンが迷惑そうに私を見上げていた。








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