宇宙人と遊ぶ③

第13話

「瑠璃ちゃん! ほんとのほんとに、宇宙人に会えるの?」


 未来ちゃんは、朝からもう大興奮だ。


 昨日の夜、電話でマートのことを話して、今日、会わせるという約束をしているからだ。


「未来ちゃんが言ってたことは、本当だった! コンビニの駐車場に着地したんだって」


 音楽室から教室に帰る廊下を歩きながら、未来ちゃんと二人で盛り上がっていた。


「やっぱり、本当だったんだ! 瑠璃ちゃんに信じてもらえて嬉しい!!」


「うん!」


(未来ちゃんは、私がマートの話をした時、すぐに信じてくれた。私は、未来ちゃんを少し疑っていたのに……)


「あっ、嘘つきが居る!」


 後ろから、数人の男子がやって来た。


「うーそつき! うーそつき!」


 リーダーの大地が、手で拍子を取りながらバカにしたように唱えている。

 昨日から、クラスの男子たちは、未来ちゃんのことを〝嘘つき!〟と呼んでいる。


「未来ちゃんは、嘘つきなんかじゃないよ! 本当に、コンビニの駐車場に宇宙人が来たんだから」


 大地に向かって、今度はハッキリと言い返すことが出来た。

 マートに会って、確信したからだ。

 でも、マートに会っていなかったら、私は未来ちゃんを信じることが出来ただろうか……。

 本当は、私も、大地たちと変わらない種類の人間なのかもしれない。


「宇宙人が居るなら、怪獣だって、お化けだって、居るってことになるんだからな!」


「怪獣やお化けは分かんないけど、宇宙人は絶対に居るよ!」


 からかい続ける大地に、未来ちゃんは強気で言いきっている。


(未来ちゃんはまだマートに会っていないのに、どうして断言できるのかなぁ?)


「バッカじゃねーのっ!」


 大地はそう叫びながら、未来ちゃんが抱えていた音楽のファイルをひったくった。

 他の男子と一緒に、笑いながら廊下を逃げていく……。


(なんなの、この子供じみた行動? 意味分かんない……)


「ちょっとーーっ! あんたたち、待ちなさいよーっ!」


 すぐに、大地を追い掛けようとした。けれども、未来ちゃんに止められた。


「瑠璃ちゃん! いいの、いいの。次の音楽の時間までに返してくれなかったら、先生に言うから! そんなことより、今日、どんな洋服着ていこうかなぁ?」


 未来ちゃんにとって、音楽のファイルや幼稚ないじめは、もうどうでも良いことのようだ。

 宇宙人に会う!

 それは、全てを消してしまうほど、魅力的な出来事らしい。


「ねぇ、瑠璃ちゃん! 宇山は? 宇山も一緒に行くの?」


(そうだ! 翔ちゃんのこと、忘れてた!!)


 昨日の帰り、翔ちゃんと未来ちゃんは、私が引くほど、UFOについて熱く語り合っていた。

 翔ちゃんは、うちのクラスの男子とは違って、未来ちゃんを全く疑ってなかったし……。


「そうだね! まだ言ってないけど、翔ちゃんも誘ってみる!」


「うん! すっごーい、楽しみ〜っ。早く、会いたーい!」


「私も、楽しみ!」


 帰り道で翔ちゃんにも伝えると、


「まじかよ! 行く行く! 絶対に行くーっ!!」


 そう言い残し、凄い勢いで帰っていった。



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