競合他社
第60話 イベント感想会
「初イベントお疲れ様でした、みなさん。特に、公式番組に出演をしていただいた、ブルーの千木良さん、ティティアナの大和屋さん、お二人には無理を言って番組の方を優先していただき、本当にありがとうございました」
リフゼロ初の公式イベントのダンジョンRTA競争が終わってから数日後、今日も重要な会議が行われる、ということで現実世界の東京にあるフェニレート社のビルにある会議室に来ていた。伊田さんが集まった皆に向けて、労いの言葉をかける。
東京に来るのも慣れたもので、ちゃんと交通費も出してくれるので、会議のために呼び出しを受けるのを楽しみにしていたりする。会議を行うため、仲間の皆が集まるから会えるのも良い。
少し前までの私は、顔合わせするのが不安で怖いと思っていたけど、そんな思いは全く無くなっていた。会議が終わった後、エリノルとティティアナの3人で東京観光したりグルメスポット巡りをして、遊びに行く約束もしているし。
「いえいえ」
「大丈夫ですよ。番組は緊張したけど楽しかったです」
急遽、公式番組を任されることになった2人。番組出演があったので、イベントに参加が出来なくなってしまった。伊田さんは、その事を本当に申し訳なく思っていたようで何度も謝っていた。それを快く許す、ブルーとティティアナ。
「ダンジョンRTAについては今回、非常に多くのプレイヤーに好評だったようで、今後も定期的に開催するイベントになると思います。次回は、ぜひお二人も参加してみて下さい」
凄く楽しかったダンジョンRTAは、定期的なイベントになる予定らしい。今回、参加してみて色々と手探りで攻略方法を考えたり、繰り返し練習をしてから、本番に挑んで見事に結果を出せた。私にとっては予選から本番まで通して、とても楽しめるイベントだった。他の皆もそう思ったようで、好評で良かった。
今度は挑戦するダンジョンの場所が変わるのか、それともルールを変えていくのだろうか。次回も楽しみだな。
「おぉ! それは楽しみ。次は、レッドとタイムアタックで対決してみたいな」
「はい、是非参加させてもらいます。でも、中継を見てたら全プレイヤーが凄すぎて、自分にできるのかなって思っちゃった」
次回の開催が有ると知って喜び期待をするブルー。彼とは逆に、顔を曇らせ参加に乗り気だけど、ちょっとだけ尻込みするティティアナ。
「一位が凄かったよね。確かに、アレを見てしまうと参加を躊躇するのも分かる」
エリノルが頷きながら感想を言う。大会が終わった後も、強烈に印象に残っている1位のプレイヤーだった。
一つ一つの動作が全て緻密に考え込まれてやっているみたいで、どれも無駄がない洗練されたような動きを既に完成させていた。しかも、大会中は一言も喋らずに淡々とこなしていく姿が映されていて、強者の雰囲気があった。私が動画を見返した時に感じた印象だ。
「今回は初めての事が多かったから、あまりネットにも攻略情報とか出回ってなくて勝負が出来た部分が大きいよな。次は、他のプレイヤーが更に腕を上げてくるだろうし、ランクインは難しくなるだろうなぁ」
ランキング2位のレッドが言う。次に参加してくるプレイヤーが手強くなりそうだ、という考えには同意だった。けれども他のプレイヤーが上手くなったとしても、レッドのプレイヤースキルは依然として高いだろうし、今回2位にランクインできたのも彼の実力のおかげ。だから、次回も上位入賞を果たしそうだとは思うけど。
「でも、公認プレイヤーである俺ら皆が結構上の方の順位にランクイン出来た、っていうのは良かったな。もしかしたら自分だけダメかと思って不安だったけど、結果を見て安心したよ」
レッドが2位にランクインしていて、私が運良く12位に入れた。
次にエリノルの21位、残念ながら20位以内という目標は達成できなかったが、予選に比べて本番でランキングを上げていたので、十分過ぎる結果だろう。
ヴェルが22位にランクイン。本番ではアイテム運がとにかく悪くて、モンスターとの不意の遭遇などもあり、全体的に不運に見舞われた結果だった。それでも高順位をとれているのだから、文句ない成績だ。
「特に志穗ちゃんは、本番で順位を上げて凄かったね」
「私の場合は、本当にスッゴく運が良かったんですよ。それに比べて、有香里さんは6コも順位をアップさせて凄いですよ」
「でもアタシは目標の20位以内に入れなかったし……。それに比べて志穗ちゃんは運が良かったとしても順位をシッカリと上げて20位以内にランクインしたし、目標をちゃんと達成していたから有言実行していて偉い!」
「いやいや」
「そんな」
お互いに褒め合って、終りが見えない会話が続く。レッドが割り込んで、違う話題を振ってきてくれた。褒め合い合戦は終わる。
「ところであの件はその後、どうなったんだ?」
「あの件?」
レッドが質問してくる。あの件とは何か、思いつかずに聞き返した私。
「ソフィアって名前のプレイヤーとの約束について、じゃない?」
「あぁ、彼女ですか。確かに勝負していましたね」
イベントが始まる前に、宣戦布告のような感じで彼女から勝負を挑まれていた私。どっちの順位が上になるか、という競争。
「ソフィアって子は確か、55位だったよね。予選に比べてランクは凄く上がってたけど、順位では志穗ちゃんの勝ち?」
「はい、私の勝ちでした」
初心者だった筈の彼女が予選をギリギリだったけど突破して、本番では更に順位を上げて55位まで到達するなんて凄すぎる成長だった。しかし、順位で勝負という事だったので私の勝ちという結果で終わった。
でも下手をしていたら、負けていた可能性も十分にあるから脅威だ。
「向こうが勝ったらパーティーに入れる、という約束だったな。でも、小野間さんが勝った。ということは向こうは何をしてくれるんだ?」
「あーっと、えっとー、それなんですが……」
どうやって説明するべきか悩んで口ごもる。皆の視線が私に集まって、有耶無耶にすることは出来そうになかった。
「実は、こういう事がありました」
私は意を決して、数日前にあったソフィアとの会話を皆に説明することにした。
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