第22話 緋色の秘宝ダンジョン3
緋色の秘宝ダンジョンは、地下へと降りていくダンジョン。中は地下なので当然、太陽の光も差さずダンジョン内にある照明の明かりだけが頼りだった。薄暗い先に、モンスターが何処にでも隠れて待っているような気配を感じる。
岩に囲まれた洞窟のような景色の中だからなのか、下へ降りていく程にどんどんと肌寒くなっていき体温が下がっているように感じた。流石にVRデバイスでは室温や気温などの変化は今の所まだ再現されてはいない。けれど、視覚や触覚から錯覚するのかヒンヤリするような感じがあった。そんなダンジョンの中を、皆で慎重に進んでいく。
「ゴブリン系モンスター4に、潜伏しているのが2、居るよ。おそらく別種類」
「了解。フォルトゥナは次の階層でのボス戦に備えて温存。俺とエリノルが出よう。見た目は植物系だから毒とかに注意して」
「わかった」
9階層まで到着した私達は、遭遇したモンスターを次々と倒していった。そして、再び遭遇したモンスターとの戦いが始まる。
ブルーからの報告で目の前に居る4体のゴブリン系モンスターの他に、姿を見せずに隠れているモンスターが2体居ることを知る。
どこかに潜んでいるモンスターからの奇襲を注意しながら、まず目の前にいる4体の緑色したゴブリン系モンスターを倒そうとレッドの指示を聞いて、皆が了解と返事をする。
剣を構えたレッドとエリノルが、前傾姿勢の素早いスピードで突撃していき距離を一気に詰めた。そのままの勢いで剣を振り攻撃に移る。
「はっ!」
「ふっ!」
「「ギャギャッ!?」」
レッドとエリノルの短く吐く息が聞こえて二人同時にモンスターを仕留めた。敵が奇襲に気付いたときには既に遅い。エリノルは踊るように剣を振り、レッドはブンッと風音がするぐらいに力強く剣を振るう。
瞬きする間に次の標的に攻撃を仕掛けていき、モンスターの胴体はあっという間に真っ二つに別れた。
【攻撃はやっ】
【なぜ、そんな素早い仕留め方が出来るのか】
【キャラクターレベルの違い?】
【今のはスキル使ってない。プレイヤーの技量】
【レベルよりも反射神経が大事】
「潜伏が出て来るぞ」
「あいつだ」
現れたのは、先程まで戦っていたゴブリン系モンスターより二倍か三倍ぐらい大きさが違う、巨大な体をした緑色したモンスターだった。
「オーガ系だな」
「あいつも色からして植物系か土系。注意して!」
レッドがパーティーの皆に大声で注意喚起する。モンスターには属性というものがあって、使うスキルの属性や武器に付与された属性の関係によって与えるダメージが大きく変わる。だから、相手の属性を観察して戦い方を考える必要がある。
ちなみに私は、属性魔法を一通り覚えているので様々な場面で対処が出来るように準備をしている。
【でっけぇ】
【ノーマルと色が違うから警戒するよね】
【オーガも緑か】
【コイツらを仕留めたら、ようやく10階層に行く?】
【この放送、予定では一時間ぐらいで終わる予定だった筈】
【残り何分? もう予定の時間が過ぎるよ?】
【ボスに辿りつけなくても強制終了するのかな?】
【行けなくても一時間で終わるらしい。いま急いで向かっている途中】
「フォルトゥナ、温存の方針を変えて魔法を使って。今だ!」
「はい! ライトニング・レーザーッ!」
ウィンドウのメッセージが流れている間も戦いは続いている。レッドから攻撃指示を受けた私は、急ぎ左手に持っている杖を掲げてスキルを唱えた。指示が来るだろうと予想して動いていたので、即行動に移せた。
前衛で戦っていたレッドとエリノルが私の放つ魔法攻撃のタイミングを見計らって後ろに下がる。近くに居たら、私の魔法攻撃に巻き込まれてダメージを受けてしまうから邪魔にならないように距離を取ってくれていた。
このゲームは、フレンドリーファイアがあるので仲間に魔法攻撃が当たってしまう可能性もある。なので、魔法使いは仲間の位置にも気を配る必要がある。私も仲間には攻撃を当てないように、魔法の飛んでいく方向を制御してモンスターにダメージを与えていく。
杖の先から青白い光が迸って、無防備になっていたモンスター1体に狙った通りに直撃させる。ダメージを与えると、グギャオオオオッと雄叫びを上げて動けなくなるモンスター。私の魔法攻撃が当たって硬直したスキを見逃さず、レッドは再び素早いスピードで近寄り剣を振り抜く。
「ナイス支援!」
指示された通りに上手く動けた。レッドや他の皆からは、称賛の声を掛けられた。ウィンドウに表示されるメッセージでも、お褒めの言葉が続々と流れていく。
【うまっ】
【連携が完璧かよ】
【よく魔法を制御するよな】
【ホントにそれ】
【レーザーあんなに簡単に当てるのかよ】
【神業】
【この魔法は当てるのそんなに難しいの?】
【簡単そうに見えて意外と難しい】
【狙った所に当てるのに練習が必要】
【初めて打ったら絶対に当たらないヤツ】
【へぇー】
「このオーガ、ノーマルよりもスピードが遅いな」
「多分、このオーガは防御特化タイプっぽい。反撃に注意して!」
魔法を当ててダメージを与えたが、レッド達の近接攻撃はあまりダメージを与えられていないようだった。その様子を観察していたティティアナが、レッド達に警鐘を鳴らす。
前衛組は更にスピードを上げて剣を振り、手数でダメージを与えていく。その後ろからブルーも弓を射って援護した。
「いくぞッ!」
「任せた」
後ろでタイミングを見計らっていたヴェルが、一気に前に出る。交代するように、前に出ていたエリノルが交代で後ろに下がる。そしてヴェルがハンマーを振り下ろして、オーガを叩き潰した。防御を無視した攻撃特化の非常に強力な攻撃。その一発の攻撃によってモンスターを倒してしまう。
「よし、仕留めた」
「こっちも終わった。さぁ、ボスに行こうか」
ボスが待っている10階層へと進む階段に辿り着いた。今回は、タイムリミットも迫ってきているので、休憩を入れることなく突き進む事になった。生放送終了まで、残り10分を切っていた。
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