第20話

 休み時間になっても、みんなはUFOの余韻から覚めていなかった……。


「ねぇ、未来ちゃん! コンビニの駐車場にあった穴は、どれくらいだったの?」

「宇宙人には、会わなかったの?」


 未来ちゃんが、クラスの女子に囲まれている。


「えっと〜、このくらいだったかな〜」

「宇宙人は……、居なかった」


 一人一人の質問に、丁寧に応えている。


 宇宙人と聞いて、私の頭にはマートが浮かんだ。

 未来ちゃんも同じように思っているはずなのに、マートのことには一切触れていない。


「星野〜っ」


 UFOの話題で盛り上がっているところに、大地が声を掛けてきた。いつも一緒に居る男子たちも、あとに続いている。


「ちょっと、行ってくるね!」


 未来ちゃんが輪を抜けて、大地たちの方へと歩いていく……。

 私はちょっと心配になり、未来ちゃんのあとに付いていった。


「星野! 嘘つきって言って、ごめん……」


 いつも意地悪な大地が、気まずそうに謝っている。他の男子たちも、あとに続くように〝ごめん〟と呟いている。


「別にいいよ! 全然、気にしてないし……」


 確かに、未来ちゃんは気にしていないと言っていた。


「あっ、でっ、これ……」


 大地が、奪い取った音楽のファイルを返している。


「ありがとう!」


 未来ちゃんは、笑顔で受け取った。


 未来ちゃんは、本当に優しい。

 あんなに意地悪されたのに、簡単に許してしまう……。

 私だったら……、あと二回は謝ってもらいたい。


「みんなが、信じてくれて良かった〜っ」


 教室を出ていく大地たちの後ろ姿を見送りながら、未来ちゃんが最高の笑顔を私に向けた。


「あっ、ほんと、良かったね!」


 私も、未来ちゃんに笑顔を向ける。


「瑠璃ちゃん! マートにありがとうって、伝えてね」


「あっ、うん!」


 なぜか、未来ちゃんはいつでも私がマートに連絡出来ると思っている。


「そうだ!」


 未来ちゃんの顔が、アップになって迫ってくる。何かひらめいたようだ。


「マートを、夏祭りに誘うっていうのはどうかなぁ?」


 今週の土日、近くの神社でお祭りがある。

 一緒に行こうと、未来ちゃんとは約束している。


「いいね、それ! きっと、マートも喜ぶよ!」


(そうだ、そうだ! マートは、地球のことを知りたがってるし、夏祭りに行けば、楽しいってどんな感じなのか分かるかもしれない!)


「喜ぶよね〜。あっ、瑠璃ちゃん、浴衣着ていくでしょ?」


「うん! 未来ちゃんも着てくるよねっ」


「うん、着る! もーっ、楽しいことばっかりで、嬉しくなっちゃう!」


 未来ちゃんが、大袈裟に喜んでいる。


(マートと、未来ちゃんと、夏祭りに出掛ける! 私も、すっごく楽しみ! あっ、そうだ!)


「ねぇ、未来ちゃん! 翔ちゃんも誘っていい?」


「うん、うん! いい、いい! 四人でお祭り……。今年の夏祭りは、最高に楽しくなりそう!」


「ほんと、きっと楽しいね!」


 騒ついた教室の中、二人でキャーキャーと盛り上がる。

 週末が、待ち遠しい……。





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