第35話

 本当は、静かにしなければいけないこの空間が、私は苦手だ。

 前に、未来ちゃんと来た時も、「うるさい!」と叱られた。

 でも、マートと居ると、図書館も素敵な場所に思えてくるから不思議だ。


「ルリは、本を読まないの?」


 三冊目を読み始めたマートが、同じページのまま止まっている私を気にした。


(あっ、読んでるよ)


 ずっと、うわの空で、始めに書かれいる〝僕らの宇宙には、ルールがある……〟という文章を何度も繰り返していたけれど、その先に進むことにした。


 この〝宇宙同盟守り隊〟という小説をザックリ言うと、頭脳や運動能力に優れた少年少女六人組が、ルールを守らない悪い宇宙人たちを退治していくという物語なのだが……。


 そこに書かれている宇宙のルールに、私は凍った。


 同盟に入っている宇宙人は、他の惑星を研究することが許されている。

 水や土、草花、動物までも……、自由に研究することが許されているというのだ。

 更に驚いたのは、惑星が自ら破壊を始めた時、その時はその星を攻撃しても良い! というところだ。


 マートは確か、こう言っていた……。「地球は、神々しい光のバリアで守られている……。ところが、最近、その光のバリアが薄くなっているところや無くなっているところが発生している」と……。


(それって、光のバリアが弱まってるっていうこと? まさか、地球が宇宙人に攻撃されるなんてことも……)


「うっそでしょーーーーっ!!」


 私の叫び声が、図書館中に響き渡った。


「あなた! 静かに出来ないなら、もう出ていってもらうわよ!!」


 職員のおばさんが、もの凄い剣幕で私を叱り付けてくる。


「ごめんなさい……。僕が、驚かせたんです!」


 マートが、私の前に出て庇ってくれた。


「他の人に迷惑だから、今度騒いだら出ていってもらうからね!」


「ごめんなさい、気をつけます……」


 私も謝った。

 マートは、まだたくさんの本を読みたいのだから、追い出されては困る。


 叱られたショックと衝撃的な本の内容で、かなりメンタルはやられたけれど、マートと並んで本を読めるこの時間を大切にしたいとも思った。


「ルリ……」


 心配そうに、マートが私を見つめている。


(マ、マート?)


 間近で見つめ合い、頰が熱くなる。


「ルリ、大丈夫だよ! この地球は、僕が守るから! ルリの星は、僕の宝物だからね」


 私の頭を優しく撫でながら、マートが囁いた。

 どうやら、私が読み始めるのと同時に、マートは自分の本を読み終えていたらしく、本の内容や私が感じていることを全て読み取っていたらしい。


(えっ! 私の星が……、マートの宝物……? それって、ちょー嬉しいですけどーっ! なんなの、この、ドキドキした気持ち! これって、これって、もしかしたら……、す、す、好きっていう気持ち? それって、それって、もしかしたら……、愛なんじゃないのーっ!)


 再び本に夢中になっているマートに教えたいけれど、この気持ちを伝えることは出来ない。

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