第2話
見物客は一気に減ってしまったが、チラホラと残っている人たちはまだ空を見上げている。
光のショーも、そろそろ終わりだろうか……。
空や公園に、元の静けさが戻ってきたようだ。
(だけど、さっきの光はなんだったんだろう……?)
不思議に思いながらコンビニの方を覗き込んでいると、背後から、誰かが近付いてくる足音が聞こえてきた。
「あっ、翔ちゃん?」
急いで振り返ると、そこに居るのは翔ちゃんではなく、
(えっ、外国人?)
金色の髪にブルーの瞳をした、私達と同じ年くらいの少年が立っていた。
夏だというのに、シルバーの繋ぎで全身を覆っている。
「すみません。僕のフォローシートを知りませんか?」
異国の少年が、私に話し掛けている。
「えっ、フォローシート?」
(何それ! レジャーシートみたいなもの?)
「えっと、それは、君になんと伝えれば分かるのだろうか?」
(君って、私? この子はいったい何者? 大人みたいな日本語は話せるみたいだけど……)
暫く考え込んでいた少年が、再び話し掛けてくる。
「こう言えば、分かってもらえるだろうか? 七色に輝く布……」
「七色に輝く布? うん、意味は分かるけど……」
「七色に輝く布を失くしてしまったんだ。あれがないと、非常に困るんだ」
(そっか。この子は、その布を探してるんだ……)
とりあえず、公園の中をグルリと見渡した……。
木の陰や遊具のまわりも気にしてみるけれど、それらしきものは見当たらない。
「その、七色に輝く布? そういうものは、ないみたいだけど」
そう言いながら、少年をまじまじと見つめた。
(えっ、カッコイイ……)
ロシアのスケート選手のような、なかなかのイケメンだ!
その時、
「瑠璃ーっ!」
翔ちゃんが戻ってきた。
「ルリーッ?」
少年が、首を傾げながら翔ちゃんの真似をしている。
「あっ、私の名前! 瑠璃っていうの」
「ルリ……」
何かを確認するように、私の名前を繰り返している。
「瑠璃、帰るぞ!」
そう言いながら、翔ちゃんが鉄塔からポチとバンのリードを外す。
「あっ、うん!」
ポチを引き取りながら、私も少年に聞いてみた。
「あの、名前は?」
「僕の、名前?」
少年は時が止まったような顔で、コンビニの方を見つめている。
(えっ? 通じなかったのかなぁ……)
謎の反応に戸惑っていると……、
再び、私に視線を戻した少年が、胸を張って言った。
「僕の名前は、マート!」
「えっ! マート? なんか、コンビニみたいな名前だね、キャハハッ」
思わず笑いながら、私もコンビニの看板に目をやる。
「もー、行くぞ!」
バンが勢いよく走りだし、翔ちゃんが公園を出ていく。
「じゃあね!」
少年にそう告げて、私もポチと一緒に公園をあとにした。
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