第27話

「やっぱ、これでしょ!」


 そう言って、翔ちゃんがヨーヨー釣りの出店の前で立ち止まる。


「これは……、銀河系惑星のレプリカ?」


 マートが、瞳を輝かせながら呟いた。


「銀河系の、惑星?」


 私も、マートの視線を辿る。


 赤、黄色、緑……。色とりどりのヨーヨーが、透明に流れる水の上をプカプカと浮いている。


(こんな水風船から惑星をイメージするなんて、宇宙人ってやっぱりスケールおっきいなぁ……)


 改めて、宇宙人と地球人の価値観の違いを感じる……。


「俺、やる!」


 翔ちゃんが早々と、出店のお姉さんにチケットを渡した。


「じゃ、僕も!」


 マートも同じように、チケットを渡している。


「私も!」

「じゃ、私も!」


 未来ちゃんに続いて、私もチケットを手渡した。


「こうやって、こうやって……」


 一応、翔ちゃんが、ヨーヨーの釣り方をマートに教えている。

 四人で一斉に、ヨーヨー釣りが始まった……。


「こういうこと?」


 一番始めに釣り上げたのは、マートだ。

 緑色のヨーヨーを高く掲げて、不思議そうに眺めている。


「よっしゃーっ!」


 翔ちゃんもすぐに、グレーと黄色のヨーヨーを立て続けに二つ釣り上げた。

 マートも負けずに、更に赤い色のヨーヨーをゲットしている。


「うわっ、切れちゃった!」


 私は失敗に終わり、


「私も……」


 未来ちゃんも釣り上げることは出来なかった。


「好きなの、一つずつ選んでいいよ!」


 出店のお姉さんが、私と未来ちゃんを哀れむように言った。

 お情けのようだが、釣れなかった子にも一つずつあげるという町内会のルールがあるらしい。


「私、これにしよう」


 未来ちゃんはオレンジ色のヨーヨーを選び、


「じゃあ、これ!」


 私は、大好きな青い色に白の渦巻き模様が描かれたヨーヨーに決めた。


「ルリのヨーヨーは、地球だね!」


 私が手に取った青い色のヨーヨーを見つめながら、マートが言った。


「へぇ、これが地球かぁ……。なんか、すげーな!」

「私も、見てみたいなぁ」


 翔ちゃんと未来ちゃんが、私のヨーヨーを遠い目で見つめている。


「地球って、こんなに綺麗な色なんだね……」


 私も、地球をイメージしながら、青い色のヨーヨーをまじまじと眺めた。


「えっ、じゃあ、俺のは?」


 翔ちゃんが、右手に持っているグレーのヨーヨーを勢いよく前に出して見せた。


「こういう色の惑星は、凄くたくさんあるよ!」


「えっ、まじで!」


「ちなみに、僕が生まれ育ったパンドム星は、この色なんだ!」


 マートが、自分の持っている緑色のヨーヨーを見せた。


「へぇ、素敵!」


 未来ちゃんが、キラキラした瞳で見つめている。


「ミクのは……、やっぱり太陽かな?」


 マートが、未来ちゃんの持っているオレンジ色のヨーヨーに視線を送った。


「太陽かぁ……」


 未来ちゃんが嬉しそうに、自分の持っているヨーヨーを眺めている。


(青いヨーヨーが地球で、緑色のヨーヨーがパンドム星……。マートって、なんだかロマンチックだな〜)


 それぞれに選んだヨーヨーを上下にポンポンとつきながら、人波に流されるように歩き始めた。

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