第6話 チュートリアル
翌朝、さっそくソフトをネット上から購入する。ダウンロードしてきてデバイスにゲームのデータをインストールする。
昨晩は、ネタバレだけは無いように注意しつつ攻略サイトやレビューサイトを避けて、公式サイトをチェックしたり、チャットルームでゲーマー仲間から情報を教えてもらった。
家族に対しては冷静を装いつつ、内心では今までに無いくらいウキウキ気分で興奮状態の夜だった。
そして、待ちに待った翌日がやって来た。いつものように仕事に出ていった父親を見送ってから、言われていた通りにVRデバイスを自由に使っていいということで、ようやくプレイを開始できる。
「リミット・ファンタジー・ゼロ」というゲームはもちろん初プレイで、VR系のゲームをプレイするのも初めての体験だったから、どんな感じなのか想像をして心が浮き立っていた。
よっしゃ、新しい世界へ冒険だ!
今すぐにでも旅に出たい、高揚した気分だったのだが、まず先にやらなければいけない準備があった。キャラクターメイキングだ。
しかし、キャラメイクに掛かった時間が想像していた以上に長かった。
まずキャラクター名、顔、身長や体重などの体型はもちろん、キャラクターの得意な武器、利き手、趣味趣向等も設定していく。
しかも、このキャラメイクはシステムの関係であまり現実世界の自分と違う体型、身長が高すぎたり低すぎたり体重が重かったり軽かったり、現実とは違うように設定してしまうとプレイ中の動きに違和感を覚えたり、内部の処理によってキャラクターの動きにラグが生じたりするらしい。
これはモンスターとの戦いや、対人戦等においては大きなハンデとなる。
だから、あまり現実と体型の差異があるキャラは作らないほうが良い、というのがこのゲームでの常識らしい。
でもまぁ、エンジョイ勢や生産系を楽しむのなら体型も自由自在に設定して、問題はないらしいと言われているが。
私は攻略組を目指す訳でもないけれど、冒険したり、モンスターとの戦いは精一杯に楽しみたいと思っているので、結構現実に近い身長と体重に設定しておいた。
更には、ストーリーに関わってくるらしい情報の設定。人種や出身大陸、生い立ち等を選択肢の中から、ものすごい数の選択肢の中から次々に選んでいって唯一無二のキャラクターを作り上げていく。
おそらく、このゲームの世界で作られたキャラクターで同一のものが出来る確率は非常に少ないだろう、もしかしたら同じのは出来ないかもと感じるくらいに設定項目が多すぎて、自分だけのキャラクターを作り込んでいける。
これだけシッカリと作り込むと、より強くキャラクターへと感情移入が出来て本当に新しい世界に生まれ変わる、というような気分を味わっている感覚があった。
ちょっと変わっているのは、性別だけはVRデバイスからスキャンされた生体情報から自動的に決定されるようになっているところ。
つまり、ゲーム内では男性が女性を装ったりするネカマ行為はシステムの仕様上、出来ないようになっている。
ゲーム内で出会うキャラクターを操作しているプレイヤーがリアルでは男か女か、どちらか分かるようになっている。顔の見た目を男の娘、雄んなの子という風に作る事は出来るけれど、ゲーム内のプロフィール情報には現実と同じ性別が表記されるのを確認することが出来る。
他のVRMMOゲームにはない「リミット・ファンタジー・ゼロ」ならではの仕様だ。これに関しては、賛否両論あるみたいだった。
私も出来れば男性キャラでプレイしてみたいなという気持ちもあったが、出来ないので仕方がないから女性キャラでゲームをプレイするしかない。性別がどっちでも、武器や防具の見た目とか装備は豊富らしいし、楽しめるだろう。
キャラメイクを三時間も掛けて、ようやく設定が完了する直前まで到着した。一度完了のボタンを押して設定完了しゲームを開始してしまうと、二度とキャラクターの設定修正は出来ないらしい。
正確に言えばキャラ設定を修正することは可能らしいけれど、膨大な数のアイテムを集めるか、もしくは莫大な費用を支払って、ようやく設定を修正できるようになるらしい。ただし条件が非常に厳しくて、現実的じゃないそうだ。だから、設定修正は不可能だと考えたほうが良い。
そして、一度作ってしまったキャラクターはゲーム世界から削除もできないらしいので、操作するキャラを生み出す時には、とても慎重にもなる。
結局、キャラメイクをしている間に予定していた時間が来てしまったので、今日のところは一時中断となった。
***
自キャラを作った翌日、ようやく本編のプレイを始められるかなと思っていたら、まだまだチュートリアルは続いていた。
今度は、戦闘訓練が始まった。この「リミット・ファンタジー・ゼロ」では、冒険することがゲームのメイン目的だから、戦闘の訓練は非常に大事なことだ。ゲームを楽しむためにも、しっかりと覚え込まないと。
このチュートリアルも非常に丁寧に作り込まれていて、適当にモンスターを倒して終わりという感じでは次に進めなくって、しっかりと剣の振り方、弓の引き方、矢の上手な当て方、魔法に体術のレクチャーまで他にも様々な指導が続いていった。
本来なら、自分の設定した得意な武器の扱い方ぐらいは確認してから後はスキップしておいて、必要になった時ぐらいに確かめるのが良さそうではあった。しかし私は、このチュートリアルが面白くて順々にクリアしていくのが楽しかった。
ゲーム内では身体をそのまま動かそうというよりも、頭の中でイメージした感じで動けるみたいだった。これは、咄嗟の時の動きは難しいかもしれない。特に戦いの中で冷静にシステムを使いこなせるようになるまで、練習が必要そうだった。
イメージしたら現実では不可能な動き、ありえない高さのジャンプでもゲーム内では軽々と出来てしまうので、そこは楽しいと思った。
そうこうしているうちに時間が過ぎていって、気付いた時には二日目もゲーム本編に入ることが出来ずに終わってしまった。
でも最後にはチュートリアルが終了した、という文字を目にした。なので明日からいよいよ冒険を始められる、という興奮の感情が再燃していた。
三日目にしてようやく、私はVR系オンラインゲーム初体験を迎える。
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