第36話
色んな意味でショック状態の私……。
ポチは、私がマートと二人で出掛けたことが気に入らなかったらしく、ずっとおばあちゃんにまとわり付いている。
夕食を摂りながら、マートのことを思い出していた。
(今日は、楽しかったなぁ……。図書館でひそひそ話って、なんかくすぐったかったなぁ……。はぁ〜っ、明日もマートに会えるかなぁ……)
「瑠璃……、なにかあったの?」
隣りでポテトサラダをお皿に分けていたママが、心配そうに私を覗き込んでいる。
「えっ……」
お皿を受け取りながら、ちょっと呟いてみた。
「ねぇ、ママ……。愛ってさぁ……、愛ってなんだろう……」
「えっ?」
ママは首を傾げながら、
「愛っていうのは……、とてもあたたかくて素敵なものなんじゃないかしら?」
あいまい過ぎて、よく分からない……。
もっと、具体的な答えが欲しいのに……。
「ねぇ、おばあちゃんはどう思う?」
お箸を手に取ろうとしていたおばあちゃんが、私を見つめて考え込んでいる。
「う〜ん。一言で言うのは難しいけれど、思う気持ちのことかなぁ? 誰かを思う気持ち、何かを思う気持ち?」
「思う気持ちかぁ……」
やっぱり、ハッキリとした答えは見つからない……。
そう思いながら食事を始めると、何か言いたそうな顔で私をじっと見つめているおじいちゃんと目が合った。
(おじいちゃんには、分からないだろうなぁ……)
私の心の声に気付いたのか、おじいちゃんが咳払いをしながら更に見つめてくる。
(まぁ、一応、おじいちゃんにも聞いておこうか……)
私はお皿を置いて、目の前に座っているおじいちゃんと向き合った。
「おじいちゃんは、愛ってなんだと思う?」
気を良くしたおじいちゃんが、お酒の入っているおチョコを置いて背筋をピンと伸ばした。
「瑠璃! 愛というのはその名の通り、この世界の全てなんだ」
(何それ? 全然、その名の通りじゃないし、余計に分からなくなってきた……)
「ばあさんや綾さんがこうして食事の支度をしてくれることも、家族で食卓を囲むことも、空が青いことも、花が咲くことも……、全ては愛という訳だ!」
「全ては愛……。なんか、おじいちゃんってロマンチックだね」
「そうだよ! おじいちゃんはロマンの男なんだ」
嬉しそうに語り続けるおじいちゃん。ママとおばあちゃんも、感心するように耳を傾けている……。
私は、なんとなく、おじいちゃんの言ってることが分かるような気がした。
そう考えると、この世界には愛が溢れているような気もしてくる……。
(でも……、光のバリアはヤバいことになっているとマートが言っていた。薄くなっているところや、無くなっているところがあるって……。マートは地球を守る! って言ってくれたけど、そんなこと、本当に出来るのかなぁ?)
私が考え込んでいる間も、三人は愛について真剣に意見し合っている。
「だけど、瑠璃がそんなこと言い出すなんて、誰か好きな人でも出来たの? 誰? クラスの子?」
ママが、興味津々に聞いてくる。
「そんな訳ないじゃん!」
クラスに好きな子が居るなんてありえないと、軽くスルーする。
「あっ、もしかして、マートくん?」
「えっ!!」
おばあちゃんの一言に、思わず固まってしまった。
「あ〜っ、マートくんね!」
ママも、納得している。
「マートくんは、いい男だからなぁ」
おじいちゃんまで、悪ノリしてきた。
「そんな、好きとか、そういうのは、まだ分かんないから!」
動揺する私を見て、三人がニヤニヤと笑っている……。
私は急いで食事を済ませて、その場から逃げだすように二階へ駆け上がっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます