第47話

 学校の近くまで来ると、翔ちゃんとは別々に歩きだした。


 きっとこのニュースで、クラスのみんなも騒ついているだろうと思いながら教室に入っていくと……、


(えっ……)


 いつもと変わらない風景が広がっていた。


(あれっ? みんな、ニュース見てないのかなぁ……)


 拍子抜けしながらランドセルを下ろしていると、


「瑠璃ちゃん!」


 いつも先に来ている未来ちゃんが、あとから飛び込んできた。


「あっ、未来ちゃん、おはよう!」


「おはよ! 瑠璃ちゃん、ニュース見た?」


「私は見てないけど、翔ちゃんからちょっと聞いた」


「もう、びっくり! 惑星のような物体ってなんだろう? 地球、大丈夫かなぁ?」


「やっぱり、それって、大変なことなの?」


 流星群のニュースについて未来ちゃんと盛り上がっていると、その声に重なるように、もう一人の声が聞こえてきた……。


「やべーよ! 地球、大丈夫かなぁ?」


 私たちと同じように、地球を心配している人がもう一人居る。

 いじめっ子のリーダー、大地だ!

 男子の輪の中から、大地の声だけが聞こえてくる……。


「おいっ、分かってんのかよ! これは、地球の危機なんだぞっ」


「大丈夫だよ! それより、あのゲームやった?」

「大ちゃん、どうしたんだよ!」


 そこに群がっている男子たちに必死に訴えているけれど、誰にも相手にされていない……。

 チャイムと同時に、担任の望月先生が入ってきた。


「始めるぞーっ! みんな、席に着いてーっ」


 不完全燃焼のまま、私達はしぶしぶとそれぞれの席に着く……。


「はいっ、今日は嬉しいニュースがあります!」


(ニュースって、まさか! でも、全然嬉しくないよね……)


「なんと、うちのクラスから、読書感想文コンクールの入賞者が出ました!」


「えーっ!」

「誰だろう」

「すげーじゃん!!」


 クラスのみんなが、騒めき始める……。


「おめでとう、大地が書いた感想文が選ばれました!」


(えっ、大地が! 意外過ぎる……)


「大地が読んだ本は〜、宇宙同盟守り隊?」


(だ、大地も、あの本を読んだのーーっ!)


「先生も、大地の感想文を読ませて貰ったんだけど、最後の文章が最高だったな。〝俺は、この地球を守りたい!〟ってな。さぁ、みんな拍手!」


 いきなり、拍手に包まれる大地……。

 そこに居る誰よりも、本人が一番驚いている。


「大地、凄いじゃん! おめでとう」


 休み時間になるとすぐに、私は大地に祝福の言葉を送った。


「ほんとに、凄い! おめでとう」


 未来ちゃんも、自分のことのように喜んでいる。


「あっ、どーも! まっ、俺って、才能あったんだなっ」


 既に、天狗になっている。


「私も、読んだんだよ!」


「私も!」


 未来ちゃんも、翔ちゃんとマートが言い合いになったあと、気になって読んでいたらしい。

 それから三人で、〝宇宙同盟守り隊〟と、今朝のニュースについて語り始めた……。


「まじで、ヤバいよ……。あの本に書いてなかった? 惑星が自ら破壊を始めた時、その時は攻撃しても良いとされているって!」


 大地は、翔ちゃんと同じところが気になっているらしい。

 私は、翔ちゃんに投げたあの問題を、未来ちゃんと大地にも投げてみようと思った。


「なんか……、地球は光のバリアに守られてるんだって! だから、他の宇宙人には攻撃されないって……」


「ほんとかよ!」

「良かった!」


 二人が、ホッとしたような表情を浮かべた。


「でもね、最近、そのバリアが薄くなっているところや無くなっているところが発生してるみたい」


「えっ、それ、ヤバいじゃん!」

「嘘っ……」


 二人が、また不安そうな顔に戻る。


「確か……、光のバリアって、愛のエネルギーで出来てるんだよね?」


 未来ちゃんが、冷静に分析を始めた。


(そうだった。肝心なこと忘れてた! これが、マートの話をしっかり聞いていた未来ちゃんと、適当に聞いていた私の大きな違いだ!)


「それが薄くなるとか、消えるって……。地球に、愛がなくなってきてるってこと?」


 さすが、未来ちゃん!

 一気に、解答に近付いた気がした。


「愛が、なくなってる……。それは、やっぱ……、いじめとか、無視とか、人を傷つけたりしてるからじゃねーの?」


 模範解答のような大地の言葉に、

「お前が、言うか!」と突っ込みたくなった。

 未来ちゃんも、呆れたように微笑みながら、「うん、そういうことなのかも!」と納得していた。


 三日後、惑星みたいな巨大な物体が、地球に衝突するかもしれない……。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る